第4話 昼休みの弁当
わたしが持ってきた弁当を開くと、荒西くんは視線を近づけた。
「もしかして、手作り?」
「うん。だけど、今日は昨日の残りとか入れてるから」
「でも、おいしそうだよ。にしても、女子の中には、自分で弁当を作って持ってきている人もいるんだな」
屋上で彼は言葉をこぼすと、おもむろに顔を上げる。今日は一日中晴れと、朝の天気予報で伝えていた。だからか、雲はいくつか浮かんでいるものの、青空が広がっていた。
わたしは自分の作った卵焼きを箸でつまみ、口に運ぶ。
お互いに隣り合って座り、どちらも弁当を広げていた。
荒西くんは自分の弁当に入っていた唐揚げを食べる。
「ぼくも、料理とかしたほうがいいのかな。昼の弁当を作れるみたいに」
「べつに、わたしはそんなに料理はうまくないから、荒西くんも無理にやらなくてもいいと思う」
「いや、これからは男も料理ができないとだめみたいだからね。結婚とかも今は、そういう時代みたいだからね」
「荒西くんって、そんな先までのこと、考えているの?」
「ううん。ただ、なんとなくそう思っただけだから」
荒西くんは首を横に振ると、持っていた箸を弁当の上に置く。
「ところで、白原さんはなんで、殺されたいって思っているの?」
「やっぱり、気になるよね……」
「それは、そうだよ。だって、そんなことをクラスメイトの子から言われるなんて、思いもしなかったことだし……」
口にする彼は、目を合わそうとはしてくれない。どこか嫌われてしまったのだろうか。わたしは聞こうにも、気まずそうな雰囲気に口が動かなかった。
荒西くんはそのことに気づいたのか、しばらくしてから、視線を向けてくれた。
「その、白原さんのことを嫌っているわけじゃないって! ただ、めずらしいというか、自分はどうすればいいのか難しくて……」
「わたしのことで、悩んだりしたの?」
「当たり前だよ! 大げさに言えば、ぼくが白原さんのこれからを決めるかもしれないんだよ?」
「そうだね……。わたし、荒西くんがそんなに真剣に考えてくれているなんて、思わなかった……」
わたしは弁当のごはんに目を移していて、今にも涙がこぼれ落ちそうになった。自分が発した『殺して』という言葉が、そこまで重いものだと意識していなかった。
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