第5話 君とは今日限りだ!
僕は、ぐったりとした彼女の体を濡れタオルで拭きはじめた――。
最後に言っておくけど、
べつに君が嫌いになったわけじゃない。
本当のところを言うと、いまでも心の底から愛している。
嘘じゃない! 嘘じゃないったら……。
僕が、この世でいちばん愛しているのは君なんだ。
そう、憂いのある瞳と、情熱的な唇――。
僕は、君に首ったけなんだ。
本当だよ。
だから今だって君を抱いたじゃないか! しかも、3回もね……。
なんだか自分でも恥ずかしくって、顔が赤らんでくるよ。
だから、君に対する僕の気持ちには変わりがないんだ。
いや、そうじゃない!
君が何もしなかったからではけっしてない。
最初から僕は、君には何も求めなかった。
掃除、洗濯は僕がするし、料理は……そうだよ、オーナーシェフの僕がするさ……当然だよ。
週2回のゴミの日だって、僕が店に行くついでに指定場所に持っていく。
君は、じっと僕を待っていてくれればよかったんだよ。そう、ダブルベッドでね。
実際、君はそうしたのだけれど――。
でも、そんな君との生活にもピリオドを打たなければならない。
君を帰さなければならなくなったんだ――。
なに、君が悪いんじゃないよ。
ほんのわずかの
たとえわずかな綻びでも、きっと最後には二人を引き離してしまう大きな綻びになってしまう。
もちろん、その綻びを
この際、新しい彼女を迎えることにしたんだ。
だってそうだろう、たとえ繕ったとしてもすぐにまたほころびてしまうだろうから……。
もう、決めたんだ。
君と別れて新しい彼女を迎えるって……ごめんね。
僕は、一人でぶつぶつと呟きながら彼女を無理やり箱詰めにした。
送り状の摘要欄には「アソコが裂けたので交換お願いします」と記入して……。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます