盗作
今まで私の小説を読んでくださってありがとうございます。今日はみなさんに告白しなければならないことがあります。
私の今まで発表してきた小説は全て、ある人物の書いた小説の盗作なのです。自力で書いたものなど一作もありません。一つ残らずです。
なぜそんなことをしてしまったかというと、その人物が故人であるからです。彼の小説の書かれたノートを見つけた時、私は衝撃を受けました。いままで自分が書いていた小説がむしけらに思えるほどの出来栄えだったからです。私は故人の作品にたいへんな嫉妬を抱きました。
本来ならば故人の名前で発表するべきでした。しかし私はそれをしなかった。初めは燃やしてしまおうかと思いました。しかしそれはできなかった。ならばいっそ私の名前で発表してしまえばと思いました。そして、現在に至ったわけです。
ではなぜ、今になって盗作の事実を発表したのか、お話しましょう。故人の書いたノートを電車の中に置き忘れてしまったのです。迂闊でした。鉄道会社の忘れ物センターに問い合わせましたが、該当なしと告げられました。これでもう、私は小説を書くことができなくなりました。
ところで最近、淀川散歩賞を受賞した南野圭子女史の作風、私の、というか故人の作風に似ていると思いませんか? 一部のファンの間では私、東村城太郎二世と呼ばれているそうです。実際、私は読んで故人の文章だと確信しました。私は彼女に強く言いたい。拾ったものは返してもらいたい。そうすれば、私はまた小説を執筆できる! えっ、もうできないの? そんなあ。
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