アイツが迫ってくる!!
アイツが迫ってくる。
僕はただ心の中で「来るな、来るな」と唱え続けている。
それでも、アイツは確実に迫ってきている。
僕は思いつく限り、全ての手段を使ってアイツを仕留めようとするも全く歯が立たない。
アイツは、確実にそして一定のペースを保ってこちらへやってくる。
動かないアイツならば、僕でも倒すことが出来た。アイツは動く。
決めた。アイツは無視しよう。
そしたら、アイツは怒ったのか仲間を連れてきた。
アイツもアイツの仲間も動いている。
しかも、アイツの仲間はアイツよりも早く動いてきてるではないか。
ああ、もう僕をいじめないでくれ。
僕は心の中でまた願う。「お願いだ、元いた場所に留まっていてくれ。
そこから、動かないでくれ。」
しかし、その願いは届かない。
早く、早くアイツをどうにかする手段を考えなければならない。
アイツの倒し方。薄っすらとだが聞いたことがある。
倒し方を聞いた時には「楽勝じゃん」と思った。アイツを倒す訓練も何度もした。ただ、思い出せない。どうやって倒したっけ?
実戦で使えなければ意味がないではないか。
決めた。この危機を乗り越えたら、確実にアイツの倒し方をマスターしておこう。
しかし、目の前のアイツをどうする?頭の中はもう真っ白だ。
もう、何も浮かばない。
アイツもアイツの仲間も俺を馬鹿にするように一定のペースを保って動いている。
もう一度心の中で唱える。「動かないでくれ」
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
「はい、ペン置いて~。後ろから用紙回して~」
終わった。
終了の鐘の音とともに数学担当の山本の声が教室に響く。
その鐘の音は僕の負けを意味している。
「やっと、終わった~」
周囲から声が聞こえる。
「集めて確認が終わるまで静かに」
山本の注意する声がする。
僕は誰にも聞こえない声、つまり心の声でもう一度唱える。
「点Pよ、動かないでくれ」
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