第28話 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市 市街 刀

表通りを戦き、建物の中から戦々恐々に見つめるサンティアゴ市民達


Bー52群が大量に散蒔いたチラシの舞う中、繁華街で二人男が競り合う

堂上と宮武の尚も続く鍔迫り合い、街を隈無く練り歩く

堂上、苛つくも

「宮武よ、逃げてばっかりじゃねえか」

宮武、村正を右から左に持ち替えては受け流す

「まともに渡り合えますか、俺に 噂通りその重さは骨に響きますよ」

堂上、怒髪天を衝く

「噂も何も、立ち会った事無いからな、宮武もここで手の内晒せよ」

宮武、うんざりと

「嫌ですよ、皆堂上さんの名前聞いただけでも、普通逃げますよ、」

堂上、柄の握りを柔らかに

「お役目上、尾ひれがついてるだけだ」

宮武、村正を背負い

「先日のモンテビデオ集団誘拐事件、隠れ家どころか町丸ごと吹っ飛んだらしいですね、その怒り何なんです」

堂上、虎徹を背負い

「モンテビデオの人口流出止まらず、誰もろくに住んでなかったからいいだろう」

宮武、苦笑しては

「それ、悪人はカウントされないんですか、可哀想ですよ」

堂上、吐き捨てては

「するか、搔っ攫った子供、皆学校も行かず小間使いだぞ 言いなりにしたまま、叱るわ怒るわ折檻するわ、ふざけるな そんなの勝ち誇った様に見せつけるご主人様とやらに、これっぽちの真心など微塵も無い」

宮武、じりりと下段の構え

「俺に怒られても困りますよ、それ、絡んでませんからね」

堂上、まなじりが上がる

「当たり前だ!」勢いに任せて電柱真っ二つ、電線の火花が散る

宮武、落ちて来る電柱を真っ二つに斬る

「ああ、もう、どこが沸点か分からないよ しかし切れ味いいですね、それでモンテビデオ切り刻んだんですか でも焼け焦げた後も多数とか、何ですかそれ」

堂上、凛と虎徹を鞘に戻しながら

「ローマ参画政府は上家衆だけじゃない、アンダー40も控えている 逃げても追うぞ」

宮武、戯ける素振りも

「ああ、目を付けられたかな、」

堂上、研ぎすます

「時間稼ぎするな、対峙しろ」抜刀、真空刃が突き抜ける

宮武、事も無げに村正で真空刃を受け流す

「それも如何ですよ 俺が勝ったら、溝端さんと八反さんに合流しちゃいますよ、それまずいですよね」同じく真空刃を放つ

堂上、動じる事無く村正の真空刃を露払い

「宮武から先だ、俺が負けるかよ、」

宮武、止めどなく

「八反さんは理由付けては中々抜刀しないし、残る相手は溝端さん、あの人本当にいかれてますよ、本物の快楽殺人者ですよ、この間にも皆さん死んでるんじゃないかな、これまずいな、聞かなかった事にして下さい いや刺激してる訳ではないですけど、逆に今この時間が危険ですね、俺も合流したらやっぱり皆死んじゃいますね」

堂上、打ち切れる

「ふざけるな、その中に愛する人がいるんだぞ、俺もお前もだ 俺が絶対残らず倒す、八反も溝端も、お前もだ宮武、来いよ!」

宮武、にべもなく

「何か引っ掛かるけど 堂上さん、凶暴だな、そんなに自分の事憎いですかね」

堂上、柄を両手で握り循環させる

「刀持っている以上、倒すのは悪のみだ、勿論ブレまくる奴も相手になってやる、来いよ、宮武」

宮武、同じく両手で柄を握り循環

「いや、ここだけの話 依頼貰っても、反米レジスタンス相手以外ふんぞり返ってるだけですよ 菜穂子さんの指示通り、第三帝国を刺激させないように嗅ぎ付けた奴らを追い返すだけです これも師匠の加賀さんが変な指示出してるから、こんな風に拗れるんですよね」

堂上、尚も循環

「師匠とか関係ないだろ、善悪共に見せて、反面教師にしてるんだろ、そんなの見切れよ」

宮武、尚も循環

「成る程、そういう教育もあるんですね、勉強になります ですが堂上さん、これ以上第三帝国に刺激するはまずいです」

堂上一閃、正面から真っ向に受ける宮武 “シーン”循環されたエーテルが静謐な音が響き渡る

堂上、鍔迫り合い

「宮武、何か知っててやるつもりだろう」

宮武、はぐらかす様に

「さあー、反米レジスタンスは八反さん手なずけちゃう勢いだし、第三帝国もどうにかしちゃうのかな」頬笑んでは、堂上を蹴り押し返す

堂上、後ずさるも

「間合いから逃げるな、その尾を寄越せ、それで丸く収める」左手を差し出す

宮武、背に付く尾に触れては

「やだな、黒星付いたら、評価が下がって部屋住みからスタートですよ、それは出来ません」

堂上、切に

「宮武よ、そんなきついか加賀さんの道場」

宮武、微笑

「兄弟子さん達の強さ分かってていいますかね」

堂上、手を差し伸べるかの様に

「加賀さんのところとは、正月の模範試合だけだが十分分かる もううちに来い、弟の所でのんびりさせてやる」

宮武、苦笑

「堂上さん知ってますよ それこそ、商いの方で忙しいとかで、剣の道極められないって出て行くそうじゃないですか、本家の入江さん筋は」

堂上、逡巡するも

「それな、人が少ないから、忙しいだけだ」

宮武、不意に

「今ひとつ釈然としないですね、あなた達の目的とやらが」

堂上、見据えたまま

「お前の目が曇ってるだけだ、だから、特別に相手になってやるんだよ」

宮武、村正を鞘に収める

「根っからの武士だな、立ち会いで体得しようさせようなんて そう、それに堂上さんの尾無いじゃないですか、それ誰に負けたんですか」

堂上、虎徹を鞘に収める

「いやー、それは話し難いな、何れな うん?」立ち止まっては空のBー52群を見上げる「おい、空見ろ、この気配、いつか爆弾落としてくるぞ」

宮武、改めて空を見上げ

「いや、これ落ちてますよ」


空に黒い点が無数に浮かぶ


堂上、見る見る顔が変わる

「そんな訳、、隠れろ」

急いで軒先に隠れる堂上と宮武

空からの無数の黒点が次第に迫る


間も無く上空より、Bー52群がエレクトリッククラスター爆弾投下、着地

道路屋根屋上に無数のエレクトリッククラスター爆弾がボールの如く跳ね回り、駆逐してゆく

転がるエレクトリッククラスター爆弾を、何度も飛び跳ねては避ける堂上と宮武

刹那 信管灯火、道路屋根屋上を弾け飛ぶ電撃、街中の電球ブラウン管家電がショートし弾け飛んで行く


転がり跳ね終えたエレクトリッククラスター爆弾が、尚も弾ける 

堂上、軒先より出る

「たく、水を差すな 宮武、それに絶対触れるな感電するぞ」

宮武、軒先より出る

「この状況、全米連邦は本気ですね」

堂上、刀を抜く

「これでも、第三帝国に付くのかよ」

宮武、止む得ず刀を抜く

「俺達はチリ州知事への派遣ですからね これも自分のお役目です、最後迄見届けないと」

堂上、歯噛みしては

「本当、妙に頑固だな、話せば分かるんだろう、お前、」

宮武、苦笑しては

「さあ、無理じゃないですか」


戒厳令のサイレンが突如終り、遠くから緊急サイレンが連鎖しては、ここまで鳴り響く 

緊急サイレンけたましく鳴り響き、溢れ出て来る人が次々と我れ先と通りを埋めるも、落とされたエレクトリッククラスター爆弾に捕まり感電する人々後を断たず


堂上と宮武、共に刀を収め、見過ごせない避難の人を介抱

堂上、抱き上げ

「どうした、」

着の身着のまま市民、電撃で体が強ばるも

「日本人か、戦車だ、とんでもない大きさの奴がやってくる、逃げなさい」

次々市民が逃げ果せてくるも

「来る、来るぞ!」

「逃げろ!」

堂上と宮武通り過ぎ、逃げ溢れる市民達、足元も見れず、エレクトリッククラスター爆弾の電撃に捕まり、身動き取れず石畳に転がる


宮武、苦い顔で

「戦車って、またM4ATの生き残りかな、予備機なんてあったかな」

堂上、不意に

「いや、この音、あの戦車よりでかいぞ、」


時速80kmでビルを破砕しながら飛び込んで来る全長18m全幅6mの蹂躙戦車T28DES、いよいよ繁華街へ突入 

宮武、さすがに驚愕

「でけえ、」

堂上、目を剥く

「何だ、これ」

堂上と宮武の鞘を、セキュリティーマシーンとして敵と見るや、T28DESが車体全センサーフルオープン、スタンバイ状態へ

「えっつ、俺を認識しないの、」

堂上、吠える

「お前も見た事無いなら、隠し球だろ」

宮武、とくとくと

「いや、刀捨てましょう」

堂上、進み出ては柄に手を掛ける

「もう遅い、」


“ビーービービビビ”警告音の間隔が短くなりT28DESの畳まれた砲塔部からついに拡散電磁砲炸裂 

堂上と宮武、共に抜刀、拡散電磁砲を円月剣で弾き飛ばす

堂上、尚も円月を斬る

「凌げ宮武、」

宮武、呼応するかの様に円月を斬る

「だから、なんで俺もですよ」

堂上、尚も円月剣

「これ見境無いだろう、戦え、」

宮武、同じく尚も円月剣

「仕方無いな」

迸る拡散電磁砲、通りと建物に拡散電磁砲通電しては迸り、転がるエレクトリッククラスター爆弾全弾に通電、痛烈な破裂

堂上と宮武の勇敢さを受けた市民達が戻り、辛うじて逃げ後れた市民を協力して担ぎ運び出して行く

堂上、吠える

「全員送り出す迄、凌げ」

宮武、絶叫

「痺れて来た」

堂上、ただ円月剣

「耐えろ、」

 

T28DESの各部全センサーが点滅、更に激しくなり、次の攻撃準備

T28DESから内蔵の砲塔が勢い良く射出され電磁超砲塔に展開、フルチャージ、上部側面に向って電磁ジェネレーター放熱板12基が外に展開し、フィンから凄まじい熱風蒸気が漏れ舞う


堂上、目を見張る

「皆殺しかよ!」

宮武、ついにぶち切れる

「させるか!」

堂上と宮武、共に苛立ち大音声、歩みも同じにエーテルを刀に循環

「おおおー」

堂上と宮武、迸る電磁場に髪が逆立っては、交互に重ね合わせたかの様に電磁超砲塔を一手二手三手四手次々同時に膾切り、電磁超砲塔の残部が行き場を失った電磁エネルギーで真っ赤に迸る、臨界寸前


T28DES、駆逐の為に、左右の格納部から踊り狂う様にスイングしながら中型電磁機関銃が迫り出し前方にスライドしては、電磁弾を連射 

電磁機関銃の電磁弾を隈無く刀で次々撥ね除けては、蒸気の立ちこめる中を、尚も突き進む堂上と宮武

堂上、語気も荒く

「いいか、ブッ刺せ、」

宮武、呼応

「分かってます、」


堂上と宮武、素早い繰り出しの応酬、同時に薙ぎ払っては、左右の電磁機関銃6つが真っ二つに大爆発、爆煙が直上に流れる


尚も果敢に進み出る堂上と宮武 実刀はT28DESの鉄の装甲とアンチシールドをお構い無しに、いよいよ共に車体前部に斬り込むと飛び出したセンサー群がみるみる爆発

堂上の右手のリングと宮武の左手のリングが同時に灯る、

「オオオ、」

堂上の虎徹と宮武の村正の勢いそのまま、T28DES側面を共に斬り裂いて行く 飛び出した側面の電磁ジェネレーター放熱板を同じタイミングで切り刻まれては、放熱出来ず熱し上がったT28DES“ギューイーン”と、早くも異音を唸り始め、車体上部の電磁ジェネレーター放熱板がいよいよ火を吹くも、尚も側面を斬り進む堂上と宮武

最後部まで残り5mも、

宮武、絶叫 

「固い、」

堂上、吠える

「俺とエーテル循環させろ!斬り裂くんだよ、」

同調、いよいよ顕在化するエーテル、堂上の右手のリングと宮武の左手のリングが最骨頂

虎徹と村正で深く抉り、一気に駆け抜ける堂上と宮武 堪らず後部エンジンが上部へ大爆発、その車体の重さでも一瞬浮き上がり、進撃が遂に止まる

堂上と宮武共に、左右から駆け抜けるも最後の30cm、いよいよT28DESを側面から切り刻み真っ二つ膾切りにする

前部エンジンから激しい空回り音、軋む様に鈍く唸るT28DES、車体の排熱口からは凄まじい蒸気と排熱炎が吐き出される


堂上、先の建物に走って隠れるようと

「宮武!隠れろ!」

宮武、並走しては

「当たり前です、凄いの来ます!」


車体熱で膨らむT28DES、上部砲身部と走行部がいよいよ別れ、丸ごと上部砲身部が地面にごとり落ちる

最後のあがきと残った電磁超砲塔から射出しようとするも “ドーーン” 鈍い音で上部砲身部自壊、周囲の繁華街が吹き飛ぶ 辛うじて残った走行部各電磁駆動部が暴走、真っ赤に染まり臨界突破、周囲100mが時間へ囲まれたかの様に大爆発“ゴバーーーン”、更に周囲一帯蒸気爆発、空に向って黒煙が垂直が延々伸びる


繁華街一帯、強力な空気振動で全てのガラスと壁面が砕け散る

堂上、カフェの中に逃げ果せ、コンクリート粉塵を被るも、振り払いながら

「まじかよ、何だこの戦車」事も無げに


外に出てはT28DESは木っ端みじん、周りの建物は見事破片が豪快に突き刺さり見る影がまるで無し

堂上、項垂れては

「やっちまったか、どう報告しよう、にしては被害は最小限って、こんな感じだったか、って映ってるかー」ブローチカメラを見ては項垂れる


街がざわめき始め、蹂躙された人を介抱して行く、堂上

「たく宮武、逃げろと言ってないだろう、最後迄付き合えよ、」不意に、爆煙で霞むその先に

眉上に髪を揃えたセミロングの日本人女性、ぐったりした宮武を背負いながらも

「お生憎ね、丈流たける君、宮武は貰って行くわ」

堂上、わなわなと

「菜穂子か、いるなら出て来いよ、皆死ぬ所だったぞ」

菜穂子、くすりと

「それはこっちの台詞よ、宮武、エーテルを出し過ぎて、途中で足がもつれ倒れて爆発に巻き込まれるところだったのよ、丈流君、無茶しすぎよ」

堂上、尚も

「いいから、宮武渡せよ、調書書いたら渡すからさ」

菜穂子、事も無げに

「駄目よ、刑務所に入れられたら堪ったものじゃないわ 寄合所通している以上、身元保証貫かせて頂くわ、ここは渡せないわよ」

堂上、食い下がる

「どうしてもか、」

菜穂子、毅然と

「どうしてもよ 私の残像剣搔い潜れた事あるかしら」

堂上、溜息

「俺、死ぬのか」

菜穂子、頷いては

「そう死ぬわね、そうなったら仇討ちとばかり栄子ちゃんも追いかけてきて死ぬわね それ悲しくないの」

堂上、意気消沈しては

「お役目は果たせないのは、武士の恥辱だ」

菜穂子、呆れ果てては

「いい、丈流君が追ってるのは第三帝国であって、私達ではないわ、アプローチを変えなさいと言ってるの その前に、ローマならこの惨状見過ごせないでしょう、頑張りなさい」宮武を背負い後にする

堂上、尚も

「いいか、追いかけるからな」

菜穂子、後ろ手に手を振る

「心しておくわ」爆煙の彼方へとゆっくり消える



様子を伺い繁華街に佇む、二人

忍足、したり顔で

「密かに街中に溢れるM4AT片付けるつもりがこれですか えーと、早乙女さん見ましたか、今の大爆発ごつかったですね、本当に直上に大爆発逸らして良かったのですか」

早乙女、顔も穏やかに

「ふっ、昔の思い人を死なす訳いかないわよ」

忍足、にやついては

「結局それ込みで、サンティアゴですか」

早乙女、忍足に軽く肘打ちしては

「あくまで物見遊山よ しかし少々厄介ね、この強さ、京都の寄合所には釘を刺しておくわ」

忍足、神妙に

「確かに、これは死ぬ迄戦う二人ですわ」

早乙女、厳かに

「さて堂上さんにも、釘刺しますね 救護がてら偶然装うのも態とらしいかしら」

忍足、苦笑しては

「早乙女さんは、二号さんにおさまるタイプと違いますよ」

早乙女、微笑

「二号さんは無しね あの二人所謂恋人ごっこ、長続きする訳ないでしょう それに私なら絶対堂上さんを死なさないわ」

忍足、怪訝に

「背中をちょっと突くだけですよ」

早乙女、向き直り

「勿論よ、さてお手伝い行きましょう」

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