第17話 おにぎりにぎってみた

 手を振って車に乗り込む彼女。

「久しぶりだね~元気だった?」

 2週間ぶりなのである。


「まず、コレ食べて…」

(相変わらずだな~だが、この感じ懐かしいような)

 食べかけのお菓子を袋から出してくる。


「コンビニ行く」

 新商品のスィーツやらおにぎりなどを買う。


「はい、食べて」

 一通り、スィーツを食べた後、おにぎりを出してきた。

(ん?あたたかい)

 運転中なので、差し出されたままに口にしたが…あたたかい。

(あれ?温めてもらったっけ?)

 よく見れば、ラップに包まれている。

「それ…鮭だね」

「これ、自分で作ったの?」

「うん、作った」

「へぇ~彼女お手製だね~」

「うん」

(おいしいよ…ラーメンも作れないのに…おにぎりとはね、うん、なんか感動)

「つぎ、めんたいこ」

(2個めあるんだ…)

 食べ終わると、お腹がいっぱいになった。

「はい」

(まさかの3個め!)

「大きくない!最後の1個…大きくない!一番大きいよね…」

「うん」

 サラダチキンをマズイだの美味いだの言いながら食いながら3個めのおにぎりを差し出す。

「お腹いっぱいなんだけど…」

「まだいい?あとで食べる?」

(あと…とか今とか…じゃない気が…)

「アタシDVD返してくる…捨てちゃダメだよ」

「捨てないけどさ~」

 言いつつも、あの屋根の上へ放り投げたい気持ちもあることを否定できない。

 とりあえず、食べてはみるが…油っぽい…何が入ってるんだ?

(カツだよ…最後に一番重たい具がきたよ)


「あのさ~チョコとかアイスの前に、コレ食べてくれない」

 おにぎりを指さす。

 なんで?と言った顔で、首を横にフルフルする彼女。

(かわいい…だが……当面の問題は半分残ったおにぎりだ)


「海…グレーだね~」

「寒い…」

(アイスばっか食うからだよ…)

「車の外のほうがあったかくない?」

 車外でタバコを吸う彼女。

「寒い!服間違えた!」

 下着が透けるほどの服装…ちょっと早いんだよな~。

「夏じゃないの!」

「うん、今…梅雨…夏はまだ先」


「お腹痛い…」

 いつものことだ。

「胃薬…飲んだから大丈夫」

(相変わらずだ…)

「食前と食後にも飲んでいいヤツ」

(胃薬を食前と食後?あんまり聴かない飲み方だ…斬新…)


「あのさぁ~さっき食べた、明太子おにぎり…酸味が効いてたけど、御酢でにぎったの?」

「御酢?使ってないよ」

「えっ?結構な酸味があったよ…」

「酸っぱかったの?」

「うん…」

「……大丈夫だよ……」

(あれ?あの酸味…ダメなやつ…もしかして)


「俺…夜中…腹痛くなったら…おにぎりのせいだよね、謎の酸味と油とね」


 なぜ…逢う度に2人で腹痛に苦しむのか…彼女に理解していただきたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る