⑮
「え? 祭り?」
「依頼主からなるべく五体満足で連れて帰れと言われていてね」
その「なるべく」には強調と脅迫が僅かに含まれている。
「まあ、ワタクシ達ではニャルに敵わないだけですけどね。三人がかりでギリギリ、貴方達がいたのでは勝ち目はありません」
「なんでオマエはそう色々とバラしちゃうんだい!」
拳をカリにめり込ませたままマッカさんは咳払いをする。
「ともかく! アタシらが勝ったらニャルにはトリトスに帰ってもらう、アンタ達が勝ったらアタシ達はとりあえず退散する! それでどうだい?」
「いや、それじゃあ本当に退散する保証が……」
「やるー!」
ニャルに割り込まれて俺は言葉を止める。
「大丈夫か?」
「うん。今までも勝ったら帰っていったし」
「おお、マジか」
さてはこいつら捕まえる気ないな?
「じゃあ参加する祭りを決めようじゃないか! ここは祭りの街、選り取り見取りだよ」
「条件としては飛び入り参加できる事と、すぐ出来るのが好ましいでしょうね……モウ? どうしました?」
本を受け取ってカリは「ほう、ナイスです」とウインクをする。
「ちょうど開催中の祭があります、飛び入り参加大歓迎、しかも一対一の一本勝負! これでどうでしょう!」
カリが指したのは……
「種目ランダム☆大食い大会……?」
*
『さあさあ皆さんさっきの試合はどうでしたか? 鼻からパスタを出した時は笑いが咲きましたね! では次の対戦カードはこちら!』
大きな液晶に俺たちの写真が映る。
『赤陣営は小人、中性、巨人の凸凹……いやさ階段トリオ! チーム、マッカファミリー!』
三人が観客席に向かってパフォーマンスをする。なぜか場馴れしてるようだ。
拍手が収まったのを見て司会がこっちに手を向ける。
「対する白陣営、愛らしき二人の少女をつれた青年……かと思えばリーダーは魔女のようなお嬢さん! チーム、ニャル・アゾート!」
客席に手を振りながらニャルに話しかける。
「自分の名前をチーム名にしたのか?」
「あれ名前を書くとこだと思ってた」
「なるほど……」
『では、今回の食材は……ルーレットスタート!』
画面の中でルーレットが動きだし、赤いマスに止まる。そこに書いていたのは……
「今回の食材はリンゴだぁー!」
*
席について溜息をつく。祭りが三人のチーム戦だったから成り行きで巻き込まれてしまった。
男なら食べるだろうという理由でニャルは俺と先生を指名した。先生はもちろん断り、智野を指名したが……彼女の腹はそこまで強くない。
仕方ないとばかりにコカナシが選ばれたのだ。
『リンゴはまるごと出されます、芯は残しても構いませんが皮は食べきってください。テーブルに置いてある調味料以外の食材を使用してはいけません。
もちろん今のルールに無い事はなんでもあり! では……スタート!』
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