第11話 宇宙人がやって来た!
ぼくのクラスには、頭でっかちで暴れん坊のタケシがいる。
少しでも目が合えば怖い顔で睨みつけてくる。
「なんだ! もんくがあるのか!」
言いながらゲンコツで殴りつけてくる。
だからタケシと目を合わせないよう下を向いていると、
「おれを無視するのか。バカにしてる!」
言うやいなや、またゲンコツだ。
いったいどうすればいいんだよ。クラスのみんなは頭をかかえた。
そんなクラスに転校生がやってきた。
放課後、さっそくタケシは転校生を校舎の裏へ呼びつけた。
心配になったぼくたちは、こっそりのぞきにいったんだ。
「お前、おれにあいさつしなかったな!」
いつものようにタケシはすごんだ。
「みんなの前で、よろしくって言ったじゃないか」
転校生も負けていない。
ぼくはタケシに反抗したやつを見るのは初めてだった。
からだは小さいがすごい根性だ。
タケシと転校生はしばらくにらみあっていたが、いきなりタケシがとびかかっていった。
結果は、あっけなかった。もちろんタケシが勝ったんだ。
「わかったか。おれのほうが強いんだ!」
タケシは地面にたおれている転校生にどなった。
ぼくは転校生が泣き出すと思ったんだけど……。
ゆっくり立ち上がった転校生は服についた土ぼこりを手ではらいながら、
「こんなことしていいのか? ぼくは……ほんとうはウルトラマンなんだぜ!」
と言ってフフフフッ……と笑った。
ぼくたちはずっこけた。
だれかが言った。
「あいつは吉本だ!」
「いや、ホリプロかもしれない!」
ところが転校生に笑われたタケシは、なんと泣きながら帰ってしまったのだ。
校舎のかげで見ていたぼくたちは、唖然としてお互いの顔を見た。
「どうなってんだ?」
飛び出して聞いてみたが、転校生はヒミツと言って笑っているだけでおしえてくれない。
それ以来タケシは転校生をいじめなかった。むしろぺこぺこしている。
そのぶんぼくたちは、いままで以上にいじめられた。
クラスのひとりが思い切って言ってみた。
「じつは……ぼくはウルトラセブンなんだ」
するとどうだ。タケシはおとなしくなったんだ。
それからは、みんないじめられると、
「おれ、ウルトラマン・レオなんだぜ」
「ぼくはウルトラマン・タローだ」
「わたしはウルトラの母よ」
そして、ぼくはウルトラマン・ゾフィー。
帰ってきたウルトラマンやウルトラの父……。
中にはウルトラの父と愛人にできたウルトラマンの異母兄弟なんてのもあって、
とうとうタケシをのぞいてクラスのみんながウルトラマン・ファミリーということになってしまった。
もちろん、みんなにせもののウルトラマンだ。
でも、ほんものの宇宙人がひとりいたんだってことは、このときにはまだ気づかなかったんだ。
十年後、タケシが巨大な怪獣に変身して地球を破壊するなんて、だれも想像できなかったんだ。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます