第7話 2087年12月17日 青森県青森市八戸区 暫定国道45号線 ラシーンマークツー内

帰途の中、階上幸或旅館の送迎車日産キャラバンとは別行動に、ラシーンマークツーの車内には嘉織と純


階上純、思い倦ねては

「嘉織ちゃん、同じ赤だけど、また車替えたの、」

階上嘉織、嬉々とハンドルを何度も叩き

「いや、やっと新しく納車、前のニュージュークは代車だよ、5台潰したのに、本当太っ腹だよ日産グローバルセンター、まあ最後は完全武装の箸木のニュージュークまでフレームだけにしたから、辛うじてほぼ5台か、よく有る誤差ね、」

純、ただ引き攣っては

「はは、お仕事大変ね、まさかあのフェアレディZクラシカルも、多分そうなるよね、いやなったかな、」

嘉織、事も無げに

「まあね、スポーツカーはね、余りに目立っちゃうから、真っ先にカーアクションになって、最後はC4満載した低車高整地ブルドーザーを食い止めて、影も形無く大爆発、納車の時から軽かったから、そりゃあそうだよね、」

純、ただ苦笑いも、ふと車内を見渡しては

「でも全席にモニターって、DVDでも見せるの、」

嘉織、神妙に

「それね、そうだよね、そこのコンセプト分からないんだよ、折角のドライブに何でDVD見るかな、」

純、助手席のコンソールのタッチパネルを勝手知ったる如く開いては、ラシーンマークツーの短いプロモーションビデオを再生

「ふーん、不思議だね、」ただ前面の画面に食い入る

嘉織、くすりと

「まあね、本社営業の説明が面倒臭くなってフルオプションって言ったらこれだからね、」

純、ふと振り向き

「それって請求書大丈夫なの、」

嘉織、淡々と

「さあ、今回は、箸木オートのメンテ総費用含めて日産グローバルのモニター費で落ちるらしいから、詳しくは知らないよ、まあ国産車だから、そこそこリーズナブルじゃないの、」

純、くすりと

「本当は、嘉織ちゃんの天引きじゃないの、」

嘉織、目を見張っては

「おおー、そこか、まずい、旅館に帰ったら天上さんに電話しないと、どんな割賦金になるんだよ、って天上さん、東南アジアに行ったきりだよ、シンガポールプラザパシフィックに伝言だけは残して置こうか、」

純、ふと

「そう言えば、三日前に天上さんの伝言届いてたよ、メリークリスマスだって、」

嘉織、うんざり顔で

「その一言か、天上さんさ、忙しいから先に言っておこうだなんて、何かもう、やっぱりグレートティモールにどうしても付いて行けば良かったな、」

純、首を振っては

「それも全部終ったと思うよ、今朝テレビ見たら、宮殿の焼け跡にカメラ向けられていたもの、」

嘉織、神妙に

「それって、こんがり、」

純、こくりと

「それ通り越して灰だね、宮殿は山の天辺だから、消防車さえ入れなかったみたいだね、」

嘉織、ただ溜息も

「高城だからって、攻略不可能の理屈は、さすが糞婆軍人だよ、へどが出る、」

純、窘めては

「嘉織ちゃんも、品が無いな、いつも通りにコンプリートVHSでマルチチャンネル長時間録画してるから、ゆっくり確認してね、」

嘉織、涙脆くも

「うんうん、日本国の担当私一人だから、大いなる助手は助かるよ、」

純、訥に

「その助手さんって、私はともかく、アルバイトで雇えないものなの、」

嘉織、諭す様に

「無理だね、お礼参りあるから、事務所借りて大ぴらは流石にね、素行完璧なホテルに泊まるがやっと、あとは車中泊、それに付き合える助手なんている訳ないしね、」

純、ぽつりと

「関東は、ダイハードだね、」


ラシーンマークツーのドライブは軽快に進み


純、不思議顔も

「全然、道路補修していなのに、安定性いいよね、」

嘉織、ただ頷いては

「そこそこにね、今一後部輪のステアリングがスムーズ過ぎるのが不思議だけどね、それより、純、こっちのラシーンマークツーの方が居住性良いでしょう、このまま十和田湖にドライブしてみる、ねえ、」

純、くすりと

「駄目かな、相変わらずは旅館のお仕事あるから、観光客さん連れてなら良いいよ、」

嘉織、咽び泣きそうに

「くー、真面目だよ、純、本当目に入れても痛くないね、うんうん、」

純、訥々と

「嘉織ちゃんが褒めてばかりいるから、反抗期が無いのもどうよね、」

純、ただこくりと

「いいの、純はそのままでいいんだよ、」

純、ただ不満顔で

「そうなんだよね、喧嘩しても、家族の誰にも勝てそうにないのがね、これって、一般家庭もそういうヒエラルキーなのかな、」

嘉織、頬笑みながら

「まあ、うちの一族は、他所と一緒にしない事だよ、純は格別の特別扱い、それだけ、」

純、尚も不満顔で

「それもね、嘉織ちゃんから、護身術しか教えて貰えないのもどうなのかな、」慣れた手付きで、絣の袂から電磁銃S&WM49エレクトロを抜き出す

嘉織、ちら見しては

「護身術大いに結構だね、そう、18歳過ぎたんだから、ナンパしてきたら遠慮なく射抜いちゃいなよ、」

純、S&WM49エレクトロのリボルバー部を取り出し、充電池を確認しては、戻してはかちりと

「高校卒業して持たされてからは、射的場で撃つ位だから、いざというとき使いこなせるかな、」

嘉織、右手でハンドル持ちながら、左手で指鉄砲

「ぶれずに、目に入ったら、瞬きせず撃つだけだよ、」

純、こくりと

「嘉織ちゃん物騒ね、でも心得ておくね、」


ドライブは続き、実家の階上幸或旅館周辺を、ラシーンマークツーで巡視中


嘉織、前面の赤い巨大球体に刮目

「あれ、あのモニュメントなんだよ、」

純、事も無げに

「ああ、元ゴルフ場のね、例の空き家に住み込んだ芸術家さんが持ち込んだ作品だよ、あれで八戸にお客さん来るといいわね、」

嘉織、ただ目を凝らし

「ありゃ、地球儀か、でも、何故赤い、」

純、ただ目を凝らし

「興味津々で寄って見たお客さんが言ってたけど、制作者に聞いたところ火星儀だって、こっそりお客さんが写真撮って来て、画像荒いけどオリンポス山もあったよ、ふーん、そうなんだって、でもね、アートにそんな再現性必要かな、」

階上、ただ訝し気に

「まあ、察するとしても、あんな目立つハンドメイドの爆弾作る阿呆はいないか、」ただ溜息も「それで、階上村で火星って、誰が興味持つんだよ、その芸術家さっぱり分からんよ、」

純、ふと

「でもね、青森市でUFO祭りやってるから、いいんじゃないかな、」

嘉織、ただ苦い顔で

「よく10年も続くよ、ただの仮装大会じゃないの、」

純、朗らかに

「UFO来る迄続けるそうだよ、それと、もし来たら、宇宙人とバーベキューだって、それ、ただバーベキューしたいだけじゃないかな、」

嘉織、悩まし気に

「凄え趣旨だよ、よくも考えるよ、」

純、嬉々と

「それでも、宿泊三日間で、八戸にもよく落としてくれるよ、」

嘉織、ふと

「それ、権田の所にも寄って見るか、」

純、目を見開き

「いやいや、嘉織ちゃんが、いきなり八戸区役所に行ったら騒然としちゃうよ、まずは嘉織ちゃん来てるよとかの、伝聞からじゃないと、」

嘉織、ただ破顔で

「良いって、良いって、八戸区役所の応接室のお茶菓子頂こうよ、相変わらず上質な煎餅出してるんだろう、」

純、苦笑いも

「自分から、応接室って、いいのかな、」


ラシーンマークツー、迫る火星儀の傍らを過ぎ


階上、口を開けたまま

「ああ、結構なガタイだな、それにしても、全く鉄の無駄遣いだよ、10トンは有りそうだったな、最近の芸術の流行りは大きさか、」

純、高揚したまま

「ふふん、このまま居着いて太陽系作ってくれるなら、きっとオールフェリー運行便増えるよね、」

嘉織、ただ溜息で

「それだよ、オールフェリーの便増やしてくれないと、出張もままならないよ、道なりも止む得ないけど、路肩の残留地雷怖いしね、」

純、思い倦ねては

「ふむ、春から不入の地の九州の便増えたけど、そっちは本当に安全なのかな、」

嘉織、目をしばたかせ

「ああーっと、何か一瞬目眩したよ、」

純、不意に

「何かあったの、」

嘉織、嘉織への視線そのままに

「噂のままだけど、明らかに堂上らしい眼鏡野郎が、復興神田古書街で、九州の地図片っ端掻き集めてるって聞いたな、何しでかすんだあいつ、と言うより、折角の九州復興中なのに、暴れたら承知しないからな、」

純、ただ嬉々と

「ああ、あの堂上さん、はいはい、格好良い人、嘉織ちゃん、野郎は無いよ、」

嘉織、ただぶすっと

「純、口説かれたか、」

純、くすりと

「おかしい、喬爺が生きていた頃に来ただけよ、」

嘉織、真顔に戻っては 

「そっちな、未だに喬爺の伝手の客いるからな、そこだけは有り難いことだよ、」

純、頬笑んでは

「そこ素直なんだ、」

嘉織、神妙にも

「喬爺の通夜には何とか間に合ったけど、何かな、」

純、朧に

「喬爺に言い足りないの、散々喧嘩してたじゃない、」

嘉織、思いも深く

「いざな、社会に出ると喬爺正論だよ、妥協したらとんでもない目に遭う所だったぜ、」

純、大きく溜息しては

「普通は真逆なのにね、」

嘉織、くすりともせず

「平成初期の隷従世代と、私達は違うって、純は倫理の時間に学んでないの、」

純、凛と

「平成ね、お金で幸せを買えるなんて幻想もいいところだよね、」

嘉織、吐息混じりにも

「まあ、仮初めのそれを手に入れて、幸せと感じてしまう人間もどうかしてるけどな、」

純、嘉織をまじまじと

「でも、平成の人達って皆そうなんでしょう、」

嘉織、首を傾げては

「と言うか、昭和後期から平成末期まで東京で延々消費していたから、平成の時代の成立ちそのものがどうかしてるよな、でもさ、戦前の話なんて、生き証人滅多に出て来ないからな、教科書もどこまで本当やら、」

純、ゆっくり頷き

「そうだね、『あなたの向こうで』の資料映像で見る位だよね、」

嘉織、はっと

「そう言えばあの番組、スポンサー増えたな、」

純、イントロも軽やかに

「ふふん♫お金の事なら一橋銀行♫愛と仁の一橋銀行♫、耳に残るCMだよね、あとロケ地のミシシッピ川の蒸気船、あんな大きいんだね、ふふ、」

嘉織、はきと

「おお、一橋銀行ね、この前、丸箸がボディガードだって、静岡の一橋銀行静岡本店に連れて行かれたよ、ラウンジただ最高でさ、重要文化財らしいよ、純、今度一緒に行こうよ、」

純、嬉々と

「それだったら、『美の巨人たち』で見た、一橋銀行ニューヨーク本店に行ってみたいよ、希少な新古典主義で統一された店内、凄っく良いよ、うんうん、これぞニューヨークだね、」

嘉織、ハンドルを確と

「おっつ、珍しく活発的だね、行っちゃうニューヨーク、何でも上家衆は一橋銀行と最近伝手出来たらしいから、頼っちゃおうか、記念に口座手帳作って、宝箱行きね、」

純、ただ直角まで首を傾げながら

「その一橋銀行頭取のインタービューも『美の巨人たち』で見たけど、只管遠巻きで何かの犯罪防止策なのかな、あと相当なお婆さんの筈なのに、何か声のトーンが柔らかいんだよ、何だろなって、でも会ってみたい感じの方かな、」

嘉織、ただ朗らかに

「純の琴線はそこか、いいよ、葉村さんも人事局局長兼務だし顔広いから一段落付いたら言っておくよ、あと源さんもアンダー40事務局長兼ネーデルラント連邦内務大臣だからね、二人の口利きなら、きっと純と一橋銀行頭取の対談は出来るよ、」

純、ただ綻び

「ふふ、嬉しいね、」

嘉織、ふと見渡し

「って、うっかりしてたら家に着いちゃうな、ちょっと回ろうか、」

純、ゆっくり頷き

「ああ、そこは怠り無し、用意周到だから問題無しだよ、任せて大丈夫だからね、」

嘉織、ただ上機嫌に

「純がそれなら、今日は存分に奢っちゃうかな、」

純、可愛くガッツポーズ

「ふふ、やったね、」

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