第14話 3−4: 第79日

 遅い昼食を摂りながら、ニュースと雑誌を見ていた。それらで面白いと興味を惹かれたことを電子ペーパーメモに所々メモを書いていた。

 ニュースで言われた人についてメモを取り、先日の人についてのニュースがどうだったのかと、シートの内容を遡って、またシートをめくり、いくつかの内容の表示を残しながら、これを購入した時までのメモに戻った。

 二ヶ月ほどではあるが、見直してみると、それでもメモの内容に、あるいは内容の傾向に変化があるように思えた。

 なぜ最近は、結婚話だの、付き合っただのというメモがあるのだろう? いや、興味を覚えたから書いたのだし、興味を惹かれる。

 先日のメモには、時間潰しに見たドラマについてのものがいくつかあった。そのドラマは、思い出す限り、見ない類いのものであり、見るはずもない類のものだった。それは恋愛ものであり、推理ものだった。


   切なさに泣けた。


 一つにはそうメモが書いてあった。


   秀逸なトリックであった。


 一つにはそうメモが書いてあった。

 ありえないことだった。ただそうとだけは思えた。言い過ぎだとはしても、それらは嫌悪の対象だった。

 なぜそうとだけは思えたのか、嫌悪の対象だと思えたのか。何かを掴みかけ、思い出しそうにはなる。何かを思い出したように思えた瞬間もある。「あぁ、そうか」と思うたびに、「それは何だったのか」と思い直す。それを掴めない。掴んでは、認識から溢れ落ちる感覚だけが何度もあった。

 愛は尊く、真実もまた尊い。それらこそが尊さの極地ではないのか。

 そのはずである。にもかかわらず、何かがざわめく。

 いつ頃から趣味に変化が現われたのだろう。緩やかに変化が現われたように思う。

 これは変化なのだろうか。ただの変化なのだろうか。それとも喪失なのだろうか。いや、まだ喪失ではないと思う。掴みかけることはできるのだから。喪失はこれからやってくるのだろう。

 これまでは平穏だった。多少の苛立ちはあったとしても、平穏であった。そこにさざ波が立った。もう忘れない。このさざ波を忘れない。このさざ波さえ手放さなければ、私は何も失なわない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る