少年院を退院し、後にアメ村で活動するラッパーのリアルドキュメンタリー

MrR

第2話 clubへのアプローチ

 この日は仕事が休みで俺は彼女の家に来ていた。


「オジロ、カッコええな。レイ君もこんなんやったらええのに笑」


OZROSAURUS – Hey Girl geat.CORN HEAD


 毎週楽しみにしてた、テレビ番組

 流派Rを彼女と見ていた


「いやっ実は俺も……いや、何でもない」

 俺このままでええんかな。やっぱり茂に連絡するか……



  ———————翌日———————



「もしもし?お前のお兄ちゃんラッパーやったやろ?ライブってどうやってたん?」


「えっそんなん知らんで!兄貴がラップしてるのは知ってるけど笑」


 茂とは同級生で小学校から中学校まで同じ学校に通っていた。お兄ちゃん

(源CREWのラッパー)は昔、大阪で有名だった。

 

※源CREW

 大阪のhiphop界隈では、茂千代が所属していたデスペラードに肩を並べる程の認知度で、当時の格式で言うと韻踏合組合よりも上に位置していた。


「てか茂も俺らと一緒にラップやろ!」


「ちょっ強引やな笑 でも楽しそうやからええか笑」


 こうして新たに加わったお調子者の茂と

 エロい野望を持った伊達の三人で

 毎日リリックを書いていたのであった


 いつものように俺の家で集まっていると、茂がお兄ちゃんの周辺から仕入れてきた話を得意げに語り始めた。


「レージングレーシングのヒロ君が言ってたんやけどさ笑 あの人ら、最初は体育館みたいな所でライブしてたみたいやで笑」


「そんな訳あるかいっ!」

 ……いや、ちょっと待てよ。閃いてしもた。何も受け身でいてる必要はないんや!


 よし、今日はクラブ【ギグ】に行くぞ


「ええー突然やなぁ。てかクラブと言えば女やんなぁ……ちょっと服着替えに家帰るわぁ……」


【Raging Racing】

 当時、大阪では飛ぶ鳥を落とす勢いで、ブラストの日本語ラップコーナーでも高く評価されていた。現在はhiro、yousukeの2MCでbomgrowとして活動している

 

【Club ギグ】

 当時、堺東に立地しており、特にreggaeイベントが盛んで歴史があり、老舗として有名だった。その後、店舗を大浜に移転するものの、立地が悪くて集客が得られず、資金繰りに失敗。オーナーは事業を清算した


「よし、今日は人も疎らで空いてるな」


「このイベントさぁ女が全然おらへんやん………」

 

「こんな過疎ってるイベント初めて来たわ笑 今までお兄ちゃんが出てるイベントしか行ったことないからなぁ笑」


「俺らいつまで経ってもライブやる場所がないやろ?だから俺らで主催すんねん。その為に、ここのオーナーに話しに来てん」



茂・伊達「「えええええええええええ!!!」」

 

「……うるさいなぁ。もうええから、バーカンにおる店員に話かけてオーナーと話がしたいって言って来い」


「ええ…俺が話しかけんの?まっいいか笑」


 お調子者である茂はコミュ力がズバ抜けて高く、誰とでも仲良くなれるという世にも奇妙な特技を持っていた。


「オーナーが会ってくれるって笑」

 

 この妖怪、交渉に掛けた時間はあっという間であった。


 clubの店員に案内されてカーテンの奥へと進むと、そこには貫禄のある男がギラギラとした眼でこっちを一瞥し俺等にソファーへ座るようにと促した。ギグのオーナーだった。

 

「初めまして、レイキと申します。早速なんですが、このクラブで俺等にイベントを主催させて下さい!」


「ほんま早速やなぁ、てか主催って言った?この辺じゃあんま見ない顔やけど、何処かでライブとかやってんの?」


「いえ……俺等はライブをやる場所がなくて主催しようと思ったんです。正直イベントの事も何にも知りません。ど素人です。でもhiphopをやりたいって気持ちは誰にも負けません!」


「ふーん…何曜日にやりたいの?」


「金曜か土曜日にお願いします!」


「はっはっはっ、何かおもろいの来たな。まあええわ金曜にやらせたる。でも赤字が出たら自腹やで。それでも構わんか?」


 自分の気持ちを正直にぶつけると、器の広いオーナーは素人丸出しの俺等を快く引き入れてくれたのだった。

 

 チャンスは貰った。このイベント絶対成功させたる!


「はぁ……女おらんなぁ、レイキもう帰ろぉ……」

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少年院を退院し、後にアメ村で活動するラッパーのリアルドキュメンタリー MrR @reiki0420

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