ザ・エッジ

判家悠久

2087年 警鐘

第1話 2087年7月3日 イングランド連邦 マンチェスター市 アカデミーソーホー

早朝に小雨の降るマンチェスター市、20世紀の建物アカデミーソーホー群に人が徐々に集まり始める


一室を急襲するスコットランドヤード捜査員5人 小型の電磁チェーンソーでドアノブが綺麗に抉り取られる

同時に怒号が飛び交っては、ブローニングハイパワーエレクトロを一斉に構える

「スコットランドヤードだ、動くな」

「電磁銃並びに武器を置け、」

「反応ありません」

厳つくも整った顔のレッド、尚も電磁銃を構えたまま

「奥に隠れても無駄だ、出て来い」

どこかにあどけなさが残る播戸ばんど、ついに抜刀

「いや、本当に反応ないですよ」

レッド手振りで指示を繰り出す

「分かった、突っ込め、」


慎重にゆっくり進む捜査員 その先には、奥の間の研究部屋に転がる遺体は悶絶の限り

捜査員次々指示

「やはり、転がってやがるか、検視進めろ、」

「死後硬直が進んでる、部屋の中からヒント探せ」

レッド、死体を改め様と電磁銃を下ろす

「ハウルから情報貰って任意同行と思ったのにな、察したか」

播戸、刀を鞘に収める

「見た目の外傷と擦痕は無し、自殺ですか」

レッド、遺体の目を閉じようとしても硬直の限り、ピクリとともせず

「この引ん剝いた目、服毒か」

播戸、遺体から距離を置き離れては嗅ぐ

「農薬臭、アーモンド臭、アンモニア臭、一通り毒薬の臭みが無いです」

レッド、ベンに指示

「厄介だな、ベン、検視バッグ急いで繫げ」


ベン、検視バッグから次々検視針を伸ばし遺体に刺す

「検視ナノマシーンの投入結果が来ました、未許可ナノマシーンが現在稼働中です、全経路にパルス発信、脳幹破壊、他は外傷無し」

レッド、訝しんでは

「脳幹だけが破壊か」

ベン、遺体の頭部を触診

「殴られた後は有りませんよ」

捜査員達、改めて設備を詳細に洗う

「そうですね、闇医師とは言え、この設備から行くと、自分の作ったナノマシーンで死んだようです」

「これではまるで小型のナノマシーンプラントですよ、金かけてますね、どれだけ儲けたんだ」

「それじゃ、精製に失敗ですか」

レッド、溜息まじりに

「ふん、こいつが作ったんだろ、その設計図探せ こんなナノマシーンが氾濫してはまずい、ナノマシーンカウンターを作って貰わないと」

播戸、諦め顔で

「レッド、探すも何もあそこの棚がごっそり無い これでは、そう簡単に対抗薬なんて作れませんよ 知ってますよね、王立化研も年々開発費で圧迫しているんですよ」

捜査員のがさ入れは続く

「駄目ですパソコンも丸焼けです」

「証拠隠滅か、」

「やはり、あからさまな他殺なのか、俺たちへの当てつけか、」

レッド、高揚しては

「現場に来て何分だ、とにかく洗え たく、ハウルになんて説明するんだ いいから証拠探せよ」

ベン、検視バッグ見ては唸る

「レッド、この遺体は完全死です、脳に直接繋ごうとも、もう遅いです」

レッド、檄を飛ばしては

「ベン、だから、そこ何とかしろよ、貴重な血清流してでも活性化させろ」

ベン、うんざりと

「レッド、ですから脳幹破壊されては、施しようがないです」

播戸、宥めるも

「そうですよレッド、大体ハウル首相に直接報告って、国を跨いでそんな義務有りませんよ」

レッド、苛立っては

「知るか、ローマ参画政府は有史以来の、どの国にも開かれた政府だとさ、毎度そこから説教だよ、このイングランド連邦でさえも顎で使われるなんて、本当呆れるよ、いいから最善を尽くせ」

播戸、苦笑しては

「お馴染みさんにも困りものですよね」

レッド、くしゃりと

「まあな、今度会いに行くか、播戸気に入られるぞ」

播戸、襟を正し

「風よけ代わりですか、それもどうですかね」硬直した死体の指を開くと引きちぎられた真っ赤な腕章「ああ、出た、物騒ですね」

レッド、思わず目を覆う

「おいおい、どんな貧乏くじだよ、ハウル」

項垂れる捜査員

「鍵十字、律儀な連中ですね、リンチで正装とは」

「鍵十字なら、ここ数件続いている」

「関連性はあるのか」

「いや、もうユーロに鍵十字はいないが大前提だ」

「結局、愉快犯か」

レッド、まんじりともせず

「いいや愉快犯なら声明を出す ふん、今になってこんな亡霊、こちらでは手に終えん、ローマのあいつらに回す」

播戸、とくとくと

「ローマなら、そう、この類いは、まさか上家衆とか、とんでもない武勇伝はよく聞きますが、まあ奴らイングランド入国禁止にして正解ですがね それでも回しますか」

レッド、再び膝を降ろし

「イエス、播戸 このイングランドで鍵十字を相手に出来るのいるか」

播戸、思い巡らしては

「王室に付いてる東儀さんはどうです、出しゃばってこないんですか」

レッド、吐き捨てる

「あいつは、皇女のお世話で大変なのだろよ」

播戸、凛と

「悠長ですね、この手の事件多分続きますよ、それまで指をくわえてろって事ですか」

レッド、真っ赤な腕章を見つめたまま

「ナノマシーンによる自殺とも他殺とも分かりかねる迷宮事件にブラフ、どうにも第三帝国が仕掛けて来るって事だよ」

播戸、深呼吸しては

「迂闊にその名前出せないですね」

レッド、慇懃にも

「当たり前だ、世界が恐怖するぞ」

戦慄するスコットランドヤード捜査員達

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