君に会いに行くとき
おたんこなす
第1話
遠く小さくなっていく君だけが切り取られたように君の姿しか見えない。君の姿だけはハッキリと見えている。
僕が見ていたものは君ではなかったのかもしれない。でも、それでも良かった。少なくとも最期に僕の中にあったものが君であったことは満足だった。
いつからか人生が作業のように感じ出していた。昔はなんでも楽しめた。今でもそれなりに楽しいのだと思う。ただ、楽しいと思うその感情さえもその場に合わせて作っているような気がしている。
友達はいる。夢もある。恋人はいなかったかな。両親は健在で、姉は子供を産んで私も叔父さんになった。
まあまあ幸せな画ではないか。
趣味だってある。スポーツもしている。
空っぽを埋めるのは無理なのかもしれない。
惰性で生きてますね。
そんなことを言われたことがあった。その時は何クソと思ったが、そうだったのだろう。
世の中には素晴らしいことが沢山ある。
私はいつの間にか磨り減ってしまった。
君の頭を撫でると私の顔を見上げたね。
その手で頬を撫でるとくすぐったそうに笑って何処かへ行ってしまったね。
なんとも言えない感情が湧いてきて少し満たされた気がした。
沈んでいく身体にただ、そんなことが残っていた。
君に会いに行くとき おたんこなす @otankonasu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます