ミカエリスの返信

いつき

意外な来客者

 


気がついた時にはもう奴はいた。

ブンブカと何やら文句を言っている。



書類を束ねながら耳で奴の気配を探る。


文句が聞こえる方へゆっくりと首を向ける。

小さい体ではあるが肩に羽織る黒い毛皮を大きく揺らし、黄色いバッグを投げ捨てた。何だが怒っている様だ。

次第に文句を言う声も大きくなり、私は恐怖を感じ、外へ出た。



会社の人に電話を掛け助けを求めた。

電話に出た彼は、私のあたふたする様子を楽しみながら「奴の近くに寄ってみてはどうだろう」と提案をする。

憤慨している相手になぜ自分から近づかなければならないのか。刺激し攻撃されるのはごめんだ。


彼は「ま、ドアでも開けて待っていてよ。なるべく早く向かうから」と陽気に言葉を残し電話を切った。





会社のドアは二箇所あり、奴がいる方のドアを開けた。

中から必死に文句を言っている声だけは聞こえた。それが更に恐怖を煽った。







室内に静寂が取り戻されたころ、陽気な彼が出社してきた。辺りを見渡し、奴がいないことを確認してから彼はやはり楽しそうに言う。

「あれは黒かっただろう」

鞄を床に置き、上着を脱いで椅子へ腰掛けた。

パソコンの電源を入れ、画面に何か打ち込む。

「でもね、見かけによらず結構温厚な性格をしているんだよ。だってあいつは・・・」

と、微笑んだ。



















「クマバチだよ」














 お前クマバチだったのか。

 恐怖くれてありがとう。

 これはきのう起きた災難の一つである。

 では。







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