　赤ちゃん一人分の体重を減らさなければいけないと医師に言われた。

「いっその事妊娠して赤ん坊を産めればいいのに」

　と俺は思った。

　それから、過酷なダイエットが始まった。糖質除去、ココナッツオイルの使用、痩せるサプリメント服用、一食置き換えダイエットといった食事制限系のダイエット法に加え、今話題の雷雑風（ライザップ）に大枚三十万円支払って入会した。

　だが俺の下っ腹は日に日に膨れ上がっていく。努力がぜんぜん報われない。俺はイラついて甘いケーキをどか食いしたりした。かなり情緒不安定になり、周りに当たったりもした。

　そしてこの日がやってくる。突然、俺の肛門が破水した。救急車で産婦人科に運ばれる。そして難産の末、赤ん坊が生まれた。処女懐胎ではない。童貞懐胎だった。下っ腹が膨れていったのはそういうわけか。医師は言った。

「丸々と太った、脂肪百パーセントの赤ちゃんですよ」

　俺は答えた。

「赤ちゃんと一緒に産後ダイエットしなくちゃ」

　この時の俺の体重は幼稚園児一人分の体重を減らさなくてはいけないほど、肥満していたのだ。

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