第27話 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市 旧大統領府州知事公舎 ザ・エッジ

旧大統領府州知事公舎入口 立ち塞がる八反、腰には村正


渕上、呆れ顔で

「ほんまにいるんですな、八反さん通しなはれ」

八反、微動だにせず

「ワトソン州知事による戒厳令が発布されている、外に出て来たら州警察民州兵に捕まりますがね、どうやってここまで来たのですか」

北浜、進みでては

「俺の顔パスだ、ここも通せよ、ワイナリーの主人」

渕上、あんぐりと

「やれやれ、ほんまに門番さんどすね」

島上、吐き捨てては

「最悪な面子ばかり集めるな、第三帝国よ」

八反、くすりと

「最悪も何も、自分勇名を馳せてませんよ、ねえ渕上さん」

渕上、慌てる素振りも

「私も狭すぎる界隈に住みましてな 平安の厳っしい朝稽古で、加賀さんとこの道場から飛び出す人見てたら、それは怯みますがな」

島上、縋っては

「おい八反、目を瞑って通せよ、ちょっとでいいんだよ」

八反、尚も

「島上さん、おいそれと出来ません」

渕上、膨れっ面で 

「八反さん、そんな事言ってもアポイントは一昨日のうちに取ってますよ 今日、溝端渡す渡さないの返事頂きますでと、頂かんと礼に反しますがな」

八反、慇懃に

「もう溝端に会ってますよね、それが答えと思いませんか それに何せ戒厳令ですよ、これ以上外にいると本当に死にますよ、直ちにお帰り下さい」

渕上、憮然と

「そうは行きませんな、ブットの一言貰わんと訴追も何も出来ませんで」

島上、尚も

「八反、そもそも戒厳令を出したブットの素性知ってるのか」

八反、苦笑しては

「さあ、クライアントの事情は師匠しか知りません ワトソン州知事から、私はここを通すなと言われてるだけです」

渕上、お手上げの素振りで

「やれやれ、埒が明きませんな」

米上、熱り立っては

「師匠って、加賀さんなんでしょう、電話掛けてごねるわよ、京都のホテルから全部締め出すって、ねえ電話貸しなさいよ」

八反、事も無げに

「ちょうどいい、ホテルにお帰りになって掛けて下さい、お帰りはあちらです」

米上、歯噛みしては

「ぐーーー」

島上、焦り始めては

「渕上、押されてまくってるぞ、どうなってる」

渕上、もどかしくも

「知りませんがな、こんな強情さん、ああ時間が勿体ない」

八反、理路整然と

「言っておきますが無茶な戒厳令では有りませんよ、反米レジスタンスの乱痴気騒ぎはよく有る事です」

阿南、語気も荒く

「まだ反米レジスタンスで話を通すか 大体よくあるにしても、街中堂々と戦車走らせて見過ごすか、おい、それにこの爆破テロなんなんだ」

八反、くすりと

「サイレンは置いといてこの静けさ、爆破テロもやっと鎮火したと言うのに、これ以上仕事増やさないで下さい しかし戦車隊搔い潜ってここまでよく来れましたね」

渕上、花彩と美久里を差し出す

「ふふん、この娘達が止めたのよ、ほら、可愛いでしょう、可愛いから通しなさい」無茶を押し通す

美久里、切に

「八反さん、通させて下さい、」

花彩、切に

「八反さん、お願いします」

八反、溜息も深く

「さて、頃合いを見て、第三帝国なんとやらも動き出しますね 市街に展開するでしょうし、今から帰れも問題有りますかね」

渕上、拍子抜けに

「ほっつ、まさかの進展ですか」

島上、一喝

「おい、第三帝国なんて、そんなの市街に出すな!」

八反、毅然と

「私は客分ですよ、何の権限も無い」

北浜、尚も

「ここを通す為の全米連邦の令状が欲しいなら、後にしろ、この自作自演、ワトソン州知事に会って吊るし上げないと収拾つかんぞ」

八反、尚も被せる

「いやいやワトソン州知事は忙しい 建前上、反米レジスタンスたる戦車隊が潰されて、そのままサンティアゴ市が押し黙ったとあっては、勢いに乗じて反米レジスタンスがまた懲りもせず襲って来ますよ、今度こそチリの威信が地に落ちますね ここが踏ん張り所ですよ、ワトソン州知事は、ここで虎の子出せねばなるまい」

花彩、不意に

「そんな建前通りますかね、チリ州の反米レジスタンスって、そんなに怖いのですか」

米上、釈然と

「この現実と全然剥離してるわ 反米レジスタンスは全米連邦の雰囲気に馴染めず、ただやさぐれてるだけよ 終戦協定に調印したものの未だ落とし所も無く困り果ててるわ 素直に解散すればいいものを、ぐだぐだしては活動資金も底をついてる筈よ」

八反、歴然と

「そう、既成事実のあと一歩で反米レジスタンスを排除出来るんだ、それにも関わるな」

北浜、偉丈夫に

「だから、全米連邦の海軍が展開してないからって、自由すぎるぞチリ州 大統領権限行使して指揮権徴用するぞ」

八反、目を見張り

「それはお断りだ、チリ州の事はチリが守る」

渕上、縋る様に

「どれもこれも、いかんあかんとは、八反さん、本当いけずどすな」

美久里、果敢にも

「問いましょう、八反さん、そして皆さんの選んだ州知事が、第三帝国の人間でもですか」

阿南、畳み込んでは

「八反、もう限界だ、第三帝国はヤバい奴らだ、奴ら時期が来たと見て、このチリ州に恐怖政治敷くつもりだ、この風光明媚な市街吹っ飛ばすなんて厭わなかっただろ」

八反、一瞬躊躇うも

「あのワトソン州知事も、一般市民では、やっとまともな奴で通っている、そいつを外すのは容易ではないが、さて、まあ誰がなろうと大して変わらんだろう」

渕上、進み出ては八反と握手

「やっと、光明が見えましたがな」

八反、身構えるも手を離し、必死に手を見つめる

「刻印、何故押さなかったのですか、折角の機会だったのに」

渕上、朗らかにも

「まだまだ始まったばかり、うっかり刻印打ったら、八反さん演舞できませんよって」

八反、ふわりと

「何をしでかすんですか」

渕上、破顔

「さあ、痛快な事でしょうな」

北浜、懐から紙を出す

「いやもう仕方無い、これだ、昨日漸く大統領権限委託状が送られて来た、まずは全米連邦への忠誠を再度誓え、良い事あるぞ」大統領権限委託状を翳す

八反、溜息混じりに

「忠誠か、何事も後回しにされたチリ州に、その紙切れか」

北浜、切に

「おいおい、それは無いぜ、チリ州の全米への州加盟は、2063年に押し並べて各地住民投票で2/3獲得してる、大いなる民意だ 八反、俺が権力でごり押しする人間に見えるか、信じてくれ」

花彩、朗らかに

「ここまでの内情ご存知なら、八反さんが州知事さんに向いていますよ」


押し通る一同


北浜、偉丈夫に

「まあ、向いてるな」

渕上、溜息混じりに

「残念ながら、次の州知事さんは決まってるのですよ でもまあ当て馬にはぴったりですな、それいい案ですな」

八反、事も無げに

「それは遠慮します、レニーワイナリー繁盛していますから」

渕上、とくとくと

「“桜の里ワイン”飲みましたで、評判のうちに手放しなはれ、いつまでも長居するつもりも無いでしょう」

八反、苦笑混じりに

「これでも、ここまで来るのに苦労したんですよ、検討の余地も無いです」

美久里、唸る

「ああ、それは、うーん、どっちもー、皆ワイン欲しいと思うし、いい投機案件ですし、でも美味しいですし、うーん」

渕上、制する様に

「美久里さん、頭が高速回転してますが、それは後です」

美久里、閃く

「そう、後なら、レニーワイナリーに行きます、絶対行きます、」ファイティングポーズ

八反、慇懃に一礼

「美久里さん、招待状、是非ご用意しましょう」



不意に遠くの空から編隊と来襲音

急ぎ、大通りに躍り出て唖然とする阿南と北浜


阿南、見上げ目を見張る

「これか、この轟音」

北浜、唖然と

「これって何だ、まさか全米連邦」

阿南、歯噛みしては

「おいおい本当にやるつもりか、Bー52の大群って、どうしてもやるつもりなのか、北浜どうなってる」

北浜、冷や汗が顔に

「いや示威行動だ、ここで威厳見せるつもりだろ、多分それだ」

阿南、声を荒げる

「ふざけるな、ここはちゃんと確認しろ」

北浜、頭を抱え

「残念、俺は携帯持ってない、お前もだろ」

阿南、電話ボックスを指差す

「なら、あれだ」


俊速で電話ボックスに飛び込む、阿南と北浜

北浜、受話器持ち上げるも

「どこに掛けるんだよ」

阿南、不敵にも

「嫁だ、日本の首相ならゴネられるだろ」

北浜、首を振り

「全く甘いぜ、日本経由のゴネりでも全米連邦大統領権限は絶対じゃない、領土なら州知事の権限の方がまだ強いんだぜ」

阿南、烈火の如く

「ふざけるな、さっきの大統領権限委託状はただの紙切れか 大体そのチリ州知事が第三帝国の残党だろ この全米はどうなってやがる、権限がどうのこうのより、Bー52群を何とかしろ、お祭り騒ぎは一切無しだからな、これ以上第三帝国にうれションさせるな」

北浜、食い下がる

「開かれた国の弱点言うな、今更どうのこうの出来るか、これは考えがあっての示威行動だ、その真意を聞くんだよ」

阿南、狭い電話ボックスで受話器を取り合う

「まあいい、俺が先に電話する」

北浜、受話器を渡さじと

「ここは全米だ、俺に電話させろ」

阿南、尚も

「俺が先だ、電話よこせ」

阿南と北浜が揉み合う中、不意に公衆電話のハンズオフボタンが押され

「(戒厳令中につき、この電話は、現在、ご使用出来ません)」

阿南と北浜、絶叫

「嘘だろう、」

“コンコン”と電話ボックスを叩く日本人

「大変そうだね、」

阿南、電話ボックスを飛び出ては

「貴志、お前携帯電話持ってないか、貸してくれ」

貴志、一笑に付す

「俺がそんな大層な物持ってるか」

北浜、勢い余って公衆電話を揺さぶる

「どうにかならないのかよ、」

貴志、宥める様に

「まあまあ、こういうときのネーデルラントプルデンシャルファイナンスのカード、持ってないの、便利だよ」颯爽と公衆電話に突き刺し

ハンズフリーの電話から、透かさず呼び出し音、繋がる

「(いつもご利用ありがとうございます貴志様、御用件を承ります)」

貴志、嬉々と

「コンシェルジュ、今全米連邦チリ州サンティアゴ市なんだけど、ワシントンの全米最高議会まで繋いでくれる」

コンシェルジュ、語尾も豊かに

「(チリ州全土は戒厳令に付き中継端末が止まっております、こちらのネーデルラント連邦経由でお繋ぎします、しばしお待ち下さい)」質素すぎる“プー”音がハンズフリーから流れる

北浜、目を見張る

「すげー、ネーデルラント連邦、」

貴志、事も無げに

「まあね、開国してから、三国公社合体で効率上がったからな、源内務大臣恐るべしだね」

阿南、我事の様に

「そのど真ん中にいた堂上も忘れるな」

貴志、思いも深く

「堂上か、確かにここ最近ぶらついていたな、そういや、さっきの一団に見てないね」

阿南、鼻息も荒く

「貴志、貴様、見てたのかよ、」

貴志、事も無げに

「バカンスとは言え見過ごせないからね、大変そうだね」

阿南と北浜、同時に項垂れては

「仕事だろ、」

ハンズフリーの公衆電話から“プー”音が漸く止む

仰々しい、声を張った男

「(八萬はちまんだが、何か用かね)」

北浜、棒立ちしては目を剥く

「えっつ、八萬議長」

八萬、凛と

「(貴志で無いなら切るぞ)」

北浜、慌てる素振りで

「ちょっと待って下さい、八萬議長、全米入植準備局の北浜です、チリ州に飛んでいるBー52引き上げて下さい」

八萬、従容と

「(それは残念だね、議会は既にお開きになったから、今更招集は出来ないよ)」

北浜、ガバッと公衆電話を鷲掴む

「それって、つまり…」

八萬、凛と

「(ああ、チリ州の有象無象もそろそろ頃合いだよ これは人道的大爆撃だ、外に出ない事をお勧めするがね)」

北浜、呆然としては

「ええ、まあ、爆撃、冗談を、」

阿南、切に

「八萬議長、日本国政府の阿南です 今からでも、何とかならないですか、日本人がまだ外にいます、曲げてBー52の引き上げをお願いしたい」

八萬、吐息が漏れる

「(何とかって、おやおや皆大賑わいだね、然るお姉さんと貴志との報告を聞いて、チリ州に派遣したまでだよ、私が友達を袖に出来るかい)」

阿南、激昂

「貴志、貴様!」電話ボックスを叩く

貴志、事も無げに

「阿南いいか、人道的大爆撃、まさに人道的だよ、これかなりの妥協点だよ」

八萬、威厳を放ち

「(そう全米最高議会は全会一致、作戦開始時間は9:00ジャスト、時間はまだありますな、現地の報告書をお待ちしてますぞ、それでは)」“チン”無情にも電話の切れる音

北浜、公衆電話に向って叫ぶ

「駄目だ、爆撃するな、待って下さい!」

貴志、公衆電話からカードを抜き出す

「電話終ったな、国際回線かなり高いんだぞ」微笑

阿南、貴志の腕を掴む

「おい貴志、もっと話させろ」

貴志、とくとく

「阿南、今回の人道的大爆撃は、お前の世話をしている国連の総意でもあるんだ そう、まだ時間はある、建物の中に入ってろ 俺は安ホテルに帰るから、またな」悠々と踵を返す

阿南、咆哮

「貴志、やはりお前か、おおおおおー」

北浜、じわりと

「いや、お姉さんの方の圧力の方だよ、怖えよ一橋」

不意に見上げる阿南と北浜、上空からフワリと何やら舞う

「あれ何だ」

「ビラか」



盛大に散蒔かれるビラが漸く地面に落ちる

八反、空中のビラを掴み上げる

「このタイミング、これを狙っていたのですか」

渕上、チラシを畳んでは鞄に仕舞う

「まさか、予定外ですな、そちらこそ実は全米とズブズブ違います」

八反、思いを巡らせては

「そこまで込み入った事はしません、お互い予定外ですか、さて」

美久里、ひとしおに

「まさに、天啓、ブットを何としても追い詰めます」

渕上、あんぐりと

「呆れますな、それでも正面突破ですか」

米上、従容と

「ねえ、ここ突破しても、溝端いるんでしょう」

八反、凛と

「いて当たり前だ、堂上なら戻ってこないぞ」

米上、食い下がる

「戻ってこないって、そんなにあの若僧腕が立つの」

八反、事も無げに

「それはもちろん、堂上が手こずる輩だよ」

渕上、溜息混じりに

「堂上さん、こうであろうと最初から指に数えていません そしてここで、阿南さん北浜さんに人の盾になっては踏ん張って論破して貰おうと思いましたが、子供の様に飛んで行かれては、さてですな」

八反、くすりと

「ここ自分と渕上さんとの一騎打ちの筈でしょう、それを、しかし酷な方だ」

渕上、頬笑む

「私は死ねませんよ、八反さん、この先の溝端との最終決戦、遠目からでも拝んで下さいな」

八反、皆の胸元を見つめる 

「そのブローチカメラ知ってますよ、『あなたの向こうで』なんでしょう、DVD出たら皆で見ますよ」

美久里、破顔

「いえいえ全米との合同企画です、今の予定なら年末にはちゃんと見れますよ、宮武さんと私、どう編集されますかね」

渕上、不意に

「そう言えば、私も付けてましたな」

米上、胸元のカメオカメラに触れては

「私達もよ、ハウルより送られて来て、まるで犬輪ね」

島上、痺れを切らし

「そろそろ行くぞ、溝端はこの奥か」腰の鞄から短機関銃H&KMP5Kエレクトロ抜き出す

八反、改めてビラを見てうんざり

「この人道的大爆撃予定とやらで、こちらの計画が崩れました これでは反米レジスタンスを燻り出せない 優先順位を変えましょう」中へと手を指し示す

渕上、不敵にも

「最初から、そうしたらええよって」

八反、釘を刺す様に

「こちらの願いとしては、全米連邦チリ州としての現所維持ですよ お忘れなき様に」

渕上、破顔

「ええ、手打ちですな」

花彩、不意にまなじりが上がる

「この奥ですか、」

渕上、花彩の両肩を揉み解す

「皆さん、びびりは無しですよ、竦んでは餌食でっせ」



旧大統領府州知事公舎の回廊を通り、中庭より光りが漏れ始める 忽ち待ち構えるスーツできめた男、溝端


追っ手を待ち立ち竦む、溝端

「これは皆さん、とうとう、ここまで詰めますか、でもここ突破されたら、私の評価がかなり下がってしまうんですよ」

渕上、果敢に前に進み出ては

「溝端の評価なんてどうでもよろしい、ここで詰みます」

溝端、一笑に付しては

「本気なのですか、1、2、3、4、5、5人、この手勢ではとは如何ともし難い」

美久里、凛と

「恐れるとでも、お思いですか」

溝端、苦笑混じりに

「女性ばかりでは恐縮なんですよ、いや実に張りが無い」

花彩、手持ち無沙汰に

「私、武器持って無いですよ」

島上、はっとしては

「まあ、花彩に武器って、せいぜい金属バットだろ、後ろに下がってろ」

米上、目を剥ききっては

「金属バットって、何でそんな無防備な娘連れてきたのよ、本当に能力無い訳、ねえ嘘でしょう」

花彩、こまっては

「すいません でも、新幹線コースは打てますよ」

島上、こことぞばかり

「俺のバッティングセンターで575本、ホームラン打ってる ホームランランキングは堂上に次ぐ2位だ」

米上、頭を抱え

「ああもう、旦那、足しげく島上バッティングセンターに一緒に通ってはのそこ、そこなの もう、何それ、どうして素人招連れて来るのよ、」

美久里、右腕が機敏に動く

「撃ちます、」美久里鞄からS&WM49エレクトロを取り出しては

島上、H&KMP5Kエレクトロを負けじと構える

「全く、しびれる構えだ」

渕上、慄然と

「溝端、追い込みますよって、見てなはれ」

溝端、高笑い止まらず

「いいですね、正しく戦場の装い、あなた方も漏れ無くも処分対象ですよ、見せて上げましょう、破壊の限り」

渕上、尚も

「そうですね、こちらもちょっと人が多いですがよろしいでしょう」

溝端、不敵にも

「よろしいとは、こんな烏合の衆で本当にやる気なんですか、楽勝ですよ」

渕上、凛と

「余裕も程々ですよ 残念でしたな溝端さん、ここいらは前に来た時お札張ってますから二度と出れないですよ、便利過ぎる力も度が過ぎた様ですな」

溝端、訝しみながらも

「それなら、血祭りに上げる迄だ」瞬間転移

米上、全開

「全く、やる気ね、溝端」黒いスカートのフックを外すとロングスカートに展開され60もの合金スローナイフホルダーカバーが現れる、素早く合金スローナイフを投擲

外壁の漆喰でも容赦なく刺さる合金スローナイフ、その5cm先に、溝端

「ほほー、殺気が分かりますか」

米上、毅然と

「余裕にも電磁銃を選んでも失敗ね、こちらにはタネが一杯あるわ」ロングになったスカートをたくし上げる

溝端、じりりと

「上家衆、総掛かりでも倒せなかった私ですよ、よくも言いますね、ご婦人」辛うじて口角を上げる

米上、合金スローナイフ投擲

「下卑た笑いね」

透かさず合金スローナイフが、あと僅かに溝端の顔を外す

「いい殺気だ、惚れ惚れしますよ」

米上、ロングスカートのスローナイフホルダーから得物を取り出す

「腕は分かったでしょう、今日は旦那と離ればなれになって、かなりムカつくのよ、運が無かったわね」


中庭は正に剣が峰

米上から次々繰り出される合金スローナイフの隙間を付き、溝端の電磁銃が発砲されるも、米上のスカートのリフレクションシールドが舞っては展開し弾き返す

溝端、瞬間転移から出ては

「これはこれは、防御にも余念が無い」

米上、尚も合金スローナイフを繰り出す

「諦めて、投降しなさい」

島上、H&KMP5Kエレクトロを乱れ打っては、後方支援

「たく、よく飛びやがるぜ」

次々、漆喰の壁に突き刺さる合金スローナイフ

溝端、連続瞬間転移

「こう見えて、得物は一通り何ですよ」溝端、漆喰の壁に刺さった合金スローナイフを抜き、みるみる間を詰めては米上を何度も薙ぎ払うも

米上、しなやかに躱しては、華麗な側宙前宙しながら容赦なく合金スローナイフ投擲 

またも、溝端に迫る合金スローナイフ

「身体能力もですか、やりますね」

米上、俊速で溝端に迫り

「後ろお留守よ」透かさず溝端の背後に滑り込み合金スローナイフで薙ぎ払おうも、瞬間転移で躱される


花彩、目を見張り

「うわー器械体操選手も真っ青ですね」

渕上、我が事の様に

「バレエつまらなそうに習ってた割に役立ってますな、勝爺も何の目的だったやら」

島上の怒号が中庭に響く

「危なっかしい、離れてろ米上、無理に間合い詰めるな」瞬間転移で点在する溝端を牽制しては、次々発砲して行く


溝端、2階の鉄柵に捕まり偉丈夫に

「これでは近づけませんね」迫り来る合金スローナイフ、またも瞬間転移


花彩、不意に

「あれ、これって、」目を見張り、中庭を見渡す

渕上、余裕の笑み

「花彩さん、タネ明かしはまだ先ですよ」


美久里も隙あらば発砲するも、S&WM49エレクトロの残量ゲージを見ては

「島上さん、予備のバッテリー持ってないですか、こちらの残量が」

島上、手で下がれの指示

「渡せん、こちらも予備あと一つだ、威嚇で十分だ、スタンガンモードに落とせ」尚も発砲


投擲の鋭さ増す米上、寸で迄に迫る勢い 

状勢不利も次々瞬間転移する、溝端

「米上、もはやスローナイフも効かないと知ったでしょう」

米上、我が意を得たり

「そんな訳無いでしょ」腰のボタンに触ると、リールが巻き返り一斉に戻る合金リールナイフ五本

米上、後方倒立回転、体をしなやかに飛ばしては、合金リールナイフ5本を器用に繰り出す 戻る隙もなくリールのまま空中を飛び交う合金リールナイフ 米上、リールを手繰っては巧みに操作する


花彩、歴然と

「形容し難いです、正に人間凶器ですね」

渕上、ようようと

「生半可な武士は容赦なく屠ってますからね」

美久里、不意に

「武闘家ですね、うちに欲しいです」

花彩、首を傾げ

「ええ?銀行さんがですか」

美久里、声が裏返るも 

「ええっつ、そう、頭取さんのボディガードさんとかね 全米全域、これでも物騒じゃない」


島上、次々指示を出す

「米上、こっちに来るな、こちらの間合いに付け入られてる、辺りを付けて展開しろ、離れろ」ただ援護射撃

米上、合金リールナイフを繰っては溝端を燻り出す

「島上さん、味方に当てる訳ないでしょう」

飛び交う合金リールナイフを搔い潜る、溝端

「全く銃より物騒だ、どうなってやがる」またも瞬間転移



米上、ポツリと

「そろそろね、」後方一回転しながらリールを戻し、合金リールナイフを収める 勢いそのまま腰からしなり、えらく反り上がった合金ナイフを抜き投げ放つ

瞬間転移したての溝端、寸ででからがら逃れ、続けざまに瞬間転移 しかし、尚も長い軌道を描き回転し続ける反り上がった合金ナイフが唸りを上げる

溝端不意に現れるも、腕にブーメランの様に反り上がった合金ブーメランナイフが翳め袖を引きちぎり、豪快に壁に突き刺さる

溝端、壁迄追い詰められる

「やりますね、当たると、これは痛そうですよ」透かさず瞬間転移

米上、ロングスカートの後ろのスローナイフホルダーカバーに手を伸ばし合金スローナイフを握る

「あら、女の勘それらとかは信じないんじゃないの、口が達者なおじさん」

島上、尚も

「話すだけ無駄だ、こいつは」こことぞばかりH&KMP5Kエレクトロ発砲

花彩、間隙を縫うように、壁から合金ブーメランナイフを抜き取り

「よっと、米上さん、」米上に投擲

渕上、顔から血が引く

「ちょっと、」

回転する合金ブーメランナイフを容易く受け取る、米上

「あら、筋がいいわね」

花彩、破顔

「やはり、偶数回転なのですね」

島上、熱り立つも

「お前達見えるのかよ、」最後のマガジンをH&KMP5Kエレクトロに差し込んでは、尚も連射


こう着状態は続く 

米上、次々壁に刺さった合金スローナイフを抜いては投擲

「溝端どこよ、消えるの早くなってるわよ」

溝端、2階の屋根にしがみついては

「全く、キレが鋭くなる」またも瞬間転移

島上、H&KMP5Kエレクトロのゲージを見つめ

「米上、こっちの電池も切れる、そろそろ追い詰めろ」

米上、声を荒げ

「もう手持ちの仕掛けは無いわ、これでも700人分倒してるわよ」

溝端、空中より出ては落下

「ははー聞いたぞ、」米上の正面に現れてはコルトM1900エレクトロを連射

米上屈み込み、ロングスカートをたくし上げ、スカートのリフレクションシールドで全弾弾き返す

「だから、旦那がいれば、もーーーー、覚悟しなさい」一斉に合金リールナイフを投げ放ち、延々伸びては、最大射程展開


中庭一杯に合金リールナイフが乱れ飛ぶ

不意に感触、2階ベランダへの階段に血痕が吹き飛ぶ


花彩、目敏くも

「当たりましたよ、米上さん」

米上、戻った合金リールナイフの血を振っては拭い去る

「さすがに追い詰められたわね、」

溝端、出入り口に立ち竦み、腕から流れる血をハンカチで結ぶ

「米上よくもやったな おい、貴様等、大概にしろ、この結界開けろ、」

渕上、一笑に付す

「そなこと、出来ません」

溝端、一喝

「渕上、見てろ、、」

米上、吠える

「こら、私が相手よ、」

溝端、瞬間転移、陣内に透かさず現れ、

「どうだ、人質が出来たぞ」美久里を羽交い締めにする

島上、慌ててH&KMP5Kエレクトロを下ろす

「くそ、撃てねえ」

美久里、瞬きもせず

「婦女子に近付かないで下さい」溝端を透かさず回り込み大外刈り

“ドフ”地面に一度弾み消える溝端

花彩、感嘆

「ほー」

渕上、恫喝

「それでも受け身とは、ただ逃げるだけと違うのですか、早う現れなはれ」

島上、再びH&KMP5Kエレクトロを構え

「いや、利いてるぜ、あの音」

渕上、声を荒げ

「頸骨でも砕かんと、意味無いですよって、」

溝端、噴水の影から頭を振っては現れる

「お姉さん、頭打ったらどうする」


中庭は、尚も米上の合金リールナイフと合金スローナイフが降り注ぐ、正に米上無双


渕上、焦れったくも

「これでも一進一退とは、仕様がないですな、出番どすナマズ」渕上晴れ着を丹念に叩くと、出るナマズ五匹 

花彩、不思議顔で

「えっつ、これ、立体サイネージですか」

渕上、凛と

「エンターテイメントと違います、式神ですよ」

花彩、興味津々も

「日本の祭礼って、本当にあるんですか」

島上、吠える

「花彩、渕上は本物だ、集中させろ」尚も連射、遂に赤いゲージのゾーンへ

渕上、神経を研ぎすまし

「行きましょうか、招来」掛け声と共に雷撃が迸るナマズ、低い雷音が中庭に響き渡る

島上、不意に雷撃に目を背け、閃光を避ける

「あぶねえ、その柄のセンスはったりじゃねえのかよ」

渕上、嬉々と

「島上さん、今更ですか、器用貧乏と違いますで」

島上、辛うじて人影の残った回廊側に射撃

「新柄は事前に言え、」

渕上、ほっこりと

「失礼しましたな」

花彩、手を伸ばそうとするも

「ほっつ、痺れそう」

渕上、優しく花彩の手を叩く

「ほら、触れたら駄目どす、はったりではないですよって」


米上の投擲、島上の射撃、渕上の雷撃が渾然一体となり、瞬間転移を続ける溝端を追い詰めて行く

突如上空で雷撃炸裂

溝端、絶叫

「ぐわ、」空中の瞬間転移先から雷撃に痺れ、石畳へ落ちる

島上、透かさずH&KMP5Kエレクトロを投げ捨て、

「死ねや、」S&Wチーフスペシャルを実弾2連射 

尚も素早く瞬間転移した溝端を翳め、地面にめり込む鉛の銃弾2発

島上、吠える

「何処行った、溝端、」

街路灯に辛うじて凭れる、溝端

「しつこい奴らだ だが惚れ惚れする、しかしまたもや私が勝ちますがね」

渕上、果敢にも

「おかんから聞いているどす、陰陽師相手では反応鈍るって 空間支配出来るのは溝端だけではありませんよって」

溝端、必死に汗を拭う

「抜かせ渕上、捨て台詞が様になってないぞ」

米上、右手の指の間に合金スローナイフを挟み一斉投擲

「ふん、」尚も溝端に向って投擲される合金スローナイフ3本、瞬間転移した溝端を擦り抜け、壁にこれでもかと横一文字に並んでは突き刺さる

花彩、驚愕

「今のが外れるんですか」

渕上、溜息混じりに

「まあ、そろそろ行きましょうか、私もはったりは苦手ですからね」鞄を優しく叩くと、飛び出る可愛いアロワナが石畳に潜る

花彩目を見張る

「えっつ、何か出ましたよ」

渕上、花彩の顔を正面に向き直しては

「見ないの見ないの」

美久里、不意に石畳を見ては

「何の影かしら」


溝端、中庭内の狭い結界を搔い潜り、渕上の放ったナマズを避けるも動きが鈍くなり始め、石畳に汗が滴り落ちる

「はあ、はあ、はあ、」呼吸が荒くなる

島上、S&Wチーフスペシャルを構えたまま

「俺にも見えるぞ、老いたな溝端」丁寧にトリガーをことりと落とす

溝端、壁迄転げ回り

「抜かせ、」壁に刺さった合金スローナイフ抜き、島上へ投げ放つ

花彩、島上に投げつけられた合金スローナイフをインターセプト

「危ないですね」

島上、目を見張り

「見えるのかよ、今更か」

米上、事も無げに

「それ頂戴」

花彩、阿吽の呼吸で

「はい」高速回転スロー

美久里と渕上、痛々しい悲鳴

「ヒー」

米上、回転の軌跡を見ようともせず合金スローナイフの柄を受け取り

「もう読めて来たわよ」透かさず投擲 

合金スローナイフ、抜群のタイミングで、5m右後方に瞬間転移した溝端の強固な眼鏡のブリッジに命中、眼鏡を砕き飛ばす 衝撃で頭が揺れる溝端

溝端、尚も健在 眉間が切れ、滴る流血

「やるな、米上、一番最初に屈した勝爺とは大違いだ」

米上、手にした合金スローナイフを、腰の強力砥石に撫でては切れ味を上げながら

「それ、言っちゃうの、お陰で今日迄特訓の日々よ」

島上、尚もS&Wチーフスペシャルを構えたまま

「挑発に乗るな、米上」

花彩、得心しては

「凄い努力家なんですね、ふむふむ、」

島上、苦笑

「する訳ないだろ、こいつが」

渕上、くすりと

「そうそう、うちの茶房に転がりこんでは、昭和の古い少女漫画読んでばかりでしたよって」

花彩、感嘆

「となると、凄い天才なんですね、ほー」

溝端、眉間の血を押さえながらも

「やれ、皆さん疲れませんか ここで和議なんてどうです、可能な限りの条件をのみますよ どうです、このまま手こずって、この先にいるワトソン州知事に逃げられたら本末転倒では有りませんか」

島上、呆れ返る

「溝端、本当見境無いな、売るのかクライアントをよ」

米上、合金スローナイフを翳しては光が反射

「ここまでやって、どの口で和議よ」

渕上、捲し立てては

「一切乗れませんな、今際の際なら洒落た事言うたらどうです」

溝端、ようよう立ち上がる

「いや、技の披露会も堪能しましたよ、私など表舞台から消えるまでです ここで終りにしましょう」未だ眉間から血が滴る

渕上、怪訝そうに

「表も裏も、舞台には変わり有りません、しばき倒す迄ですよって」

溝端、怒号省みず

「いいか、私が終りと言ったら、終りなんだよ、結界を外せ!」

渕上、事も無げに

「逃がすと思ってますか、許しまへんよって」

花彩、不意に

「あの、溝端さん、やはりそうなんですね、同じ空間に飛ぶと歪んでるので入れないのですね」

溝端、全身から汗が湧く勢い

「何を言いますかお嬢さん、それならば、どうしてでも次の機会にしましょう」振り絞って瞬間転移、透かさず結界の防壁に張り付き、結界を無理矢理突き破ろうとするも、革の手袋が弾け飛ぶ「痛い、」

渕上、呆れ顔で

「安っい、まじない付きの手袋でもこじ開けられませんな この結界から出れないどすよ」

溝端、必死に結界の切れ目を探そうと、指がぼろぼろになろうと、手探る

「渕上!頼む、見逃してくれ」

渕上、諭す様に

「溝端、ですから、今際の際ですよって、」

溝端、宙に浮かぶナマズに押し込まれ自ら作った次元干渉ポイントに追い詰められる 間も無く、寸分違わず直上から合金ブーメランナイフが鋭い回転しては降下

溝端、顔が引き攣っては

「こいつら、」辛うじて瞬間転移も、次元干渉を起こし極上スーツが千切れ飛ぶ 「ええい」辛うじて瞬間転移、その布片を弾き飛ばす様に、合金ブーメランナイフが溝端のいた場所に寸分違わず、石畳に深く突き刺さる

米上、目を細め

「ネタが分かれば話が早いわ 次逃げたら、死ぬわよ」合金スローナイフを、腰の強力砥石に撫でては磨き上げる

花彩、切に

「米上さん、ここは五体満足で捕まえませんと、放送出来ませんよ」

渕上、まんじりともせず

「溝端、降参が良策ですよ、生きてその罪贖いなさいな」

見るも無惨の、正に満身創痍の、溝端

「言うな、渕上余裕も程々だ、また自爆覚悟で原子崩壊やるぞ、俺はやるぞ、何としてもやるぞ、見せてやろうじゃないか、ええ、」

渕上、溜息混じりに

「さて、困りましたな、はー」

島上、怒り心頭に

「うるせえよ」堪らず発砲も 溝端、尚も次元干渉搔い潜り強引に瞬間転移


溝端、堪らず次元干渉ポイントから逃れ転じ出るも、そこは噴水の上

「渕上、まだ聞きたいか、俺はやるぞ、今度はブルックリン消失なんて目じゃない、南米全域丸ごと吹っ飛ばしてやる、ここから出せ!いいから出せ!」眉間から流れる血も拭わず、真に迫る鬼の形相

渕上の頬が上がる

「やっとこさ、甘いですな、」手元の鞄を叩くと、石畳の中を猛スピードで黒い影が泳ぎ、噴水底から体を撓わせ現れ出る黒い影たる巨大アロワナ、尚も躍り出る体、まさに常軌を逸した巨体、これでもかと水飛沫が弾け、しなやかに巨体が宙を泳ぐ

溝端、悲鳴も出せない絶体絶命

「っっつう、」

巨大アロワナ、一気に溝端を平らげ、水飛沫を豪快にあげながら噴水の中に潜る


渕上、爆笑

「ほほー丸呑み、不味いと違いますかね」

美久里、溜息が漏れる

「今のアロワナ、大きいですよ…」

花彩、被せる様に

「アマゾンならここまで生育しますかね、いつか調査行ってみたいですね」

米上、訝し気に

「ねえ、本当に食べちゃったの」

島上、さすがに呆気にとられ

「最後はこれかよ、お前の式、さすがに何だよ って、おいこれって、胃袋って、どこに繋がってるんだよ」

渕上、答えに困り

「さあ、どこでしょう、勢いのまま考えませんでしたわ、どこぞの虚数空間でしょうかね」

花彩、手をぽんと

「解けたら、ノーベル物理学賞取れますかね、」



結界の外で必死に手を振る阿南と北浜

渕上、漸く視線に入る

「すっかり忘れてましたね、解除」祝詞を上げ結界を閉じる

阿南、走り寄り

「やっとかよ、見てたぞ貴様等の出鱈目っぷり、なんなんだ一体」

島上、素っ気なく

「これでも、ややニュートラルだぜ」

北浜、阿南に付き添うも

「それよりまずい、そろそろ時間だ、9:00だ、全米連邦のチリ州鎮圧が始まる」

米上、北浜の尻を叩く

「鎮圧も何もさっきからBー52がうろちょろしてるじゃない、いいから引き上げなさいよ」

北浜、慌てる素振りも

「もう駄目だ、第三帝国の動きを知って、全米最高議会が即決で討伐命令を出した、威嚇じゃない、本気を出しやがった」

島上、北浜の襟を締め上げる

「おいおい、皆殺しかよ、ふざけるなよ北浜」

美久里、ガッツリと島上の甲のツボを押す

「島上さん、止めましょう」

島上、慌てて解いては

「いて、やるなお姉さん」

渕上、ふわりと

「いやー突っ込みどころ多いですけど、美久里さん、何者なんですか、色々達者ですな」

北浜、敢えて遮るかの様に

「それどころじゃない、そんな非人道的な真似はしない筈だが、表に出るなとかだ、皆、建物の中に逃げましょう」

島上、吠える

「尚更、押し込んで、皆殺しだろ、あー、全米腐ってるのか」

阿南、皆の背中を次々押す

「いいから、建物の中に入りましょう、まずはそこだ」



時同じくして、

ネーデルラント連邦デン・ハーグ統合軍事裁判所前の噴水にぷかりと、見窄らしい日本人の男が浮かぶ その男溝端 只目を剥いては虚ろに

「暗い、この黒さは何だ、思い出さえ真っ暗だ」

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