CHATOKO

 ゆいいつの家族であるトラキジの猫。なまえをチャトコと言ったが、その猫が死んでしまい、エフ博士は深く落ち込んだ。

 結果、ロボット工学の専門家であった博士は、チャトコそっくりの猫型ロボットCHATOKOを造り、自分をなぐさめた。

 しかし、そこは専門家であった。ついでとばかりに、CHATOKOを生き物の猫より頑丈に、より俊敏に、より嚙む力を強くした。


 CHATOKOにセンサーを取りつけ、ねずみを感知させ、駆除するようにプログラミングをほどこしたので、エフ博士の家にねずみが出ることはなくなった。

 また、エフ博士が留守の間に、家へ忍び込んだどろぼうも、CHATOKOは見事に撃退した。


 CHATOKOの便利さに気がついたエフ博士は、ロボットをパトロールに出した。

 外に出たCHATOKOは、ネズミなどの害獣・害虫を見つけては片付けた。

 また、エフ博士は、CHATOKOが迷子や困っている老人、あやしい人物を感知したら、無線で交番に知らせることができるように改造した。


 助けられた人々の声が役所に届き、CHATOKOはたくさん造られて、街に放たれた。

 街はきれいになり、治安もよくなった。もちろん、愛玩動物としてもかわいがられた。


 ここで話が終われば、よかったのだが、そうはならなかった。

 その国の政府がCHATOKOに目をつけて、工場で大量生産し、国中に配置した。

 CHATOKOたちには、政府への批判を口にする者がいたら、それを無線で秘密警察に伝えるという、新しい仕事が加わった。


 やがて、法律が定められ、国民は、CHATOKOを所有することが義務付けられた。

 一日中、政府の監視下に置かれることになったわけである。


 もちろん、エフ博士の家にも、政府の工場で造られたCHATOKO、自分の愛猫そっくりのロボットが送られて来た。

 じっと、エフ博士を見つめるCHATOKOの前で、博士が政府を批判すれば、たちまち、秘密警察がやってくる。

 忌々しいと破壊しても、とうぜん、秘密警察がやってくるのだった。


 博士は老若男女を問わず、国中の人々から「なんてものを造ったんだ」と非難され、深い孤独に襲われた。

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