2: 人権正規化法
第6話 2−1: 第10日
昨日からだろうか。片手キーボードでの入力ができなくなっている。できないと言っても、ハードウェアやドライバの問題ではない。
片手キーボードを使う時には、たいだいの場合、入力を確認することなしだった。ただ入力を思い描き、操作していた。ちょっとしたメモを書くような場合だったから、それでよかった。一昨日までは、ただそれだけのことだった。
それに対して、現在は、片手キーボードを使う場合、どうしてもある文字、あるいは文字列を入力する際のキーやその組み合せ、そして入力補助機能の何番目の候補かを意識せざるをえない。
そうなると、入力途中のものからどうしても注意が削がれる。これは、片手キーボードを使い始めた頃と似た状態だ。懐しいとも言える苛立ちを感じる。それとともに、入力結果をその場で編集し、あるいは入力ミスがあったとしてそれをその場で修正することは、もうできない。
この日誌も、片手キーボードで書いてはみたものの、結局普通のキーボードと、そしてディスプレイを見ながら修正している。およそ、一文に1, 2個の修正だろうか。
片手キーボードでの記録は止めた方がいいだろうか。普通のようにグラスを着け、それで入力を確認しながら入力すればいいのだが。幸い視力は悪くなく、これまで眼鏡をかける必要はなかった。ガジェットとして持っていたので試してはみたが、耳や鼻梁への、圧迫感がどうしても気になってしまう。ただの慣れだろうが。持っていても使っていなかったのは、その違和感になかなか慣れられなかったからだった。
慣れられないと言えば、腕時計も昔の一時期を除き、着けたことはない。やはり圧迫感にどうも慣れられなかった。ウェアラブル端末になり、バイブレーション機能や、バイタル・ログを取得する機能が搭載された頃、また試してみたことがある。だが、やはり駄目だった。どうにも慣れることができない。
結果として、小型スレートと片手キーボードを接続し、確認することなく入力をすることが習慣になった。それは、ただの何でもない習慣だった。
小型スレートの画面を見ながらポチポチと入力するか、それともいっそメモ帳とペンに戻るか。実用を無視すれば、メモ帳とペンが好みだ。
ちょっと検索してみたが、タッチ・センサがついた電子ペーパーが何枚も綴じられ、あるいは粘着性ののりでつけられているものがあった。入力は電子ペーパー上に手書で行なうようだ。あるいはキーボードも接続できる。20枚綴りの、綴じられているものとのりでつけられているものを買おうかと思う。
書き忘れていたが、10日ほどで影響が現われるのは、およそ通常である。
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