第12話 3−2: 第64日
先に片手キーボードについて書いた。今日は、普通のキーボードについて書いおこうと思う。キーボードというよりも、キー・バインディングだ。
昔、触れたあるエディタのキーバインドがお気に入りで、普段使うエディタのキー・バインディングもほぼそれに沿ったものに変更してある。
一昨日、エディタのキー・バインディングを全て書き出した。これは、エディタにその機能があったし、いずれにせよ設定ファイルで書いていたのだから、問題はなかった。問題は、キーバインドを書き出そうと思ったきっかけだった。つまり、複数キーの組み合せでの操作について、どのようにバインドしていたのか、それが怪しくなったからだった。頭文字を使うのとは異なり、キー・バインドそのものには何も意味がない。昔、使ったことがあるエディタのキー・バインドに似せていること、そしてそれはこの条件を満たしていたが、ホーム・ポジションからあまり指を動かさずに操作できること。それが最大の条件だった。だが、意味がないということは、手がかりなしに覚えておかなければならないということだった。それは覚えているというものでもなく、そういう操作だとして指に染み付いていた。
手がかりなしに、そういう操作だと染み付いていたことが問題だったのだろうか。いちいち記憶を確認することもなく、意味のようなものを確認することもなく、ただ指が動いていた。それが問題だったのだろうか。
ある操作をしようとした時だった。指が動かなかった。その時には、エディタのメニューからそれを選んで済ませた。だが、また別の操作をしようとした時、また指が動かなかった。やはりメニューから選択し、その操作と、あと少しばかり書こうと思っていたことを書き、そこで一旦操作を止めた。
新しい空のファイルを開き、いくつか操作を試した。いくつか、いやいくつもキー・バインドが抜け落ちていた。
そして、しばらく考えた。このキー・バインドは捨て、デフォルトのキー・バインドに乗り換えようかと。
だが、デフォルトのキー・バインドは使い難かった。両手の指をあちこちへと動かさなければならず、面倒だった。分かり易くはあるのかもしれない。操作の名前がキー・バインドを思い出す助けにもなるだろう。だが、それよりも指を動かす面倒くささが気に入らなかった。
そこで、私が設定しているキー・バインドを書き出し、目の前に貼ることにした。
プリント・アウトを見ながら、だが、と思う。もし、いちいちこちらを見なければならなくなるのだとしたら、結局これは捨てるしかないのだろう。これらのキー・バインドは結局、意味を持たないキーの連打によって機能を呼び出しているところが問題なのだろうと思う。ただ長い習慣で覚えているのだとしたら、無駄に脳機能を使っているということなのかもしれない。
よくあるキー・バインドを使っている人は、どう考えているのだろう。ただ与えられたものが全てである。それが普通なのだろうか。
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