第11話 「仕事した!」←してない

 仕事をしたと自分では思っていても、客観的に見た時に本当にしたのかと心配になることもあるかと思います。私も、バイトでこれやっといてなんて言われてそれをやっても、本当にこれであってるのかって心配になったりもしました。自分が相手の希望を叶えられているのかって結構気になりますよね。今回はそんな話の極端な例を挙げておきたいと思います。


ー練習前の準備にてー


私たちの使ってるテニスコートは学校とは少し離れたとこにあります。電車1本といったところです。1年生は30分前には来て、コートのネットを上げたり、ジャグを用意したりします。普段時間通りに来るのは私ともう一人の鈴木くんです。まあだいたいこの2人で準備を全て終わらせるわけですが、今回は珍しく内田君が少し遅れてやってきたのです!

 ちょっと感動しましたね。まさか内田君が時間通りにやって来る日が訪れるなんて夢にも思わなかったですから。そのくらい遅刻常習犯なんですよ彼。


 そして彼は、私たちがまだネットを上げていないほうに向かいました。

 そのまま無言で、しかもなぜかドヤ顔で帰ってきました。いかにも俺は仕事をやりましたよといった表情です。


 しばらくすると、ほかの部員たちも続々と集まり始め練習が始まろうとしたときのことです。私はコートに違和感を覚えました。いつもと何かが違うな、なんて思っていてよく見たら、まだネットがあがっていなかったんですね。

 これがどうして、内田君がなぜか仕事やりきったような感じをかもし出してきた。あのコートだったのです。これが何を意味するのか。彼はいったい何しに行ってあんなにもドヤ顔だったのでしょうか。


「内田君?」

「ん、何?」

「さっきネット上げに行ったんじゃなかったの……?」

「ん?いや、特にそんなことはした覚えないけど。」


 やはりね、彼は確信犯でした。

 その後なぜか私も先輩に怒られました。その内容が

「あいつは内田なんだからお前がしっかりしないでどうする」

だったんですが。いや、内田だからって理由にならないですよね?

 そのあとすぐに内田君を見たのですが、先輩が言っていたことに納得してしまって、ものすごく負けた気がしましたよ……


これで学んだことは『「だれだれだから」は理由にはならないが、「内田君だから」は理由になる。』ということですね。またひとつ、私は人生の教訓を得られたわけです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る