第8話 滑舌

 人と話をする時、重要になってくるのは整理して物事を言えるか、そして滑舌です。この二つのうちどちらかが欠けていると結構話が詰まってしまったりしますよね。喧嘩になっても揚げ足取られたり、墓穴掘ったり……。

 かくいう私もその二つを完璧に出来てるとは思いません。人並みです、人並み。そうであると願いたい。

 そんな中でもどちらも人並み以下である人間もいるわけです。そう我らが内田君です。緊張してる時なんかはそれが顕著に現れます。


ー試合前ー

「気張って行けよ内田君!」

「あ、当たり前だよ。そ、そんなの食えるにきまってるぜ!」

「ん?」

「ひっひっふぅー……よしっ平常心になれたなっうん」

 腹式呼吸で平常心になろうとするのは、おそらく彼だけなのではないでしょうか。日本語も若干わけわからんことになってましたし。

「う、内田君、ほんとに落ち着けてる?」

「◎△$♪×¥●&%#?!」

 ほんとに何言ってるのかわからなくなってきました。もともと宇宙人の素質があるなとは薄々感づいてはいたのですが、もう疑う余地がない気がします。私は今、UMAと対峙してるのです!

「ほんとに落ち着けって。な?ほら好きなアニメでも思い出して」

実際にはただただUMAを申し訳なさそうに慰めてる絵面になってるので、言い出しっぺが言うのもなんですけど、ちょっと気持ち悪いですね。これ。『人類で初めてUMAを慰めた男!』とかでデビューできないですかね。編集者さん、ネタですよー。

 結局試合はそこそこで負けてしまいましたが、本人が最後まで緊張が解けていなかったので、見ているこちらも緊張してしまいましたよ。緊張で手元が狂って相手選手の方へラケットが飛んで行ってしまわないかとか、それをきっかけで乱闘事件になったりしないかとか。ほんと無事に終わってよかったですよ。

 試合見てただけなのに自分が試合してるとき以上に緊張しちゃってるんですから、ほんとうちの部活のUMAは世話が焼けます。

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