第9話

【十月五日(月)】


今日もいつもと変わらず十五時四十五分には卓球場についていた。

相変わらず一年は台も出さずスマホゲームに夢中だ。

梶先輩からは

内山うちやま! これから頑張れよ! 君には不安要素しかないけど笑とりあえずよく話合うこと2年生、一年生、先生とも、話合うこと。何か問題があったらすぐにね。あとは先輩面しすぎない! 確かに上下関係は、多少は必要だけどみんなで使うんだからみんなで用意して、片付けして、掃除するのが当たり前! だから上から目線で先輩面しないこと! 以上! 内山はどんどん強くなってるし、期待してるから頑張れ!」

と、以前にQINEでエールを頂いたが初めは運動部なら後輩が台だしとか準備をするのは当たり前だと思っているし、昔ながらの伝統だと思っているので一年の考えがわからない。


後輩が準備をするっていう固定概念がおかしいのかと思ったりするが、僕はこの考えを曲げようとは思わないし、捨てる気がなかった。

しかし、最近は心を入れ替え台だしなと僕もやっているがこの一年のやらなさは来年のことを考えてもよくないと思い、

「先に来てるのに台出さないの?」

勇気を出して言ってみた。

一年はお前がやれよと言わんばかりに不貞腐ふてくされながら台を出し始める。


台も出し終わり、二年も全員集まったので練習を開始しようとしたが一年は誰も着替えていない。

顧問が来ても挨拶を無視してゲームに夢中なのが多く怒った顧問が、今日はミーティングにするとことにした。

「二年は二年で集まって、一年は一年で集まってまず話し合え」

顧問の呼びかけで、二つの輪を作り話し始めた。

うちの顧問は若い新任教師とベテラン教師の二人いる。

若い新任教師は一年の輪へ、ベテラン教師は僕たち二年の輪へ入った。


〜二年〜


 余談だが二年生の呼び方はこうだ。

 波多野はたの水瀬みなせ佐倉さくらの順番に僕は『ケンちゃん』・『水瀬』・『佐倉』。

 同順番で佐倉は『横っちょ』・『ミクさん』・『レモン』。

波多野は全員『苗字』で呼び捨て。

 水瀬は男子には『苗字』+『さん』で、佐倉には『ハルちゃん』と呼ぶ。

 

ケンちゃんはやる気なく僕が司会となって話を進めることになりそうだ。

いつものことだが部長なら部長らしくいろんなことをやって欲しいと思う。

僕も副部長だから少しはやろうとは思うが俺に任せっきりにするならその座を降りて欲しいとたまに思ってしまう。

ベテランの顧問は輪の中には入るが二年生だからなのか毎回あまり話には入ってこない。


やっぱり僕が司会をすることになった。

ミーティングの内容は一・二年ともにお互いの不満と解消法を探るだ。

「じゃあまずは、一人必ず一つ一年への不満を言っていこう」

じゃんけんをして負けた人から時計回りに言っていくことになり佐倉・水瀬・僕・波多野の順番に言うことになった。

「あいさつが出来てない」

「台を出さずにスマホゲームして遊んでいる人が多い」

「三年との距離が悪い意味で近すぎる」

「先輩を先輩としてみていない」

その他の意見も多く出たがまとめると『誰の事も敬うことをせず、自分たちが上だと思っている』ことだと四人は考えた。

「内山さんの言った三年との距離が悪い意味で近すぎるってどういう意味?」

「三年と話すなとかそういう意味じゃなくて敬語を使うとかそういう俺は当たり前と思っているからかと思うけど敬った中での距離っていうか・・・・なんていうか分からないけどなんとなくわからない?」

なんとなくわかるみたいな雰囲気だがあまり伝わっていないみたい。


「レモンが言いたいのは簡単に言うと上下関係を覚えろ! ってことでしょ?」

「そうそう。それそれ」

「内山と俺の意見は一緒ってことだよね?」

そうだねとうなずく。

「まあそうなると一年の気持ち次第だよね。あいさつも上下関係も気持ち一つでできると俺は思うし」

珍しくケンちゃんが意見を出してくれたのでみんな目が点となり遅れてうなずいた。

「そういうのは、俺ら教師の仕事でお前たちがどうたらこうたら言って雰囲気が悪くなってはこれが意味のないことになっちゃうからお前たちは一年に直接は言うな。俺らが言ってそれでも治らないときは別のやり方で注意をするから何かあったら俺ら教師に言ってこい」


こちらも珍しくベテランの顧問の先生が答えてくてみんな目が点となり遅れてうなずいた。

二年生はこのことについてのミーティングは終わり、個人のプレーについてのミーティングが始まった。

僕は広く浅く学ぶのではなく狭く深くまず学べと言われた。

最近は二球目から攻めてくるプレーが多いためサーブを磨けと言われた。

今まで使っていたサーブはすべてやめて、YauTubeにある動画に『七色巻き込みサーブのコツ』をみて練習することになった。

七色巻き込みサーブはゼロ度・十五度・三十度・四十五度・六十度・七十五度・九十度の七色の角度で巻き込みサーブをすると言う誰でもできる簡単なサーブなのだが、回転がかかっていれば取りにくいサーブらしい。


《リアルと妄想》


「学生時代も今も友達もいなさそうな先生はこの七色巻き込みサーブは出来るんですか?」

どうせできないだろうと顔をこちらに向けず目だけでこちらを見てくる。

その目も好きなんだよなぁ~などと思いながら「出来るに決まってますよ」と答える。

すると、本当に出来ないと思っていたらしく僕の事を目だけで見ていたのだが顔全体がこちらに向いた。

「最近卓球に興味持ち始めていて、もしよかったら教えてください」

今度ねと言い読み続けてもらう。

ってか、友達いるし。美梨みりさんよりかはいないと思うけど・・・・。

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