君に会いに行くとき

おたんこなす

第1話


遠く小さくなっていく君だけが切り取られたように君の姿しか見えない。君の姿だけはハッキリと見えている。


僕が見ていたものは君ではなかったのかもしれない。でも、それでも良かった。少なくとも最期に僕の中にあったものが君であったことは満足だった。


いつからか人生が作業のように感じ出していた。昔はなんでも楽しめた。今でもそれなりに楽しいのだと思う。ただ、楽しいと思うその感情さえもその場に合わせて作っているような気がしている。


友達はいる。夢もある。恋人はいなかったかな。両親は健在で、姉は子供を産んで私も叔父さんになった。

まあまあ幸せな画ではないか。


趣味だってある。スポーツもしている。


空っぽを埋めるのは無理なのかもしれない。


惰性で生きてますね。


そんなことを言われたことがあった。その時は何クソと思ったが、そうだったのだろう。


世の中には素晴らしいことが沢山ある。

私はいつの間にか磨り減ってしまった。


君の頭を撫でると私の顔を見上げたね。

その手で頬を撫でるとくすぐったそうに笑って何処かへ行ってしまったね。


なんとも言えない感情が湧いてきて少し満たされた気がした。


沈んでいく身体にただ、そんなことが残っていた。

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