第4話 崩壊
「入るなと言っただろう!!!」
彼が中へ入ると、いきなり野太い声で怒鳴るが聞こえてきた。
そしてその声に呼応するように男子生徒の叫び声。
争っているような何かがぶつかり合っているような、ドタバタという音も聞こえる。
私は怖くなって、中を窺うこともできずに部屋に背を向けてうつむき震えていた。
しかし、ふいに横から若い男の声がした。
「あーあ、入っちゃたの?」
慌てて声がした方へ顔を向けると、作業員らしい灰色のつなぎを着た若い男が立っていた。気だるそうな顔をして、クシャクシャの髪の毛をかきむしっている。
驚きのあまり声を失い、その場に立ち尽くしている私を横目に見ながら扉に近づくとこんなことを言った。
「あれはただの幻覚なんだけどね。」
扉が閉められる一瞬の隙間から垣間見えた男子生徒は、不規則に点滅する緑色の光の中で、一人で狂ったように何かと争っていた。
そしてどこからともなく、今度は女の人が現れた。同じ灰色のつなぎを着ている。
「どうしたの?」
すると先ほどの男の人が、男子生徒が入っていった部屋の2つ隣の部屋の前に向かい、こう尋ねた。
「ここ、何番だっけ?」
「もう、また忘れたの?No.66、66番よ。」
ここについて知っていそうだと思い、ついて行ってみたが何のことを話しているのかいまいちピンとこない。
私たちが立っている扉には“No.70”とある。
何が66番なの?70って書いてあるのに?
しかしよく見ると、その扉には小さな黒板のようなものがくっついていてチョークで数字が書かれていた。
女の人は軽く扉を開けての中に何もないことを確認し、どこからか黒板消しを出してきて、“No.70”の文字を消し始めた。
そしておもむろに先ほど話していた数字を書いた。
“No.66”
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