恐怖症克服日誌-over the terror-
平井昂太
第一部 リハビリ編
第1話「告白」
「はぁ……。やっぱりいいなぁ……
昼休み、高校三年の教室。
やや短いポニーテールの少女が、机に
視線の先には、友達と談笑する一人の男子生徒。数人男子が集まっていても、思わず彼のところにだけピンポイントで目を向けてしまうぐらいの美少年だ。
男子としては少し長めの黒髪はつややかで、しなやかな
少年の名前は
非常に分かりやすい性格をしている天音は、見ての通り葉月に片想い中だ。
「よし、今日こそは告白する」
宣言すると共に、天音は勢いよく立ち上がった。
「今までも散々告白するって言って結局してないじゃん」
天音の隣で、三年間同じクラスの親友が呆れた様子で突っ込む。
「ふっ、ゆみやん、あたしが嘘ついたことある? 今までのは『告白する』『告白しよう』で、その日にするなんて言ってないよ? でも今回は『今日、告白する』って言った――この意味が分かるよね」
親友からの指摘に対し、天音は不敵な笑みを浮かべながら反論。
「ま、まさか本気で!? 無謀だよ、やめとこうよ。あと、関西っぽいあだ名もやめて」
『ゆみやん』と呼ばれた女子生徒・
「ゆみやん、あたしこの学校選んで正解だったよ。何年か前まで男子校だった分女子が少なくて競争率は下がるし、共学化されたおかげで葉月くんと同じ学校・同じクラスになれた。ホントにラッキーだよ」
「いや!? どのみち振られたらメリットになってないよ!?」
「あ、彼氏できたら付き合い悪くなるけど許してね」
「そっちの心配はしてないから!」
親友からの忠告を聞き流しつつ、葉月の席に近づいていく。
周りには他の男子がいる為、少し離れた位置から呼びかけることに。
「あ、あのー、逢坂く――」
「ちょっといいか、藤堂」
呼びかけに被せるようにして近くのパーカーを着た男子が声をかけてきた。
「何、あたし今逢坂くんに」
「だったらこっち来い」
何が『だったら』なのか意味不明のまま、半ば強引に廊下へ連れ出される。
「なんなの、あたしホントに大事な――」
「伝えることがあるんならおれが伝えとくけど?」
「いや、確かに面と向かって言いづらいのはあるけど……、でも少なくとも伝言で済ませることじゃないよ」
口振りからすると何を伝えるのか知っている風でもない。余計な気を回したのではないとしたら一体なんの目的で間に入ろうとしているのか。ちょっとした用件なら、それはそれでいちいち人を通すまでもなくあの場で伝えれば済む話だ。
「お前、葉月と同じクラスになったのは初めてだよな」
「それが?」
「三年になってから今までの間に葉月が女子と話してるとこ見たことあるか?」
「――? ないけど」
そもそも女子の人数が少ないのだから、当然女子と話す機会も少ないはず。見かけていなくて不思議はない。
「あのな、いくら少なくても女子生徒はいるのに、葉月が話しかけられてるとこすら見てないのはおかしいと思わなかったか?」
「――! 言われてみれば、逢坂くんと話したい子なんていくらでもいるはずなのに」
まさか自分以外には美少年に見えていないなどということはないだろう。付き合うかどうかはともかく、積極的に話しかけるぐらいはする者が多いはず。
「う~ん、その感じだとやっぱ告白だよな」
「ええっ!? なんで分かんの!?」
「むしろなんで分からんと思ったんだ……。――まあいい、告白ならやめとけ。どうせ聞き返してくるだろうから先に言っとくけど、釣り合わないとかじゃなくてそれ以前の問題だからな」
『やめとけ』の辺りで、『やってみなければ分からない』と返す準備をしていたのに先回りされた。
「ま、まさか、あたしのこと嫌いとか……? で、でもツンデレの可能性も……」
「だからなー、好みとか釣り合いとかの話をしても仕方ないんだって」
「
「お前口軽そうだしどうするかな……。個人情報を流出させないぐらいの良識はあるな?」
「うん」
一体どんな障害を乗り越えねばならないのかと息を
「じゃあ言うけど。――あいつ女性恐怖症だから」
「――――え?」
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