第8話 リーインカーネーション


 頭上で波紋が拡がった。

 鯉は、急いで泳いでいく。

 水面に浮かぶ獲物を大きな口でパクリとやる。


 しかし、それは枯葉だった。

 口の中で転がして、水と一緒に水中へ吐き出す。


 鯉は思った。

「久しぶりに、青虫が食いて~!」


 たしかカゲロウを食ったのは、だいぶん前である。

 あの時は大量だった。

 池一面をカゲロウが覆い尽くしたのだ。

 それいらい、藻ばかり食っている。


 おっ、また波紋が拡がった!


 鯉は急いで浮上していく。

 パクリと獲物に吸い付くも、びくともしない。


 不思議に思った鯉は、その獲物の先を窺ってみた。

 徐々に波紋が薄れて、少年の顔が水面の上に見えた。


 鯉は、思った。


「あれ、懐かしいなあ……」


 そうか!

 鯉は思い出した。


「あいつは、子供の頃の俺じゃないか!」




 一方、池に指を浸していた少年は、


「あれ……」


 胸がきゅ~んとなって切なくなってくる。

 過去に同じような経験をしたという記憶が……。


「夢だったのかな~」


 その時は、確か……池の中から覗いていたのだった。



                         (了)



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