第9話 初料理

「冷し中華作ってきた」

「そうなの?」

「うん、タッパに入れてきた、後で食べよ」

「うん、今は食べないの?」

「ん、喫茶店にねハンバーグとケーキ予約しておいたの、ソレ取りに行ってから」

「冷し中華にハンバーグにケーキが今日の夕食なのね」

「うん、31でアイスも買う」


「予約していた桜雪です」

(相変わらず、俺の名前で予約するのね)

「ホントはココで食べたかった、時間的に無理なの」

「そうなんだ」

「アレ???金曜日と土曜日21:00までやってる……」

「週末だけ夜もやるんだね」

「……金曜日に来れば良かった……」

「調べたんじゃないの?」

「……うん……一応聞いてこよ」

 彼女は店に戻って行った。

「やっぱ週末やってるんだって」

(うん、書いてあるしね……そのように)


「アイス買ってく~何がいい?食べたいのある?」

「なんでもいいよ、そんなに食べたくないし」

「じゃあ、コレとコレ」

(2個買うんだ)

「このフードコートで食べたい」

「アイスはいいけどね、基本書いてなくても、他店の食べ物は持ち込み禁止だからね……普通は。それに僕はフードコートって落ち着かなくて嫌いなんだよ」

「うん、私も嫌い」

(ホントかよ?)


 しょうがないので車内で食べる。

(コレも嫌いなんだよな~なんか、みすぼらしい)

「コレかけて」

 冷やし中華のスープを差し出す。

 タッパには団子みたいになった中華めん。

(ほぐれねぇ)

「どうやって作ったの?」

「鍋がないから、お湯沸かして麺にかけて3分待った」

「ほぐさなかったんだ」

「うん、お湯に入れただけ、フタしたよ」

「乾麺だったらね~生めんは、ほぐさないと固まっちゃうよ」

「あ~だからね、今度はそうするよ」

(麺茹でれないって相当だな)

 ケーキ美味しい、とりあえずハンバーグの前にケーキなんだな、その前にアイス。

 やっぱ逆なんだよな。

(麺が粉っぽい、なんだろう粉団子って感じ?)

 具の無い中途半端な茹で麺と食べ残したハンバーグを食べた。

 しきりにアイスを薦めてきたが、ちょっと胃が辛かった、たぶん麺が効いている。

「自分で作った、冷し中華食べないの?」

「う……ん、あのね、出る前に一口食べてみたの……美味しくなかった」

(試食済みかい)


 その夜

「マズイ麺、全部食べてくれてうれしかった、桜雪は料理できるの?」

「せっかくの初料理だしね」

(料理、キミよりはできる、自信がある)

「今度はちゃんと作るよ」

(次回もあるか……茹で麺くらいは作ってほしいものだ)

「今度、アパートで一緒に作ろうか?」

「うん、キッチン、たばこ吸う以外使ったことない」

(キッチンはたばこ吸う場所なんだな)

「道具も何も持ってない」

(そこからか……一式買っていかないとダメなんだな)

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