妄想遊戯のガールズスキャット
落果 聖(しの)
妄想遊戯のガールズスキャット
妄想遊戯のガールズスキャット1
私はきっと忘れられる為に生きているんだと思う。
友達がいないわけじゃないけど、親友はいない。遊びには誘われるけど、遊ぼうとは言わない。
自分の意見はあるけど、別に言おうとは思わない。周りに合わせてるのではなくて、周りに流されている。
だから前世はクラゲだったと思う。
そして来世もクラゲだと思う。
どうして人間に生まれてしまったのか。私どう考えても人間向いてない。社会の荒波よりベーリング海の荒波の方が絶対過ごしやすい。
私は友達と思われる人物達(だって向こうが友達って思ってくれるわかんないもん)と友達と会話を合わせるために見てるアニメ(何が面白いのか力説されても解らない)をして勉強(たぶん何かの役に立つ)をしてる。
流されっぱなし。
でもきっと人生ってそんなもんだと思う。やれば出来るとか夢は叶うとかテレビで凄い人達が言うけれど、だってそれは叶った人が言ってるだけだもん。
叶った人はそう言うだろうけど、一番になるって事は一番になれなかった人が居るという事実そのものだよ。
夢なんて死んじゃえ。どうせ私もその下敷きになる側だし。
と書くわけにも行かないので大学進学とだけ進路希望に書く。親も特に反対しない。私は良い子だから親もそれで納得する。
それは親にとって聞き分けの良い子って事であって、別に良いこと何てしたことない。ゴミなんか捨ててあっても別に拾ってゴミ箱に入れたりしない。だからといって自分からゴミをポイ捨てするほど悪いこともしない。
法律違反はしない。ただし赤信号は除く。
心のどこかで誰かが私を轢き殺してくれることを期待してくれてるからだと思う。
青春と呼ばれる大事な期間が意味も無くすり切れていく。今までもそうやって時間が過ぎていった。
これからもそうやって時間が過ぎていくんだと思う。
無意味に無価値に。
時よ止まれもうめんどくさい。
それが私、大杉みのり16才だった。
そう言うわけでその日も特に変化はなかった。友達のソシャゲに巻き込まれて、課金用のカードを買ってくる帰りだった。
エターナルマジックってタイトルで協力を強要されるRPGだ。
無駄な事に金使ってるなぁって自覚はあったけど、じゃあ有意義な金の使い道なんて16才の頭には何も思いつかなかった。
まぁいつものことだし。
で、流すことにした。私は家に帰る近道の為に公園を横断した。夜だが、夜中ってほどでもないので犬の散歩をしている人とかけっこういる。
ただその日は違った。
こればっかりは流石の私も流されるわけにはいかなかった。
何故って目的の物が目の前にあるからだ。
目の前にはお目当てのキャラが居る。
鎧を着けたドラゴンで、現在居るキャラで最強のキャラらしい。友達が欲しがってる奴の一つで、こいつが手に入れば当面私の友達としての地位は安泰だ。
問題はそいつが現実の物体となって実在していると言う事だ。
友達の前に自分の命が危ない。
……あれ、じゃあ別に問題無いか。
私はクラゲだ。
死んでないだけで、生きてるとは言い難い。それが向こうの方から殺しに来てくれたのである。
もしかしたら幸運なのかな?
でもドラゴンかぁ。痛いのはやだなぁ。
どうせだったら友人が欲しがってたもう一体が良かったな。羊飼いの女の子でチリンチリンと鐘を鳴らしてモンスターを使役する娘。
ちりん。ちりん。
私の後ろからその鐘の音が聞こえてきた。
と言うか今私が思った羊飼いの女の子だった。
流石人気キャラ、めちゃくちゃ可愛いと思ったら私を素通り、ドラゴンにちりんと鐘を鳴らして使役し始めた。
どうやら助けてくれないみたいです。と言うか私を使役して欲しい。あんまり考えたくないし楽に死ねそう。
そんな事を考えているとドラゴンが大きな口を開きました。
必殺技を打つ前のターンの動作です。つまり次の瞬間に私は真っ黒焦げ。
本来なら走馬燈が見えるのでしょうけれど、私が考えたのは火葬する手間が省けたなぁ。なんて他人事みたいな事でした。
自分の事すら他人みたいに感心が持てない。
死んで当然だなー。だって、それって誰も感心を持ってくれないって事だもん。70億を超えてるんだしまぁいいか。
ドラゴンが急に目線を逸らした。
私も釣られてドラゴンが見た方向を見つめる。
そこには自分の身長ほどある大剣をあろうことか二刀流しているとんでも少女がいました。
金髪のショートカットで髪質がちょっとバサバサ。近所の進学校のブレザーを着ていてパンツは見せる物とばかりのミニスカートにニーソックスをはいてました。
はて? こんなのエタマジのキャラにいたっけ? 覚えておかないと友達に馬鹿にされるから後で調べないと。
と私が他人事のように思っていたら少女は果敢にドラゴンの口へ飛び込んでいきました。
下準備をしていたドラゴンはファイアボールを口から発射します。少女はそのファイアボールを左手の剣ではじき飛ばすと、ドラゴンに右手の剣で一刀両断。ドラゴンが真っ二つになったかと思うと幻のようにすぐさま消えていきました。
地面に叩きつけられた右手の大剣が地面を揺らしました。羊飼いの少女は怯えもせずちりんちりんと―――
なんだかとっても良い気持ちです。
私は甘い匂いに誘われる子供みたいに羊飼いの少女によろりと近づいていきました。
金髪の子が両方の大剣を引きずりながら私よりも先に羊飼いの少女に走って行きます。まるで羽でも生えてるかのように身軽な動きでした。
怯える羊飼いの少女に躊躇なく大剣で斬りつけました。羊飼いの少女もさきほどのドラゴン同様何もなかったかのように消えてしまいました。
そこで私は我に返りました。冷静に考えると帰らない方が死ぬ場所も見つかって良かった気もしますが、それは金髪の少女に失礼すぎました。
金髪少女は大剣をその場で手放すとそのまま消えてしまいました。
そうなるとそこはいつもの公園で先ほど見ていたのは白昼夢か何かと言う気がしました。
金髪の少女は何事も無かったかのように歩いて行こうとしました。
「ありがとうございます」
それは私が反射的に発した言葉。友達の輪から外れない為の一般常識と言う壁がそうさせました。
金髪の少女はこちらを振り向きました。
「さっきあった事覚えてるの?」
「えぇ、ドラゴンとの大立ち回りハリウッド映画みたいでした」
「おっかしいなぁみんな忘れるんだけどなぁ……」
「覚えていては駄目な事でしたら誰にも話しません」
と言うか話しかけなければ良かった。これ以上変な事に巻き込まれたくありません。私は早く家に帰って、ゲームのガチャして、友人の為に戦力増強をしないといけないのですから。
「覚えていては駄目って事じゃないんだ認識出来るのが問題なんだよ」
金髪の少女は頭を抱えながらこちらに近づいてきた。
よく見ると奇麗な方でした。カッコイイ女性と言うべきでしょうか。女性受けする女性みたいなセクシーさが金髪の少女にはありました。
「本来は今みたいなのが終わったらみんな奇麗さっぱり忘れているんだ。今回もそんなことだろうと思っていたから何にも喋らずに帰ろうとしたんだよ」
「そうだったんですか。それで私はどうなってしまうんですか?」
「世界が不安定になる」
「世界が不安定になる?」
あんまりにも意味がわからないので思わずオウム返しをしてしまいました。
「そう、不安定になる。ちょっと説明長くなるかもだからさ」
「はい」
「家泊めて」
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