座布団をかぶった男
ある日、散歩をしていたら知らない町に出てしまった。
「ここはどこだろう?」
と思って道行く人に尋ねようと思ったら、座布団をかぶった男に出くわした。僕は変な人だなあと思いつつも、興味があったので聞いてみた。
「どうして座布団なんて被っているのですか?」
すると、男は真っ赤な顔をして、
「なに言ってんだ。これは座布団なんかじゃない」
と怒って行ってしまった。
そのあと空襲を知らせるサイレンが鳴り、東京大空襲が起きた。僕は焼夷弾の直撃を食らって焼け死んだ。死の間際、僕は見たんだ。座布団をかぶって逃げ惑う人々の姿を。あれは防空頭巾っていうんだと、天国で知った。
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