インクの瓶

 おじいさんは塾の先生をしています。今日も書斎でテストの点数付けをしています。

「おじいさん、おじいさんのインクの瓶はなんで赤いインクが入っているの?」

「それはな、テストで間違えているところに赤い字でアドヴァイスするためだよ」

「赤ペン先生みたいだね」

「あんなものと一緒にするなよ」

「その赤いインク何でできているの?」

「それはな」

 そういうと、おじいさんはとても怖い顔になりました。

「テストの成績の悪い生徒から、痛い痛い注射器で抜き取った血でできているんじゃ」

 おじいさんは偉そうな顔をしました。

「だからよっちゃんも……」

「待って、おじいさん」

「なんでじゃ?」

「嘘をついちゃダメだよ。血はね乾燥すると黒くなるんだよ。だから赤インクには使えない」

「変なこと知っているな」

「少年探偵、よっちゃんだもん」

 ぼくは自慢げな顔で帰りました。その後おじいさんは、

「じゃあ、黒い字を書くときにはこれが使えるの」

と言って赤インクの瓶を撫で回しました。ぼくの知らないことです。覗いてなんかいません。何も知りません。

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