一週間

「あなた、起きてください。遅刻しますよ」

「おい、なにいってんだ。今日は日曜日だろ……あっ!」

「そうよ、なに言ってんの。日曜日はなくなったのよ。今日は月曜日でしょ」

「そうだったな」

 そう、日曜日は今月から廃止されたのだ。世界的に。なんでも地球の公転が早くなって、週七日だといろいろと問題があるらしい。

「なら、月曜日か火曜日を無くせばいいのに」

「それじゃあ、お給料が減っちゃうでしょ。さあ、早く起きて支度してください」

「あーあ」

 俺は大あくびして起床した。


 でも日曜日がなくなって、いろいろな問題が出てきているのも事実だ。例えば、大相撲。初日と千秋楽の行われる日曜日がなくなったので、月曜日が初日になった。こんなこと昭和天皇の崩御以来だそうだ。そして二週間後の月曜日が千秋楽。十三日に日数が減った。でも昔は十三日でやっていたそうだから大した問題じゃあない。それよりも問題なのが俺の楽しみだった『サンデーモーニング』『サンデージャポン』『アッコにおまかせ』『笑点』『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』『鉄腕dash!』『大河ドラマ』『行列のできる法律相談所』『日曜洋画劇場』が全部なくなってしまったのだ。みんな長寿番組だ。

 さらに『週刊少年サンデー』は『週刊少年ウエンズデー』に『サンデー毎日』は『マンデー毎日』に変わった。これは発売日通りになったかから分かりやすいといえば分かりやすい。

 ファミリーレストランのデザートからは『チョコレートサンデー』と『フルーツサンデー』などが消えた。別に変えなくてもいいと思うが、政府が「日曜を想起させるものは変更、または廃止せよ」という命令を出したのだ。日本人は従順だからいいけれど、ヨーロッパ圏の国々、キリスト教徒の多い国は「安息の日」が失われたことに国民が激怒し大規模なデモが起こった。政府は強硬手段で反対勢力を抑えた。死者も出た。これを「血の日曜日」と呼ぶ。


 何年か過ぎた。

「あなた大変よ」

 土曜日の朝をのんびり寝過ごしていた、俺は妻の叫びに飛び起きた。

「なんだ、火事か?」

「違うのよ、地球の公転が遅くなって、来月から週八日になるそうよ」

「じゃあ日曜日復帰だな」

「いいえ」

「じゃあどうなるんだ?」

「水金地火木土天海になるんだって」

「理科の授業かよ」

 俺はひっくり返った。

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