3 騎士と地の竜
急激に下降しながらも、風は優しく二人を包んでいた。
「すっごーい!!」
イクロが歓声を上げたのは、雲の切れ目から地上が見え出したからだ。タウは目を丸くした。
初めて降りる地上。
地面が延々と続くって、どんな感じなんだろうって想像してた。
「この緑色のって、全部、木?」
「タウっ、風が」
呆然としているタウの耳に、イクロの焦ったような声が届いた。タウははっとして、翼をはためかせる。
風が急に静かになったのだ。
「風がしゃべらなくなっちゃったっ!」
イクロが大声をあげた瞬間、二人を包んでいた風は、すぅっと左右へ引いて行ってしまった。
ごぉっと翼に風の怒鳴り声のような音が叩きつけられて、二人は思わず目を瞑った。
「そうだっ。キューレルさんが言ってたよ。地上の風はちょっと違うんだって」
大声を出さなければ、イクロにさえも届かない。
「どう違うのよっ!」
「知らないよ! でも、地上の風はきっと無口っ、ううわあっ!」
タウの身体を辛うじて支えていた風の力が急に消滅して、急下降する。
「タウ!」
イクロが咄嗟に手を伸ばして、タウの右手をつかみ、左手で風を強引に掴んだ。
「落としたら承知しないからっ」
風に大きく叱りつけて、イクロは歯を食いしばった。二人はつむじ風に遊ばれる木の葉の様にくるくると回りながら、地面に落ちていく。
ざざざざざ!
二人が落ちたのは、幸いにも木々の多い繁る中だった。木の葉の擦れ合う音の後に、悲鳴と大きな衝撃音が響き渡った。
「ったあ……」
なんとか掴まっていた風のおかげで、落下の衝撃は緩和されたとは言え、したたかにお尻を地面に打ちつけたイクロは思わず顔をしかめた。そして、掴んでいたはずのタウの腕の感触が無くなっていることに気づいて、真っ青になる。
「タウ? タウ! タウ!?」
3種類の呼び方をして、イクロは回りを見渡した。
「……ここ」
上から情けない声がして、イクロは涙を浮かべた目で仰ぐ。と、木にタウが引っかかっていて、小さな傷のついた顔でイクロを見下ろしていた。
「よーかったぁあ」
「よくないよ……」
安堵の声に被せるように、タウは情けなく呟いて、一生懸命に身体を起こす。
いつもの癖で、そのまま手を離すと、重力に逆らうことなくタウはイクロの近くに落ちた。
「ったぁ……」
「本当に、風が自主的に助けてくれるわけじゃないのねぇ」
落下したタウを見つめながら、イクロは感慨深げに呟いた。
「感心しないでよ」
「地上は今までと同じようにはいかないってことね。よく考えておかないとね」
そう言いながらイクロは回りを見まわした。急に無言になったイクロとタウの間に、沈黙が満たされる。
タウも地面に座りこんだまま、自分達が着地(落下)した場所を確認する様に見まわす。
回りは木で囲まれていた。木の間にも木が見え、その間も木、木、木!
木の間に空の色や城の壁が見えないのが不思議だ。どんな隙間も暗闇か木かその葉で埋まってしまっているなんて。
タウは息を吐き出しながら上を仰いだ。
木の枝の間からは、なんとか空が見えた。
だが、暗い……。
タウは急に不安になってきた。だいたい、一体ここはどこなのだろう? こんなに静かなところに地人がいるというのだろうか?
急いで立ちあがり、タウは自分のお尻を叩く。と、イクロがそっと身を寄せてきて、頼りなさそうにタウの右腕を掴んだ。
その手が微かに冷たく震えているのに気付いて、タウはぐっと両拳を握り締めた。
イクロが不安がるというのが、すごく不思議な感じがした。
「ひとまず、誰か探そう」
出来るだけ力強くそう言って、イクロを見ると、イクロはタウとは全然逆の方を見つめていた。
「タウ……」
「何?」
出来るだけ明るくを努めて、タウは聴き返す。
「変な音がする」
「えっ?」
タウは耳をすました。イクロが見つめる方向から、その音は近づいている様だった。
何の音かよくわからない。けど、木の枝が折れるような音、何かが倒れるような音、加えて地響きもする。それは確実にこちらに向かってきていた。
「何?」
「わからないよ!」
先ほどまでの決心も忘れて、タウはわめいた。が、二人ともそこから離れられない。こちらに向かってきているものの正体を知りたかったのと、逃げることを忘れていたからだ。
二人はいつのまにかお互いに抱き合って、その方向を見つめていた。
音が急に止んだ。二人はほっとして、お互いを見詰め合い、そのときに鼻と鼻の間が拳程度にしかあいていないほど、顔が接近していることに気付いた。顔を真っ赤にしてイクロがタウを張り倒す。
「何、抱き着いてるのよ!!」
「イクロが抱き着いてきたんだろ!」
どちらもどちらが先に抱きついたかなんて、覚えていないのだが……。
「人のせいにするわけ?」
「そっちこそ!」
違う理由で顔を先ほどと同じ距離まで近づけ、にらみ合っている二人に、すぅっと急に影が落ちた。
同時に見上げる二人。と、同時に目を丸くする。
二人の上に、何か知らない生物が浮いていたのだ。
二人から見える部分は、腹だった。なぜ、腹だとわかったかというと、その部分に4本の足がついていたから。そして、尾が。
二人はその生物の名を知らない。
知ってても無意味だっただろう。二人はそこから逃げることも出来ずにいた。
その生物が長い首を動かして、こちらを向く。ギョロリとした大きな瞳は、タウと同じ琥珀色だった。
大きな翼を一振りすると、冷たい風が生まれた。
物言わぬ風に、タウとイクロは煽られそうなって、足をふんばった。
二人の前にその生物は着地すると、タウとイクロを検分するように見つめていた。
二人はそんな生物の動き一つ一つを見守ってしまう。
「何、するつもりかしら」
ようやくイクロがやっとの思いで口を開く。タウは、意味の無い相槌をうつことしかできなかった。
そして、嫌な予感にいきつく。
「食べられたりしないよね?」
「見て、大きな口」
「ほんとだ、僕たち、すっぽり入りそうだよね」
「まさか」
「ねぇ」
二人は笑っているのか泣いているのかわからない表情で、顔をくしゃくしゃにすると、その生物を見つめてしまう。
生物は瞬きすると、急に首を上げ、一吼えする。どこまでも届きそうな咆哮にイクロとタウは、ようやく逃げることを決心した。
だが、いつものように風に乗れない。タウは困惑したイクロの手を取ると、通りすぎた風の端を見定めて、握り締める。
風は悲鳴も上げなかった。そんなことをすると、空でなら怒ってふりほどこうと滅茶苦茶に暴れるのに。
生物はまた吼えると、こちらに向かって重い足音を立てながら追いかけてくる。
「来るよ!」
「わかってるよ!」
タウは右目をつぶった。左手だけで握り締めた風は、まっすぐに走るが、手が持たない。
「イクロ、側の風に掴まれない?」
「やってみる」
イクロもタウが辛そうなのがわかっていたみたいだ。指図されて、文句も言わずに頷いた。
タウの手を握りながらも、イクロは側を通りすぎる風を掴もうとした。
話しかけても無理な相手なら、力ずくで掴むしかない。
イクロは風を掴もうとした。だが、風は寸での所で逃げる様に方向を変えてしまう。
タウの手からも風からも手を離してしまって、イクロが地面に落ちた。
「イクロ!」
タウも咄嗟に風から手を離し、地面に転げ落ちた。いくつもの擦り傷が出来たことも気にせずに、タウはイクロに駆け寄った。イクロはそんなタウに怒鳴る。
「タウ! 逃げてぇ!」
あの生物はすぐそこまで迫っている。
できるわけないじゃないか!
心の中で叫んで、タウはイクロの肩に手をかけた。イクロは自分の右足首に手を当てている。
「大丈夫?」
「バカっ。逃げなさいよ」
「バカなのはイクロだろ! いつも出来ないことばかり言うんだから!」
タウはそう怒鳴りつけてから、迫ってくる生物を睨みつける。そんなタウの横顔を、イクロは唖然と見つめてしまった。
戦う方法なんて、習わなかった。
空には戦いなんてない。そんなものは必要無かった。
その生物は二人を見つめ、その口を大きくあける。どんなに楽観的にみつもっても、その生物に友好的な雰囲気はない。
イクロを首に捕まらせ立ちあがり、次の風が来るのを待つ。その生物の攻撃までに見つけられるか、風が来ても掴まえることが出来るかはわからない。
だけど、戦う手段がないなら逃げるしかない。
生物が足を振り上げ、それを落とす瞬間まで、タウは諦めない。
そのとき、タウとイクロの前に何かが出てきた。
それが人の背中だというのに気付いたのは、それが声を発したからだ。
「大馬鹿野郎が。踏まれるつもりか」
銀色の鎧の背中。剣の切っ先をその生物に向けて、男は大きく息を吸った。
「去れ。ここからは人の領域だ!」
その言葉は生物に向けられたもののはずだった。だが、タウは一瞬自分達に向けられたものだと思った。
地人の領域だから、自分達はこんな生物に追われるのかもしれないと。
その男と生物の睨み合いは、しばらく続いた。だが、タウにもわかった。男の気迫は生物を押している。
タウはその男の後姿を見つめていた。
落ちついてきたところで、あることを思い出す。
黒い髪の頭を見つめながら……。
『大馬鹿野郎』
このフレーズ……。あの声。
黒髪の間から出ている耳は、微かに尖っていた。「翼」は地人の「耳」になるらしい。「耳」は微かに翼の形をしているけど、肌みたいで先が丸くて、ただ音を聞くだけにあるという。
尖った耳には、翼のなごりがあるような気がした。
もしかして……。
タウは目を輝かせた。それを見て、イクロも何かに思いあたったらしい。
しばらくして生物は翼をはためかせはじめた。そして、風を生みだしその場から飛び去ってしまう。
と、男は剣を鞘に収める。そして、振りかえった。
「相変わらずだな。タウ、イクロ」
「……ファイ?」
赤茶色の瞳を細めて、彼は笑った。唇の両端を上げて笑う。
そう、この笑いかた。
イクロを支える左腕はそのままで、右腕で彼に抱きついた。鎧が堅くてごつごつしていたけど……。
「ファイ!!」
「大きくなったな。タウ。少しだけだけど」
「少しってのは余計だよ!」
再会に喜んでいるタウは気付かなかった。イクロが困惑を隠さずにファイを見つめていることを。
喜びの表情は一瞬だけだった。伸ばしかけた腕をおろし、俯いてしまった。
そして、そんなイクロを、ファイも少しだけ困った顔をして見てから、視線をタウに戻した。
ファイに連れられて、二人は森の中の家に案内された。
「地上には3つの国があって、ここはラグ王国というんだ。小さな王女シータが治めている。
そこと対立しているのが、ゾイ国。王シロンが治めてる。あとは中立を保ってるフィーネ。
国ではないのだけど、もう一つラグ王国とゾイ国の間に領域がある。『竜たちの領域』だ。ここは、どの国も侵さないことが暗黙の了解でね」
ファイはそこに向かう途中にさっと説明をしてくれ、それを半分わかったような顔をしながらタウは聞いていた。
「竜ってさっきの?」
「そう。物言わぬ風……といっても、この感覚は俺らにしか解らないみたいだけどな。その物言わぬ風を生み出して空を飛び、地を守る。
お前らが降りたところは、ラグと竜たちの領域の狭間だな。
大体、ヨバルズシアたちが降りてくるのはそこらへんなんだよな」
「ヨバルズシア……ね。ほんと、地人の仲間入りって感じ」
イクロがポツリと呟く。
「『地人』はお前達のことを、敬意を込めてそう呼ぶんだ。勿論、幻の存在だと思っている奴も多いけどな」
イクロは必要以上に顔をそむけて、ファイの言葉を完全に無視した。ファイはちょっと息をつくと、タウに向けて言葉を続ける。
「俺達みたいな存在がいる限り、幻と言いきってしまえないんだけど」
怪訝そうなタウにファイは少しだけ肩をすくめた。そして、自分の耳を指し示す。
「完全に『地人』になってないんだ、俺。尖った耳は、ヨバルズシアと地人の中間だって言われる。たまにそういう子が生まれるんだ。元はヨバルズシアなんだって、証明するように。
地上では神聖視されているよ。気味悪いというやつも多いけどな。
俺はこんなナリだから、シータ王女に拾われて今では『竜たちの領域』との間を守る騎士ってことになってる。」
「だからそんなおかしな格好してるのね」
「イクロ!」
タウがとうとう怒鳴りつけた。イクロはつんと顔を逸らしてしまう。ファイが苦笑いをして、タウに首を振った。
「で、でも、ファイすごいよね! 竜ってやつをおっぱらっちゃったんだもんな」
「はったりだよ。剣の腕はまだまだ……。ま、俺もこんなごてごてしたのを着てるの、未だに慣れないよ。
でも、俺が王女に頼んだんだ。
好奇心でやってくるヨバルズシア達を、天空に無事に帰せる位置に居たかったから」
と言いながら、ファイはタウに視線を下げる。
「お前らには、事情がありそうだけど。空大好きなタウと、地人嫌いなイクロの組合せじゃな」
と言いつつ、ファイはその家を指し示した。レンガで造られた小さな家。煙突があるから暖炉もあるのだろう。
「この任についてるのは何人かいるけど、領域は広くてね。家は一人一つずつなんだ。誰もいないから、入って」
タウは言われるがままに、家に入ろうとした。だが、タウの肩に掴まっていたイクロは入り口で足を止めて、こちらをじっと睨んでいる。それに気付いたタウは、小首を傾げた。
「イクロ?」
「あたし……」
イクロは険しい顔をして拳をにぎりしめた。
「ちょっと外を見てくる」
「ちょっとって、イクロ、足が」
「大丈夫よ、すぐそこにいるから」
タウの頭上からファイのため息が聞こえて、タウは思い立った。
「あの領域には近づくなよ。竜はヨバルズシアが好きなんだ。食われるかもしれないからな」
食べるの? と驚くタウ。
「ぁ……かってるわよっ!!」
叫んでイクロは踵を返し、右足を引きずりながら来た道を戻っていく。後味の悪そうなタウだったが、追いかける事はできない。なぜか、イクロの背中がそれを拒んでいたから。
「タウ、お前も聞きたいことあるだろ」
ファイの声の高さがぐんと落ちた。見上げると、ファイの生真面目な目がそこにある。
「うん……」
タウは家に入っていく。そして、ファイはその扉を閉じた。
中に入って、落ちつきなくあたりをみまわすタウに、ファイは暖炉の近くに木の小さな椅子を寄せて、座らせる。
カシャカシャと背後で音がしてから、ファイが暖炉の側に歩み寄りしゃがみこんだ。火をつけてから側に置かれていた椅子にファイは座った。身を包んでいた鎧はもうはずしていて、空にいたファイを思い起こさせる。
徐々に立ち上る煙と炎を見ながら、彼は黙ったままだ。
タウはそっとファイを見つめた。黒い髪は出て行ったときよりも長めになっている。釣り上がり気味の赤茶色の瞳には、空にいたときよりも落ちついた光が宿っていた。
少し大人になったファイ。
人に近づいた『翼』……【地人】で言う『耳』をみて、タウは自分の翼に手をやった。
不安そうな顔をして、翼を触っていたのだろうか。ファイはこちらに顔を向けた。
「大丈夫だろ」
「でも、ファイは……」
「普通、地上に触れた瞬間に記憶と翼を失うんだ。みんながみんな俺みたいに尖った耳になるのか、それとも他の人間と同じようになるのかは、元翼人でも記憶を失ってしまうからな。わからないけど……、お前らは、ちょっと勝手が違うみたいだな」
タウは服の上から、首から下げた袋を掴んだ。その動作をファイは黙ったまま見守る。タウはあることに気付いてファイに目を向けた。
「じゃ、どうして、ファイは僕達の記憶があるの?」
ファイは困ったように笑いを漏らすと、言いにくそうに呟いた。
「俺は、嫌いだったからな……」
「え?」
ファイはくすりと笑った。指を組み合わせて、落ちつきのある瞳で、タウを見つめた。
「地上は、ヨバルスの美しい記憶だけ欲しいんだよ。ヨバルスを讃える思いだけ欲しいんだ。
俺はヨバルスから逃げたくて、地上にやってきた。だから、そんな思いはいらないってことだ」
「ヨバルスから逃げたの……?」
タウが少し寂しそうに呟くと、ファイは誤魔化すように笑う。それ以上は何も喋らないファイに、タウは顔を上げた。
「地上は、寂しく無い? 風が全然しゃべらないね」
「慣れるとそうでもないさ」
と、ファイは立ちあがり、部屋の一角に足を進める。部屋の隅に設けられた竈に寄った。何かを準備するように動く背中を、タウはじっと見つめている。
「イクロは、泣いたよ」
ファイはその言葉にも振りかえらなかった。何の反応も得られなくて、タウは思わず俯いた。
ひどく、自分が要らないことを言ったような気がしたのだ。
ファイがいなくなったとき。あのとき僕とイクロは12才になったばかりだった。
僕もファイが居なくて寂しかった。居なくなったって知って、すごく寂しくて。
でも、イクロの涙は違った。
僕はそのときだけ、イクロの寂しさと僕の寂しさは、違うんだって感じてた。
うつむいたタウの頬に、そっと暖かいものが触れた。タウが顔を上げるとファイが小さな器と差し出している。
「紅茶。飲めるだろ」
「あ、ありがとう……」
タウはそれを受け取り、珍しそうに眺めている。
「ヨバルズシアは……」
タウがそれに恐る恐る口をつけかけたとき、ファイが椅子に座り暖炉の炎を見つめながら、呟いた。
「ヨバルスの実を食べれば、次の実がなるまで何も食べなくても平気だったな」
「ファイ?」
どうしていまさらそんなことを聞くのだろう。タウは首をかしげる。ファイは少し笑うと、タウに紅茶をすすめる。タウはその温かい液体を、ゆっくりと飲もうとした。
「っち!」
思わず器を遠ざけ、舌を出すタウを見て、ファイは小さく笑った。
「熱いだろ。こうするんだよ」
と、ファイは器の中身を吹いて見せる。タウも心得たように息を吹きかけ、そして、今度は慎重に少しだけ飲みこんだ。
「温かい」
「ヨバルズシアは、これを楽しむことができないんだよな」
ファイがタウを遠い目で見つめながら呟くのを、タウは眉を寄せて聞いていた。
「ファイは、これが飲みたくて空から出ていったの?」
少し不快な気分を込めてそう聞く少年に、ファイはただ笑った。静かに笑い、こう呟く。
「ヨバルズシアでは、知ることのできないことが沢山ある」
「地上に?」
「そう。俺はそれが欲しくて空を出たんだ」
「それは、何?」
タウの真剣な問いかけに、ファイは目元で笑って答えなかった。
タウにはわからない。
そう言われたみたいで、タウは赤茶色の液体に視線を落とす。
僕は、ヨバルスの側で不満を感じたことがなかった。
一体、ファイは何が欲しかったんだろう……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます