第7話 2087年9月5日 全米連邦 サンパウロ州 サンパウロ市 市内 

全米連邦サンパウロ州 サンパウロ市の中心のオフィス街から外れた、準オフィス街の一画 並木道が整備されるも、たむろする輩は悪党の面構え 見慣れぬ日本人達を上から下迄見据える


花彩、頬笑んでは

「何か、皆さんから、じろじろ見られてますね」

渕上、嬉々と

「そろそろと違います、さすがに焦れて出て来ますよって」

島上、周囲に睨み返しては

「おいおい、奴がこのままじっとしているタマかよ、準備中の筈だ」

渕上、偉丈夫に

「辛抱足りませんな、痛い目見ますよって」

島上、吐き捨てる様に

「あの爆弾魔、この瞬間にもドンは勘弁だからな」

花彩、三階建ての漂白されたビルを見上げては

「ふむふむ、それでは可能性が一番高いのは、この秘密基地ですよね この適度なオシャレ感、1階にはコンビニのローソンLもですよ まさに日本人の発想ですね」

渕上、ピシャリと

「秘密基地なんて、そこは隠れ家でよろしい」

島上、舌打ちしては

「しかし、雨樋の装飾がやたら羽振りいいな、アールデコか」

渕上、ぐるりと見渡す

「訪ねたカトリック教会日本人連絡会でも、溝端相当噂になってますから、無邪気過ぎですな」

島上、鼻息も荒く

「これさえも罠って言いた気だな、」

渕上、口を尖らせ

「だから、おびき出してますのでしょう」

花彩、凛と

「それも何時になるでしょうね ここは兎に角、飛び込まないと始まらないですね」

島上、呆れ果てては

「花彩も、その根性、どこでついたんだよ、」

渕上、鞄から手帳取り出しては

「それなら、せめて不動産屋に行って内面図貰いましょうか 個人所有とは言え、配管のメンテナンスで持っている筈です」

花彩、凛と

「いいえ、時間が勿体無いです、行きましょう」

島上、一瞥しては

「勘か、」

花彩、思いを巡らせては

「この建物の構造と、オフィススペースから言って、相応の人物が入ったまま出て来ません 頃合いですよ」

島上、苦笑しては

「見てるね、まあいい、乗ったよ花彩」懐のワルサーPPKエレクトロの位置を確認

渕上、進み出ては

「花彩さん、場慣れも程々にですよって ほな、行きましょう」



3階迄連なる階段を上がり、溝端の事務所に堂々と乗り込む渕上島上花彩 

島上、豪快に入り口のドアを蹴り上げては、一斉に銃口を向ける事務所チンピラ共の山

渕上、毅然と前に進み出ては

「なんですのこれ、まさかこんなむっさい所にアポイント必要とかでもないでしょう、そこ、そこ、そこも、その電磁銃引っ込めたらどうですか」

進み出て来る、グレーのカジュアルスーツに身を固めた溝端、赤いネクタイを改めて締め上げる

「これはこれは、ミセス渕上、若い衆が失礼しましたね 君達は本当に失礼だね、銃を下ろしなさい」


電磁銃を徐々に降ろす若い衆


渕上、笑顔も押し殺す様に

「ミセスって、知ってて間違って言いますの 溝端さん、挨拶の握手はしないんですか、照れる年でもないですよね」

溝端、徐にポケットから皮のグローブをはめては

「いや、それはご勘弁を、名うての陰陽師に触れたら、ただでは済まない事は知ってますよ」

島上、焚き付ける様に

「溝端、こっちに来いや、妙に間合いを取って何考えてやがる」

溝端、大仰に

「さすが島上さん感が鋭い、宵にでも来て頂ければ私の武勇伝を飲みながら直接聞かせたものの実に勿体ない、いいでしょうチャンスを与えましょう、島上さんが仰らなければ、あと30秒でTNT爆弾10パウンドが“ドカーン”と吹っ飛びますから、お早く逃げた方が良いですよ」不意に空間転移、消える


必死に逃げ出すチンピラ、入り口の扉に殺到しては、軒並み3階の階段から転げ落ちて行く


島上、素早く事務所奥までのドアを次々蹴破り

「全く、逃げきれるかよ」

目の前には、これとぞばかりにTNT爆弾10パウンドの入ったドラム缶、無駄に起爆装置の配線が散見

花彩、島上に追従しては、ドラム缶をぐるり

「ふむ、こうこうこう行ってあれそれ、基本的な時限式ですが粘着テープにも配線が入っています、これでは私でも解体に20秒掛かります、足が出ますね」

島上、青ざめる

「まじかよ、なら逃げるか、おい渕上!」声を荒げる

花彩、軽快な飛び出し、

「渕上さんは最初に逃げました」3階窓から勇躍飛び出る

島上、躊躇無く花彩の後を追い3階窓に飛びつく

「よく頭に入ってるもんだよ、」得心しては、階下の街路樹を見つけては飛び移る

通りの向こうに、必死に手招きする渕上


“ドカーーーン”間も無く事務所大爆発、モンロー効果でビル垂直に爆煙が飛び、1階ローソンLの窓ガラスの爆散、周囲50mに突き刺さる 窓ガラスの破片が突き刺さり呻くチンピラ共の雄叫びが準オフィス街に響く


ストリート、カトリック教会のミサ会の立てブリキ看板から、命からがら顔を出す一同

島上、涙目ながら

「選りに選って、この看板か」

渕上、目を見張っては

「ふう、お祈りはやはり欠かせないですな」

花彩、得心しては

「これも日頃の行いですね」うやうやしく看板を見ては、上から下迄ガラス片を弾き返した跡が多数散見

丹念に十字を切る一同


準オフィス街に間も無く無数のサイレンが鳴り響く、駆け付ける消防車救急車州警察パトカー

島上、現場を隈無く捜査し、軽傷の後ろ手に手錠されたチンピラ共に詰問

「すげえな、溝端、お前等虫けら扱いだぞ、奴は何処に行った、分かってるんだろ」次々叩いて行く

チンピラ共、一向に震え止まらず

「ああ、ああ、ああ」

「言えるか、オッサン」

「知りません、もし知ってても言ったら溝端に殺される」

花彩、透かさず若頭のポケットから手帳を引き抜く

「表向きコーヒー豆、ベタですね 卸先は結構ありますと、それでこの印何ですかね、何れも海外局番はチリ州、サンティアゴですか」

島上、目を剥き

「お前は、電話帳か、いやそんな言い方無いよな」

花彩、嬉々と

「シドニーとローマと日本、それ以外は海外局番だけですけど、リクエストがあればどこでも読みますよ」

島上、狼狽えては

「いや、悪かった、そんな事に能力使うな」

渕上、逡巡しては

「しかし、少々厄介どすな、チリ州、サンティアゴですか」

島上、捲し立てては

「そこな、反米レジスタンスの拠点の事だろ、もう世代交代で形骸化してる 渕上も前の担当地域全米なら、何を躊躇うんだ」

若頭、小刻みに震える

「あああ、俺の口からは言えん、殺される、」

渕上、慇懃に

「ねえ若頭さん、この辺りの賠償額とんでもないですよ、レジスタンス認定では保険屋さんは手を引きますからね、一生借金漬け そして刑務所から例え出れても、何処かしらの社長さん方も噂を聞いては職には付けないでしょう、何せ働かせた職場がボンですからな もう一つ、溝端もしつこく迫りボンボンボンですからな この幕引き、溝端逮捕に協力すれば解決しまよって、どないでしょう」

若頭、項垂れては

「ああ、言わざるえないか、あいつ足が付くからって、俺等に豆袋に違法ナノマシーン詰めては売買させやがる」

渕上、尚も

「違法ナノマシーン、臨床試験も無しによくも売れますな」

若頭、嬉々と

「副作用も無く、美の追求出来るものだから、ナイトクラブではよく売れたよ、全くモテ放題だぜ」

渕上、若頭の頭をバシッと叩く

「下衆ですな ふん、敢えて資金調達する事で、組織を活性させますか 所詮情報もここまでですか、つまらんですな」大手に振る

若頭、追い縋る

「司法取引はしたぞ、今直ぐ開放しろ」

島上、若頭の髪の毛を毟っては

「おうよ、お前確実に死ぬぞ、溝端に殺されない様に刑務所匿まってもらえ その前に州警察で全部喋れよ、チンピラが稀代の悪党になすがままに従ったと言えば、少しは情状酌量もするからな」

花彩、次々チンピラの内ポケットから、赤いキレを抜いてゆく

「渕上さん島上さん、この人達ただのチンピラさんでは有りませんよ、この腕章はちょっと問題有りますね」

島上、勢い余り花彩に擦り寄る

「おいおい、まさかだろ、本当にこれかよ、第三帝国、聞いてないぞ渕上、、何だこれ」

渕上、地団駄

「くーーーハウル、、、」

花彩、丹念に腕章を眺めては

「まさしく鍵十字、本物ですね」


一斉に顔を背けるチンピラ共に群がり始める、州警察全員、激しい言葉を罵っては悲嘆にくれる



現場から距離を置いた一同

花彩、とくとくと

「渕上さん、まさか反米レジスタンスは、第三帝国の隠れ蓑なんでしょうか、これ大問題ですよ」

渕上、思い描いては

「いいえ、反米レジスタンスは、プレジデントケアに対する反対活動を長きに渡って行ってきました 不肖この渕上と、とても頼もしい万上さんで沈静化させましたのが、そんな事は夢にも思わなかったですよ」

島上、毅然と

「とは言え振って湧いた問題でもあるまい この先、もっと現地で調べないと詳細は分からん 行こうぜサンティアゴ、上家衆出てきたとなる、溝端なら本拠地に絶対誘うな」

花彩、不安顔で

「サンティアゴですか 押収した手帳から察しますと、まさかの本拠地たる工場群ですよ、態々誘いますか」

渕上、溜息混じりに

「相手は溝端、尚更ですがな 本拠地で上家衆貶めたら、ええ大恥書かせられますからな」

島上、不意に

「また罠か、それでも行くか」

渕上、意を決して

「サンティアゴ行きますよって その前にサンパウロの州警察には第三帝国に関してだけは箝口令敷きます 何れ漏れましょうが、それも許容範囲です そして、いざサンティアゴですが、応援も頼まないといけないようですな」

島上、笑い止まらず

「全米となると、あの夫婦善哉だろ、何時迄も新婚気分抜けないで悠々自適な奴ら使えるか、なあ、」

渕上、島上の手の甲を張る

「一々、余計な気を使わないでよろしい」

島上、不意に

「俺が言いたいのは、堂上どうじょう米上こめがみ、何れどちらかが死ぬって事だ」

渕上、剥れては

「正直も程々にしないと、後で痛い目に合いますよ」

花彩、俄然興奮

「ついに、大掛かりになって来ましたね」

島上、切に

「いやだからな、あいつらも仕事抱えてるのに、応援要請は止めようぜ」

渕上、毅然と

「そんな事情、関係有りまへん そもそも、ハウルがこのメンバーしか選抜しないのが悪いのですよ、所を構えたら電報打ちますよって」


突然、各地で爆発音が鳴り響く さしずめ溝端の仕業

一斉に灯りが消え始める街並、サンパウロ市内は停電へ

濛々と煙が上がるビルを尻目に、意を決する3人


島上、嘆息

「やれやれ、これじゃ当分街が機能しないな」

渕上、くすりともせず

「空港も止まったままでしょね、しょうもない 足止めも程々ですよ」

花彩、地図帳広げては

「これからサンティアゴなら、陸路ですね」

渕上、憮然と

「いいえ、大使館に行って、プライベートジェット飛ばしますよ この挑発、如何にも大層な罠を用意してるって ふん溝端、乗って上げましょう、真実掴んで見せますって」

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