第8話 リーインカーネーション
頭上で波紋が拡がった。
鯉は、急いで泳いでいく。
水面に浮かぶ獲物を大きな口でパクリとやる。
しかし、それは枯葉だった。
口の中で転がして、水と一緒に水中へ吐き出す。
鯉は思った。
「久しぶりに、青虫が食いて~!」
たしかカゲロウを食ったのは、だいぶん前である。
あの時は大量だった。
池一面をカゲロウが覆い尽くしたのだ。
それいらい、藻ばかり食っている。
おっ、また波紋が拡がった!
鯉は急いで浮上していく。
パクリと獲物に吸い付くも、びくともしない。
不思議に思った鯉は、その獲物の先を窺ってみた。
徐々に波紋が薄れて、少年の顔が水面の上に見えた。
鯉は、思った。
「あれ、懐かしいなあ……」
そうか!
鯉は思い出した。
「あいつは、子供の頃の俺じゃないか!」
一方、池に指を浸していた少年は、
「あれ……」
胸がきゅ~んとなって切なくなってくる。
過去に同じような経験をしたという記憶が……。
「夢だったのかな~」
その時は、確か……池の中から覗いていたのだった。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます