第8話 2087年12月17日 青森県青森市八戸区八戸町 ブランチ八戸

嘉織と純の寄り道がてらのドライブ、オリジナルのファーストフードを出す平屋の古民家作りのブランチ八戸の引戸を潜り、カウンターで定番のメニューを注文しては、檜作りのラウンジへと


嘉織、ラウンジへの低い階段でも純の手を引いては

「ふふ、まずはシチリア鯖バーガーだよな、」

純、くすりと

「私は、結構付き合い慣れちゃったかな、」

嘉織、面妖な面持ちで

「えっつ、デートとか、まあ、年頃だし、いいか、」

純、くすりと

「嘉織ちゃん、年頃も何も、階上幸或旅館お馴染みの地産地消の軽食と言ったら、ブランチ八戸位でしょう、皆、何故か私も連れて来ちゃうよね、」

嘉織、思いを巡らしては

「まあ、他のお店はがっつりお腹一杯系だしね、」

純、朗らかに

「飽きないし、一日の始まりはブランチ八戸からだよ、」

嘉織、純に目配せしては

「そうそう、いやもう、見ただけでよだれ出そう、鯖にレモンにクレソンにパルメザンチーズって、もう味覚総取りだよ、もうね和風のしめ鯖バーガーも良いけど、また今度か、」

純、八つあるテーブル席の一つに視線をはたと

「あっつ、やっぱり、水戸さん、」

嘉織、一人ただ時間を持て余すテーブル席を詰め寄っては

「おい、水戸って、アンダー40だろ、何で八戸にいるんだよ、」

純、頬笑んでは

「水戸さん、階上幸或旅館宿泊中だよ、」

緩いウエーブマッシュヘアの水戸、重い雰囲気そのままに会釈

「階上さん、お久し振りです、ついでに久住もいます、」

嘉織、首を傾げては

「それって、あの乙川を飛ばして久住か、いや、何で乙川いないの、」

水戸、深い溜息のまま

「その乙川さん、津軽海峡渡って北海道です、ローマの調書取りで函館道南市役所から、当分帰れないそうです、失踪宣告どうしても取りたいそうですが、家族の意志確認で難航しているようです、」

嘉織、凛と

「当たり前だ、あの貧困絶好調の北海道だぞ、まあ、乙川はマシンガントークだから、いなくていいや、」

水戸、憮然と

「階上さん、乙川さんのそこは慣れですよ、女子同士仲良く出来ないのですか、」

嘉織、くしゃりっと

「あいつは女子でも最上質の別格だ、相容れれるかって、」溜息混じりも「で、その階上さんもさ、一族漏れ無く階上だから、嘉織でいいよ、」

水戸、思わず口元が綻ぶも

「おお、何か友達っぽいですね、嘉織さん、」

純、水戸の目の前に席にゆっくり座り

「水戸さん、お友達なら相席良いよね、」

嘉織、その純の横の席に滑り込んでは、とくとくと

「水戸さ、その割りには、目が笑ってないよ、」

純、嘉織を肘で小突き

「嘉織ちゃん、それ駄目、皆気を使って言わないよ、」

嘉織、ただ椅子の背もたれにもたれ

「まあ、ローマから東南アジアの事変に派遣されたら、疲労もするか、狙撃兵は特にな、」

水戸、ただ首を横に振り

「いいえ、全部が全部、怒鳴り込みでしたからね、乙川さんの透視、本当疲れを知らずの、先攻抜群で斥候部隊抜いちゃいましたからね、それも規律どうとかなんですけど、」

嘉織、ただ訝し気に

「まあ、キナ臭い話は抜きにして、アンダー40なら、花彩も一緒なんでしょう、何で八戸に連れて来ないの、会いたいよ、なあ、」

水戸、淡々と

「花彩さんは、ヴァチカンの司令室詰めです、だってあの速読ですよ、逐一上がるアンダー40全班の調書全て目を通して、報告出来るの花彩さんだけです、」

嘉織、いみじくも

「花彩が裏方ね、まあ総合職なら実務も大切かな、」

水戸、不意に

「そう、嘉織さん、上家衆なら、何か知ってますよね南米の件、ローマからネーデルラントへの行政機関の出向がかなり頻繁なんですよ、」

嘉織、憮然と

「そっちは、さあなだ、全米班の堂上米上に、ユーロ班の島上さん渕上さんとあの花彩が合流して、チリ州総崩れまでは軽く聞いた、今言える事は、日本にいるなら年末の『あなたの向こうで』で眼の当たりにしてくれって事だ、ここでは一切言えないから、それな、まあ、言っても信じないだろうけどさ、」

水戸、溜息も深く

「ここ数年、ローマの出動の比重が多く有りませんか、」

嘉織、凛と

「そう言うな、各国のエージェントも活発化している、まあ、良いんじゃないかな、誰かがヘマするまえにローマが何とかしてるんでしょう、水戸さ、お役目嫌いじゃないでしょう、」視線そのままに

水戸、思わず視線を逸らし

「何か、他人事ですね、」

純、視線追うままに

「嘉織ちゃん、他の話題にしよう、」

嘉織、尚も

「それなら水戸、他人事のままはいけないだろ、大いに相談に乗るって事だ、言いたいんだろ、言えよ、アンダー40の待遇なら恵まれてるって、良いか、ラテラノ大学はケンブリッジ大学抜いて最高峰なんだぞ、本当一般人入れないんだからさ、例え志違ってローマ離れても、つぶしが幾らでも利くからな、水戸さ、それでどこに行きたい、水戸の狙撃なら紛争好きな全米が高く買うだろうけど、年中戦場なら、本当疲れ抜けないからな、今はローマでよく考えなって、それがmolto meglioって事さ、」

水戸、またも首を横に振り

「移籍ですか、それはないですね、ローマで充分です、」

嘉織、くしゃりと

「だから水戸、何だよご愛想だな、一言二言でお仕舞いかよ、大方の迷いってそこだよ、スランプと慣れの行ったり来たり、大体だな、アンダー40の歴史はそれをも調整してこその試練なんだよ、越えれるよ、きっとな、」

純、漸く繰り出し

「嘉織ちゃん、あの乙川さんがだんまりなのを察してだよ、」

嘉織、うんざり気味に

「乙川もって、全く、何がどうなってる、」


トレイを二つ持ったまとめ髪の若いウエイトレスが、ラウンジを上がり、一同の席の傍らへと

「お待たせしました、シチリア鯖バーガースペシャルセットです、嘉織さん純さん、ごゆっくりどうぞ、」トレイを配し雰囲気を察しては足早に去ろうと

嘉織、ただ止めようと

「高山、待った、純の8等分に分けて貰える、」

水戸、くすりと

「シチリア鯖バーガーを8等分なんて、細か過ぎますよ、」

嘉織、綻んでは

「まあ、見てな、」

高山繁々と、肩から下げたスタッフバッグからバタフライナイフを取り出しては一挙手一投足を細かく刻み安全ピンをロック

「切れ味は最高ですよ、ご覧下さい、」一手二手三手休む事無く四手であっと言う間にシチリア鯖バーガーを刻む

水戸、ただ目を見張り

「且つ正確か、まあ階上家の馴染みなら、そういうことでしょうね、」

嘉織、くすりと

「ナイフ使いは、米上家だって、水戸、移籍はまだ早いな、きっと痛い目見るぞ、」

高山、頬笑んだまま

「そんな物騒な敵味方のお話は、もしもでも駄目ですよ、仲良くいきましょう、」

嘉織、毅然と

「高山もよく言うよ、良い、本州最北端でも、堂上の隠れる場所無いからな、もし見たら教えるって、」

高山、深くお辞儀しては

「嘉織さん、貴重な情報ありがとうございます、とは言え、堂上さん来ると思うんですけどね、風光明媚に、新鮮なお魚に、疲れが一発で取れる温泉、それ故に、米上家の監査何人か来ていますので、間違って小競り合いは避けて下さいね、」

嘉織、ただ溜息

「危ないな、迂闊に電磁銃で対応するところだっったよ、って私の顔知ってるよね、」

高山、くすりと

「それも如何でしょう、現在堂上さん事案は上限無しです、隠すと為になりませんよ、」

嘉織、うんざりと

「敵味方の話をしておいて、そこ、堂上絡みで死にたくないものだよ、」

純、綻んでは

「高山さん、カットありがとうございます、シチリア鯖バーガー頂きますね、」

高山、くすりと

「嘉織さんは、過保護ですね、かぶりついても固く揚げてませんからね、」

嘉織、凛と

「高山、照れるから、そこまでね、」

高山、一礼しては

「それでは、ごゆっくりどうぞ、気を使って追加メニューは結構ですからね、」ただ踵を返す

水戸、ただ冷めた視線のままに

「シチリア鯖バーガースペシャルセットどうぞ、冷めますよ、ハッシュドポテトもユーロに無い旨味ですから、楽しみましょう、」

嘉織、察しては尚もうんざりで

「水戸、君はさ、純、あっちの席に行こう、お邪魔の様だ、」腰が浮くも

純、嘉織の右手を掴んでは

「嘉織ちゃん、駄目、そうじゃないよ、」

水戸、くすりと

「嘉織さんも、着飾れば、渕上さんの艶やかさに負けないものの、」

嘉織、再び腰を降ろし

「水戸、そのリップサービス、ゆっくり聞こうじゃないの、年層の女性に有って、私に足りないものって何かな、着物なら旅館に沢山あるから、正月前でも着飾ろうか、その前に地ビール奢るから、私達を褒めろよ、」

水戸、くすりと

「地ビールは止めておきます、美鈴さんの車借りていますから、」

嘉織、くしゃりと

「まあ、事故ってはな、美鈴の往年のアウディもパーツ取り寄せるのも大変だしな、」

純、嬉々と

「シチリア鯖バーガースペシャルセットも来たし、取り敢えず地元コーラで乾杯しようよ、」ただ杯を両手で握り

嘉織、杯を上げては

「津軽路コーラ、ジンジャー強いけど、これはこれなんだよな、」

水戸、杯を上げては

「もう、自分の氷も溶けきっちゃいましたよ、」

嘉織、くすりと

「いいから、津軽路コーラは何杯も飲む物じゃないって、」

純、急かす様に

「水戸さん嘉織ちゃん、乾杯だよ、」

嘉織、手前に杯を差し出し

「まあね、クリスマス近いし、それで行こう、乾杯、」

水戸、杯を差し出し

「乾杯、」

純、ただ陽気に両手で杯を差し出し

「乾杯、」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る