第8話 2087年9月7日 全米連邦 アリゾナ州 平原

全米連邦アリゾナ州 広大な平原も所々に新しい大きなクレーター それは2020年の第三次世界大戦で中国が北半球に放った原爆の跡

そして只管長いハイウェイ、脇道には長らく止まったルーフキャリアの付いたキャディラックシリーズ59レプリカと、土煙を長く受けた携帯ティピーテント

そしてティピーテントから出て来る夫妻


堂上、長髪も土ほこりで固まるもお構い無し、刀片手にしては

「で、ここで待ち伏せしろって、何日待つのさ、米上」

米上、ロングカーリーを素早く整え、ロングのレーススカートを叩いて翻しては

「来る迄に決まってるでしょう」

堂上、不意にループタイカメラ触っては

「それで来たら、このループタイカメラに録画される訳か、見張られてるな」

米上、胸元のカメオカメラに触れては

「そこは自動録画、プライバシーはちゃんと考慮されるわよ まあ松本花彩さんの特番以降、漸くローマの審査通ってはで正式採用なんだから、しゃんとしなさいよ」

堂上、ウンザリ気味に

「しゃんとって、結局ノープランでしょう、ってここにいていいのかよ、原爆クレーター見えるだろ」

米上、ティピーテントに振り返り

「それは大丈夫、放射能線計は今日も異常なし、原爆の放射能線は殆どないから」

堂上、屈んではただ遠くを見据える

「ふーん、それより暇だね、補給来ないの」

米上、溜息混じりに

「昨日の昼来たじゃない、一週間後よ」

堂上、思い描いては

「いや、やたらハヤシライス食いたくなった、銀座系のレトルト無いの」

米上、嘆息

「銀座はも、今やレシピ提供だけじゃない、具材あれば作れもしようけど、我慢しなさいよ」

堂上、不機嫌そうに

「それ、京都のオムハヤシでしょう、シンプルにハヤシとライスが食べたいんだよ」

米上、溜息混じりに

「あらら、今迄、どんな食生活だったやら、堂上家は男ばかりだからそうなのね、いいわやっぱり嫁入りするわ」

堂上、嬉々と

「それ無理じゃないかな、弟料理上手いし、米上の居場所無いよ そう、婚礼の時の料理、あいつが仕切ってたんだぜ」

米上、項垂れる

「はー、入江いりえ君か、確かに米上家総掛かりでも僅差で勝てそうにないわ それより後で携帯でリクエストね、逆井さかいちゃんここに来る前にロスのGB三越にでも寄ってもらうわ」

堂上、嬉々と

「やった、6食パック宜しく」

米上、うんざりと

「どれだけ飢えてるのよ」

堂上、遮るかの様に人差し指を口にてを当て、地面に伏せては音を拾う

「来た、」

米上、首に下げた長距離電子双眼鏡を覗き込んでは

「あれね、かっ飛ばしているトレーラー、今度も正解かな」

堂上、くすりと

「何をそんなに急ぐやら、いやだね、ここまでムキになって運びたいかな」

米上、顔を改め

「余裕ね、今迄のトレーラーの様に、ガタイの各部に多分機関砲隠してるだろうけど、旦那の感通りならまたもやごつい武装輸送トレーラーよ ちゃっちゃっとしてね」

堂上、未だ蜃気楼の中のトレーラーを見据える

「トレーラーに付けられた武器も、当たらないと意味ないよ 大体ガタイ良いなら、ヘリ掃討要請しなよ、それで俺たちの任務委譲でしょう」

米上、長距離電子双眼鏡の電子解析中、やっと解析終了

「解析出たわ、あちゃー二連結とは、しかもトゲトゲの一杯あるトレーラーよ そうヘリ掃討は無理ね、連結無しのトレーラーでも、対戦車ヘリが負けたレポートも有ったもの、ここは最強を誇る四連結で無いのが救いね」

堂上、漸く刀を腰に差し

「対戦車ヘリが無理だから、俺たちってのも、どうなのかな」

米上、声も弾む

「ふふん、終ったら、この世の楽園ブロードウェイに行くわよ、さすがに二連結トレーラー拿捕したら、任務完了の交渉が進むわ」

堂上、素っ気も無く

「ブロードウェイなんて俺には高尚過ぎるよ」

米上、長距離電子双眼鏡をガバと降ろし、詰め寄る

「えっつ、何それ、新婚旅行まだしてないでしょ」

堂上、食い下がるも

「それ期限切れでしょう、もういいよ それより任務中に近付くなよ、得物ぶら下げてるんだろう、危ないって」

米上、ムキになっては鞄で堂上を何度も叩く

「バカじゃない! フーなんかムカついた」腰のポケットから合金スローナイフ抜いては一気に堂上の細長い尾を切る

堂上、刮目しては

「お、おまえ、武士の尾、何切ってるんだよ、意味分かってるのか」

米上、目を細め

「ふん、そもそも、死ぬ前提の尾をぶら下げてるから気に食わないのよ、だから余裕なんでしょう 常住坐臥、少しは難しい言葉知ってるわよ」

堂上、慌てては

「だから武士の覚悟がそこに凝縮されてるんだよ、本当に死んだら報告どうするんだよ」

米上、憮然と

「由縁の尾長鶏からでも抜くわよ」

堂上、手持ち無沙汰に

「まあ尾長鶏も辛うじて絶滅してないけどな、それも有りかな まあいいや、死ななきゃ伸びるか」お手上げしては

米上、事も無げに、蜃気楼を越えた二連結武装輸送トレーラーを指差し

「ねえ、冗談に乗る余裕あるの、来たわよ」



接近、爆走する二連結武装輸送トレーラー 各部から電磁機関砲8基が突出し辺り構わず炸裂

堂上、ハイウェイの真ん中で踏ん張っては乱れ射たれる電磁弾を躱しては跳ねる

「あぶねえ、」

米上、堂上の背後で溜息をつき

「余裕ね抜刀しなさいよ、少しは私を守りなさい」

迫る二連結武装輸送トレーラーに、米上が合金スローナイフを投げては寸分違わず右前輪タイヤに突き刺さる

前方寸でを走る二連結武装輸送トレーラーの前輪タイヤに合金スローナイフが突き刺さり、右前輪が浮き上がり、車体がかなり揺れる 尚もタイヤは回転、歪んで回転しては右前輪タイヤがついに捲り上がり、透かさず右前輪爆発、勢い余って右方向へと勢いそのまま爆走する二連結武装輸送トレーラー 

堂上と米上を辛うじて翳めて行く二連結武装輸送トレーラー、尚も進むもバランスが崩れ500m脇の草原でついに横転


堂上、抜刀する事も無く

「まあ道を塞がないだけいいか」

米上、優しく堂上の頭を叩く

「本当、役に立たないわね さて口に入る土埃も今日迄ね」懐からBlackBerry autumnを取り出しては携帯をかける



しげしげと横転した二連結武装輸送トレーラーに詰め寄る、堂上と米上 コンテナから散らばった義体の見聞が始まる

堂上、路面に散らばった義体の足を拾い上げる

「それで、ようやくお目当てのこれが証拠か」

米上、堂上から義体の足を受け取り

「そう違法義体上半身から下半身迄一通り、各安のアタッチメントで、町のお医者さんでも取り付け出来るらしいわね、まあそこそこの稼働ね」各部をチェック

堂上、嘆息

「これ、どこから流通しているんだよ」

米上、じわりと、

「衛星トレーサーは相変わらずジャミングで追跡不能 そう、それを調べるのが私達の仕事 二連結なら絶対足が出る筈よ」

堂上、次々違法義体を拾い上げては、放り投げ

「調べるも何も、電磁銃で炭化しちゃったら、もう切断手術で義体に頼るしかないでしょう」

米上、辺り一帯を見渡しては

「他に方法はあるにはあったけど、培養筋肉は拒絶反応多くて皮膚がん誘発しちゃったのよね、それ以前に病院にちゃんとお金を持って通える人がいないというのもね」

堂上、肩の違法義体持ち上げては、可動域を確認

「復員兵問題化か、出来立ての麦秋ばくしゅうが表舞台で漸く停戦協議に調印したからな、えらく長かったな小競り合いの紛争」確認しては放り投げる

米上、堂上を見据え

「ふう、麦秋ではなく旧中国で調印して欲しかったわよ、全米がどれだけ世界の紛争地域にに派兵したと思ってるの50万人越えたのよ」

堂上、思案顔で

「麦秋になって、おとなしく引っ込むものか、」

堂上、溜息も深く

「今の所はね それよりこの違法義体が厄介よ」

堂上、思いも深く

「でもな、これで各安ならいいんじゃないの」

米上、淡々と

「そこよね、皆が食いつくのは 但し売りっ放しでアフターケア無し、結局直ぐ壊れて次も新たに買わざる得ないのよ、いいトータルで考えるとメンテナンスも迅速な公的なプレジデントケアが各安なの」

堂上、関心しては

「さすが全米勉強してるね、いいね、ほうー」囃し立てる

米上、クスリと

「旦那が覚えないから、一から勉強よ」

堂上、笑みを湛え

「いいじゃない、その結果がバージニア州の教会じゃない、よくも書籍から見つけたね、あんな小高く眺めの良い所」

米上、照れ笑いしては

「そうでしょう、でもまあ、何よ、男のくせにチクチク来るわね おっと、それ以上言わない事ね」

堂上、尚も迫る

「折角ウェディングドレス褒めようと思ったのに、恥ずかしいとか」

米上、照れ笑い

「はいはい、今はお仕事よ」事も無げに背中を押す


見聞は続く、運転席のオートマシーンは燻ったまま

米上、溢れるオイルを跨ぎ、歩きながら押収した受領印を丹念に調べて行く

「ふーん、活性剤入れては走りまくって隈無く経由してるけど 発送元は、どうやらチリ州ね いい感じの証拠そうね」頻りに頷く

堂上、コンテナをぐるり見渡しては

「でもこれな、トゲトゲ目一杯でさ、擦っても車体吹っ飛ぶよ 国境警備隊とかいないのかよ、」

米上のまなじりが上がる

「国境も何もアメリカ大陸は全米連邦の支配下よ、いまや一つの国家」

堂上、思いを巡らせては

「一つの国家の割に、これアンタッチャブル過ぎだろ、いや、すでに頃合いかな」視線を据える

米上、堂上の肩に優しくパンチ

「反米レジスタンスも折角沈静化しているのに、火を注ぐのも頂けないわね、駄目よ」

堂上、事も無げに

「それ女の勘」

米上、コンテナを叩いては

「そうよ それより、こことぞばかりトゲトゲのトレーラー、この瞬間に全米各地で走り回ってるから、流石に用心もするわよ 思ってるより手広いのよ」

堂上、尚も検分 

「全米連邦も一つの国家に関わらず本当極端だよな、犯罪をも隈無く消費するシステム、どこが儲けてるんだよ これもロビー活動故なのかよ」

米上、大きく息を吸い

「難しい話聞くのね、」

堂上、身構える

「知ってるなら、誰よ」

米上、伏し目がちに

「旦那、そんな事言える訳ないでしょう、あなた行くわよね、さすが最高議会に怒鳴り込んで五体満足で帰って来れるわけないわよ」

堂上、まじまじと

「成る程、これは本当に知らないパターンか やれやれ、それも大問題か」遠い視線

米上、呟く様に

「本当、厄介なパートナー、うっかり相談すら出来ない」目を背ける

堂上、不意に立ち止まる

「何か、焦げ臭くないか」

米上、乾いた地面に広がっている液体に戦慄

「はっつ、まさかハイブリッド車、ガソリン、横転なら当然漏れてるわよね、」

堂上、米上抱える様に走る

「急げ、」


“ドカーーーン”間も無く二連結武装輸送トレーラー大爆発、炎上、焼けた義体が四方八方にやたら飛ぶ


伏せた堂上、立ち上がり、爆煙を見上げ

「やべ、運転席のオートマシーン助けないと」

伏せた米上、立ち上がり、堂上を押し止めては

「ねえ、助ける必要あるの」

堂上、尚も

「脳は人だろ、まずいって」

透かさずトレーラー運転席から、直上に部位、脊髄毎頭部射出

思わず見上げる堂上と米上、すると打ち上がった頭部が足元にごろり燻り転げ回っては、疑似髄液が飛び散る

米上、びっくりしては

「きゃーー、」

堂上、狼狽える

「うわーこええ、どうするこれ、」

米上、飛び跳ねては

「ベトベトしてる、気持ち悪い、拾得物なら州警察でしょう」

堂上、庇う様に

「いや、これでも人だって」

米上、逡巡しては

「その前に、これ犯罪者でしょう、キャー」

堂上、尚も米上を背負う

「うわー、兎に角すげーよ近未来」

オートマシーン、漸く囁く

「…help me…」マシーンボイスが漸く溢れる



3時間後、空から輸送ヘリ:ブラックホークmk2一機が舞い降りる 急ぎ後部ドアを開け、飛び出る若い小柄な日本人女性逆井



昼時 ティピーテントの前で、逆井からの補給のレトルトハヤシで食を囲む堂上米上逆井

逆井、皿を持ったまま、事も無げに

「堂上さんも、折角の大物、二連結武装輸送トレーラーがこれかよ、はー」頭を悩ませる

堂上、ハヤシライスに食が進む

「そのがっかりなんだよ、逆井も全米連邦のインターンだからって、そっちよりになるかよ」

米上、上品にスプーンを上げ下げしては

「そうそう、トレーラー爆散しちゃったけど、受領印と配送ルートの資料回収したから、十分な成果よ、あとはご自由に義体拾いなさいよ あとあのホラーな頭も、ああ怖い」身震い

逆井、溜息

「まあ、堂上さんと米上さんと違って、私の場合、ラテラノ大学に入学してもローマ参画政府の総合職は凡人にとっては門が狭いんですよ そう、折角全米連邦のインターンに入ったというのに、実績頂かないと、はあ」

米上、凛としては

「あら、逮捕協力は回してるつもりだけど、何か足りないの」

堂上、スプーンを止めては

「そうそう中南米の全米レジスタンス、相当片付けたろ」

逆井、わなわな震えては

「その結果がですよ、勝手気ままに掃討しては、全米レジスタンス残党がコロンビア州に大集結ですよ、ああ無法遅滞だ、どうするんですか」

米上、事も無げに

「いいじゃない、暫く泳がせなさいよ、もっと集まってくるわよ フィニッシュは舞鶴から応援呼んでも構わないわよ」

堂上と逆井の手が止まる

「いやーー」

米上、不思議顔で

「そんな駄目かしら」

逆井、目を丸くしては

「ちょっと、それは考えさせて下さい」

堂上、深く息を吸っては

「これ冗談だから、いや俺達が何とかするって」

米上、得心しては

「そうよね、コロンビア州もそれ程悪い噂も聞かないし、そこは先送りでいいかな」

逆井、鞄から電報取り出す

「あと渕上さんから電報です、急ぎでしたから、私が持って来ました」

堂上、電報受け取っては

「【急ぎ、サンティアゴまで来られたし かしこ】 こっちもサンティアゴか都合がいいか」

米上、溜息

「渕上さんも相変わらず人使い荒いわね、って場所何処なのよ、まあ定宿なら猿滑さん系列かな」

逆井、責付いては

「急ぎですから、食べ終わったらブラックホークmk2に乗って下さいね、チリ州のサンティアゴの入り口前迄送りますから」

堂上、キャディラックシリーズ59レプリカに向き直り

「いや、キャディラック置いていけないだろ」

逆井、苦い顔しては

「あのキャディラック、レプリカですよね、改造していませんよね 全く不用心ですよ」

米上、頬笑む

「ふふ、思い出の車よ 結婚式のブライダルカー、そのまま買い受けちゃったの」

堂上、事も無げに

「まあ、そんな事だから、ロスの事務所に届けておいて」

逆井、苦笑

「はあー、いつまでも新婚さん気分か」

米上、堂上と強引に腕を組んでは

「逆井ちゃんも、何れ分かる日が来るわよ」嬉々と

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