どこにもない場所で
拾之二十四条
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着陸の衝撃が座席の下から伝わってきて、頬杖をついてうとうとしていた僕はゆっくりと目を開けた。大きく伸びをしてから、機を降りる。時差のせいか、歩いていても瞼がひどく重かった。ターミナルビルに入って、税関を通る際、そこの職員は書類を捌きながら初めは共通語で話し掛けてきたが、僕の顔とパスポートを見るとすぐに自国語に切り替わった。
――今回は、ご帰国ですね。合衆国から?
――ええ、そうです。
――広いし、名所も一杯ありますからね、あっちは。色々まわって疲れたでしょう?
――そう、なのでしょうね。
――これで良し、と。はいどうぞ。審査は以上ですので、お通り下さい。
僕はその、相手の話す言葉の当然ながら長音が少ない事に些かの奇妙な感覚を抱きながら、必要な手続きの諸々を終え、出発前に父に入用な物を詰めてもらったトランクを牽いて、空港のターミナルビルを後にした。
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