ばさみの恐怖

 妻が僕にばさみを持って近づいてくる。

 彼女は僕に苦痛を与えるためにはさみを持ってくるのだ。

 いやだ、僕はここから逃げ出したかった。

 でも無理だ。出入り口のドアは彼女の背中側にある。逃げ出そうものならあのはさみで僕を攻撃するだろう。

 もはや覚悟を決めるしかない。


「あなた、洗濯物を干してちょうだい。はい、洗濯ばさみ」

「やだあ、面倒臭い」

「そんなこと言うと洗濯ばさみを耳たぶに挟んじゃうわよ」

「やだよ。怖いよう」

 誰か、助けて。

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