第2話 ケーキ怖い

「ケーキ予約したの、あなたの名前で」

 彼女を乗せて、土地勘の無い街を彷徨う。

 ナビが役に立たない、道が細すぎて正確に案内できないような場所にあるようだ。

 途中のスーパーに車を止めて、おおよその場所へ歩く……迷う。

 地元の人に場所を聞いて辿り着く、ショートケーキ2個・モンブラン・プリン・シュークリーム 計5個。

 そして帰り道も迷う、人に聞く、たどり着く……疲れた。


「夕食はパンケーキ、行きたい店があるの」

 そう言っている彼女は、すでにケーキを食べ始めている、シュークリームを私の口へ運んでくる。

「美味しいね」

「パンケーキの前にケーキ、よく食えるね」

「ん?うん」

「その店さ、エッグベネディクトみたいな塩っ気のあるもの無いかな?」

「聞いてみる?」

 電話で聞いてみたが

「無いって、甘いのだけ」

(甘味ONLYか~)


「ゴディバ寄る」

 チョコアソート ショコリキサー アイス。

「ちょっと飲んで、美味しいから」

「いらない!」

「なんで!」

「気持ち悪い」


 バナナキャラメルパンケーキとコブサラダ。

「バナナ嫌いじゃ無かったっけ?」

「少しは食べるよ、後は食べてね」

「コブサラダもう要らない、後食べて」

「トマト駄目だよね」

「うん」

「アボガド嫌いだよね」

「うん」

(半分以上食えねえもんばっかじゃねぇか!)

 案の定、ちょっと食べてハイ!である。

 どんぶり1杯のサラダ……美味いけどね、塩っ気あるし。

「パンケーキ、フワフワだよ~美味しい!1個と半分くらい食べてね」

(まさかの75%シェア?)

「美味しいでしょ!」

(うん、食べたい時に食べたら美味しいんだろうな~、今ツライ)

「担担麺とか麻婆豆腐とかが食べたい……」

「あ~中華、今度行く?」


 食べ終わって帰宅中。

「コンビニ行きたい」

「何買うの?」

「新商品のデザート」

「あのさ、ケーキの食べかけ食ってからにしたら?」

「あれは、あなたの分でしょ」

(俺の分なの?)

 コンビニでプリンとロールケーキ・抹茶クリームサンド。


「あのさ、なんでそんなにデザート買うの?」

「食べたいから」

「食べれないでしょ」

「今日は食べないよ」


 しばし無言で運転する。

「ちょっと考えるよ~」

「うん」

「怖いよ~……今度、和食にする?」

「いや、ケーキとかその日に食べれる量だけにすれば?」

「毎日来れないじゃん、だから来た時に買いたいんだよ」

「コンビニはどこでもあるよ!」

「新商品なんだもん、あれば買いたい」

「1日にコンビニを何件も回る?1件で2~3千円使うんだよ!」

「う~ん……考えるよ~」


「ジャスコ行く」

「何買うの?」

「服見るだけ、あとタバコ吸いたい」

 彼女は自称『ヤニカス』である。


「ねぇ、抹茶のソフトクリームだって……あっ!ゴメン」

 察したようだ。

 ケーキ1350円 ゴディバ3600円 パンケーキ+サラダ2500円 コンビニ1500円

 およそ9000円弱……。

(セレブか……)

「ホントに考えてくれよ……食事も、金も」

「うん……」

「友達と行け、自分の金で割り勘で行ってくれ、特にケーキは」

「付き合ってくれる人いるかな~」

(いないだろうな~、3回目くらいで連絡取れなくなるだろうな~)


「それ美味しい?機嫌治った?」

 カップうどんを食べる私に話しかける。

(美味いよ!130円のうどん最高だよ!)

「しょっぱいの食べたらさ、コレ!」

 食べかけのケーキを出してきた。

「あなたの分」

「いらねぇ……」

(うどん最高!で終わりたいから……)

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