島風ピアス
@sasakure507
島風ピアス
上演時間:約5分
作:咲々紅
♂:翔(かける):33歳:結の元夫、都心で起業するも失敗し、それが原因で家族に暴力をふるうようになり離婚
♀:結(ゆう):32歳:翔の元嫁、翔の暴力から逃れるために、馨を連れて島へ移住
♂:優(ひろ):14歳:自分を守るために暴力をふるわれた結(母)を気にかけている
優N「島に来て、3ヶ月が経った」
結「優! 出かけるわよー!」
優「はーい、今行くー!」
結「今日はね、お隣の加藤さんに回覧板持ってって、ついでにスーパー寄ってタマゴ買うからね!」
優「アレでしょ、お一人様1個まで、ってやつでしょ?」
結「……バレてたかー(苦笑)」
優「バレバレです(笑う) 母さんが考えることは、きっと誰でも考えるからね!」
優N「そんな他愛のない話を笑って出来るようになったのも、この島に来てからの話で、向こうにいた時はそれはもう酷かった」
結「翔! お願い! もうやめて!」
翔「うるせぇ! 俺が失敗したのはお前らのせいなんだ!」
結「ごめんなさい! ごめんなさい!」
優「お願いだから、母さんを殴らないで…」
優N「僕はそうつぶやいて、部屋で縮こまってることしか出来なかった」
翔「お前が悪いんだ!……お前が…悪いんだ」
優N「暴力を振るう僕の父、起業したけど失敗して僕たちに当たり散らす……どんなに殴られても母は」
結「優、大丈夫だった?……良かった」
優N「と、泣きながら聞くのだ、僕はそんな母を見るのがすごくつらかった」
優「母さん、僕、強くなるから、守るから……これ以上泣かないで」
優N「今、僕が母さんにしてあげられることは、言葉をかけること…ただ、それだけだった
その言葉が母さんを駆り立てるきっかけになったらしい」
優N「スーパーに向かう途中、車を運転する横顔を見ると、母の趣味とは少し違うような燻し銀の小さな花のピアスが目にとまる」
結「ん? そんなにじっと見てどうしたの、優」
優「あ、いや、母さんの趣味じゃなさそうなのになって思って、そのピアス」
結「ああ、これね!(朗らかに笑う) 翔から初めてもらったプレゼントなのよ!」
翔「まだ、指輪はプレゼントできないけど…似合うと思ったんだ」
結「…ってね! 結局ね、どんなことされたって好きだったってことよ(笑う)」
優N「と言って、母は笑った」
結「たまーにね、海風に乗って、優しかった頃の翔の声が聞こえるような気がするの!」
翔「好きだよ、一緒に幸せになろうな」
結「って、でもね、私は私の力で幸せになる道を選んだのよ?」
優「どういうこと?」
結「あんたと生きるってことよ(微笑む)」
優N「そう言って笑った母さんは、すっきりと晴れ渡る空のようにすがすがしい表情をしていた
僕は、母さんのピアスを見つめながら、「その笑顔、守るからね」と、そっと誓った」
島風ピアス @sasakure507
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます