日に日に

 日に日に馬鹿になってくる。

 まず、テレビに俳優や歌手の名前が思い出せない。

「あれ、こいつなんて名前だっけ?」

 顔は分かるんだが、名前が出てこない。

 それが翌日の午後の手洗いの時に思い出したりする。

「ああ、風花涼だ!」

 ついには自分の妻の名前を忘れてしまった。でも大丈夫。

「おい」とか「なあ」とか言っとけばいいのだから。

 だがその妻が急に倒れてしまって、救急車で病院に運ばれてしまった時は大いに弱った。救急隊員が、

「奥さんのお名前は?」

と聞いてくるが、ずっと忘れっぱなしだったので、答えられない。

「ええと、ええと。よしこです」

 適当に答えてしまった。

 だがラッキーなことに、意識を取り戻した妻は記憶喪失になっていた。もちろん、自分の名前なんて覚えていない。結局、よしこということでその場は済ませた。

 今日、妻宛の手紙が来た。宛名書きは木下よしこだった。つまり、私は、妻の名がよしこだと忘れていなかったのに忘れたと思い込んで、よしこと適当に言ったと思い込んでいたのだ。

 ううん? 文章の意味がよく分からない。


 僕はこの小説を書いているものですが、日に日に馬鹿になってしまって、訳の分からない物語を書いてしまっています。助けてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る