⑨
「とりあえず現場に行くしかないよな」
ニャルを含めた俺たち五人は森に入り込んだ。智野の車椅子が心配だったがヨロズさん特製のタイヤは道ですらない場所でも問題なく動いていた。
まだ昼前なのだが森の中は薄暗い。凄まじく密集した木々が太陽の光を塞いでいるのだ。
「暗い森……戻らないネコ……つまり幽霊がいるかも!」
どんな連想だ。ニャルの幽霊への興味はなんなのだろうか、錬金術的な意味での興味か?
「おなかすいた」
ケイタ様が抱いていた五十鈴を下ろしてどデカイきのこに座る。サルノコシカケだっけか。
「じゃあご飯にしようかな、作ってきたの」
智野が弁当を広げるとケイタ様とニャルが飛びつくようにして食べ始めた。
「五十鈴は食べれるのか?」
「食べれない事はありませんが胃もたれするかもしれないですね。そこら辺で食事を済ませてきます」
「一緒に食べたらいいのにー」
「みなさんの食欲を無くしてはいけませんから」
恐らく鳥とか虫とかだろう。正直見たくない。
五十鈴が少し奥に行ったのを見て、俺も弁当を口にした。
*
「五十鈴さん、遅いね」
智野が弁当箱を片付けながら心配そうに呟く。
「確かに……おかしいな」
食後のお茶も済ませた時間だ、獲物が豊富なここならば食事は済んでいるだろう。
「五十鈴、来たよ」
ケイタ様が指した方から五十鈴がゆっくりと歩いて来る。しかし……
「なんかおかしくないか?」
「千鳥足、だね」
「皆さま……すいません……」
俺たちの元へ来る前に五十鈴は倒れこむ。
「ちょ、どうした!?」
「水を……」
そこまで言って目を閉じた。ケイタ様が色々と調べて頷く。
「眠ってるだけみたい」
「とりあえず送り返した方がいいだろうな」
「僕が行く」
ケイタ様が五十鈴を抱いて立ち上がる。
「後はよろしく」
*
「水って言ってたね」
三人になった俺たちは近くを流れる川を調査する事にした。
「見たところ何にもなさそうだが……」
「味も……少し甘い? でも川ならこんななのかな」
「…………」
飲んだの? こいつ。
しばらく調べたが特に何も見つからなく、当初の目的通り猫が見たという建物を目指すことにした。
「で、次はどっちにいけば……」
振り向いて言葉を失う。今いるのは俺と智野とニャルだけ、つまり……
「道を知ってる人がいねぇ!?」
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