僕らの学校

紅茶キノコ

第1話

 中学二年のある日、俺は悪友に頼み込まれ学校をサボり、他校の――悪友の彼女が通う学校開かれる文化祭についていった。


 悪友の彼女は学校では軽音楽部に所属しているらしく、文化祭でも体育館で演奏するとか。


 その彼女はその部ではボーカルを務めているとかで、いつも自分の彼女の声は綺麗だの、どこぞの有名アイドルの名前を引っ張り出しては自分の彼女の方が歌がうまいだのと自慢ばかりしている。


 それに付き合う俺も俺なのだが、それでも誇らしげに自分の彼女を誉めているときの生き生きとした表情を見ると口を挟むことができず、ただただひたすら耳を傾けてやっているー―時には聞き流してることもおあるが。そして今日も俺はこの悪友に付き合って、隣町のこの学校に来た。


 しかし、俺の悪友には計画性がまるでなく軽音楽部が何時に体育館で演奏するかを事前に調べてはいなかった。


 仕方なく俺と悪友は体育館の中で時間をつぶすことにした。


 窓には暗幕がかかり外界の光は遮断されている。点けられているライトといえば、舞台を照らす照明だけ。


 否が応にも俺の視線は舞台に向く。


 そこで俺の瞳は舞台の中心、正確には舞台の中心に立つ騎士風の衣装に身を包んだ人物に釘付けになった。


 そこだけがキラキラと輝いているような錯覚を覚え、そして気付いた。


 周りが、その中心に立つ人物の周りがそれを生み出しているのだと、一人一人のその役柄がその中心に立つ人物を際立たせているのだと分かった。


 俺は生まれて初めてといってもいい感動を味わった。


 今まで見てきた劇とは何もかもが違って見えた。


 今まで見てきた劇はせいぜい学校のクラス内で行う、真剣実に欠ける、照れや恥ずかしさで萎縮した、ただのままごとのように見えたのだ。


 しかし、この演劇は皆が皆、真剣にその役柄を忠実に再現しようとしている。


 何かを作るとはこのようなことをいうのかもしれない。


 一人一人力を併せて始めて出来上がる世界。


 たかが中学生の演劇にこれほど心惹かれるとは、自分自身思わなかった。


 俺もこの世界の一人になってみたいと思った。


 自分の力で作る世界。

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