モノクロ

 学校で嫌なことがあったのでノートにその思いをぶつける。

 何の遠慮もいらない。ここはぼくだけの世界だ。







 書く手が止まらない。

 奴の顔を思い出し、殴るように、刺すように鉛筆で書く。

 紙は破れ、字は砕け、脳内には悲鳴が響き渡る。


 ぼくの中に悪がいた。












 痛みを感じた。

 どれくらいの時間が経ったのだろう。

 鉛筆を握りしめていた左手が痛かった。

 左手?ぼくは右利きだ。



 いつからだろう、電車がホームに入る瞬間を好きになったのは。

 いつからだろう、そのタイミングを見計るようになったのは。

 いつからだろう、それを美しいと感じるようになったのは。



 入り口はどこだ?

 いつからぼくはこうなった?





 幼稚園で父親の似顔絵を描いたある日、母親が呼ばれた。


 その帰りに母が訊く。「お父さんの似顔絵でなぜ大きな木の絵を描いたの?その木にどうして人が刺さっているの?」と。

 その日の夜、ぼくの家にサイレンが鳴った。世界がモノクロになった。


 


 大丈夫だよ。対処法は知っている。

 目を閉じ両手で耳を塞いでごめんなさいを言えばいいんだ。

 そうでしょ?お父さん?





 全てはぼくの過去になるわけだが、それでも愛せというのか、ニーチェ?





 気分を害したのならすまない。

 では。



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