【ゆ】ユキノシタ

 別名を『虎耳草こじそう』ともいうユキノシタですが、私は見たことがありませんでした。調べてみたら、北海道には咲かないようですね。

 他にも『キンセンソウ(金線草)』『ミミダレグサ(耳漏草)』『トラノミミ(虎の耳)』『ネコノミミ(猫の耳)』『ジンジソウ(人字草)』などたくさんの別名があります。


 私は実物を見たことがなくても、『ユキノシタ』という名前は知っていました。何故かというと、安房直子さんの童話に登場するからなんです。

 『月夜のテーブルかけ』という作品に『ゆきのした』というホテルを経営するタヌキが出てきます。

 幼い頃はインターネットも普及していませんでしたし、ユキノシタという花がどんなものか想像するしかなかったのですが、白くて繊細なロマンに溢れた花を想像していました。はっきりわからないほうが憧れという靄に包まれて美しく見えるものです。

 けれど、大人になって写真を見たとき、想像通りに可愛らしい花を咲かせていることがなんとも嬉しく思えました。その花言葉は『愛情』『博愛』『恋心』『好感』など可憐なものです。


 ところが一方では、『軽口』『無駄』なんて花言葉もあるんですよね。

 なんだか白い妖精が飛んでいるようにも見える花ですけれど、ちょっと憎まれ口をたたく生意気な妖精なのかもしれません。


 群馬県に嫁いできて、初めて『ユキノシタ』を直接見ることができました。とある親水公園のそばにある川沿いに無数に咲いていたのです。

 でも、それもきっと、このエッセイを書いていなければ『綺麗だけど、名前も知らない花』で終わっていたでしょう。人生、無駄なことはないんだなと感激した次第です。

 それにしても、やはり写真で見るよりも実物を見たときのほうが、安房直子さんの作品を読んだときの印象が変わりますね。想像上のユキノシタで楽しんでいたときは、夢のようでした。けれど、実物を知ると、本当にこの世界のどこかに『ゆきのした』ホテルがありそうな気がするのです。もしかしたら、思っているよりすぐそばにね。


 ユキノシタは1/9、2/8、2/9、5/24、5/31、6/3、12/4、12/6の誕生花です。



 ユキノシタの花言葉一覧:『愛情』『切実な愛情』『深い愛情』『軽口』『無駄』『博愛』『好感』『恋心』

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