第104話 悩める乙女

 悩める乙女の相談にのってください!

 とっても迷ってるんです。実は同時に二人の男子から告白されちゃったの。まるで嘘みたい……自分で認めるのも悔しいけど、アタシってば、美人じゃないし、まあ十人並みかな? 成績だって中くらいだし、スポーツはやや苦手、ごくごくフツーの高校二年の女子なんです。

 それが急にモテ期到来! ありえない!?


 告ってきた男子、一人は野球部のエース遊佐ゆさくん、超かっこいい、女子にモテモテなのに、なんでアタシに?

 放課後、ぼんやりグランド見ていたら、遊佐くんの方から寄ってきて、いきなり「おまえ、誰かと付き合ってる?」って訊いてきたから、「いいえ」と答えた。「だったら、俺の彼女になれよ」と言われて、ビックリして目をまん丸にしてたら、「明後日、試合あるから絶対に観にこいよ!」一方的に宣言して行っちゃった。


 告ってきた、もう一人の男子は文芸部の部長の諏訪すわくん。学年トップの成績、眼鏡男子でイケメンだよ。

 図書室に本の返却にいったとき「君に薦めたい本があるんだ。ついてきて……」と諏訪くんに言われて、本棚の奥に入っていったら、「僕は君と付き合いたいんだ。ねえ返事を聞かせてくれる?」と言われた。突然の告白に頭がパニックって「考えさせてください」と返事しておいた。


「――で、アタシどっちと付き合えばいい?」

「しるか! 普通、男子にそんなこと相談するか?」

「だってぇ~、こんなこと相談できるのは、幼馴染のタッくんしかいないよ」

 達央たつおくんとアタシは幼稚園からの付き合い、ドジな女の子としっかり者の幼馴染の男の子は、アニメではテンプレだから――。今、放課後の教室で恋の相談にのって貰っているのです。

「恋バナなら、女子に相談した方がいいんじゃない」

「ダメ! ダメ! 女子は口が軽いから、すぐ噂が広まっちゃう」

「おまえはどっちといると楽しい?」

「二人ともマトモに喋ったこともないし……ピンとこない」

「お試しでデートしてから決めたらいいんじゃないか」

「ええっ! デートしてもいいの?」

「勝手にしろよっ!」

 それだけいうとタッくんはプイと怒った顔で帰っちゃった。

 いくら幼馴染でもリア充の話なんか聞きたくなかったのかな? タッくんには彼女いなさそうだし……。ゴメンちゃい。


 アタシはお試しデートをすることにした。

 まず野球部のエース遊佐くんの試合を観に行くことに、するといっぱい女子が応援にきていた。何だかしゃくだから……。

「遊佐くんの彼女ですけど」って言ったら、他の女子も「私も彼女だよ」「わたしらみんな遊佐くんの彼女だもんね」と言い出した。「それどういうこと?」と質問したら、遊佐くんは自分のサポーター女子のことを「彼女」と呼ぶんだって、アタシは彼女に選ばれたんじゃなくて、遊佐くんのファンクラブに勧誘されただけ? 勘違いしていた自分が恥かしい! そのまま走って帰ってきたアタシ――。


 日曜日に諏訪くんとデートすることになった。今度こそ本物の男女交際だよ。

 待ち合わせ場所に行くと諏訪くんが待っていた。「今日の僕の服装どう? カジュアルな方がいい? それともビシッと決めてるのがいい?」いきなり質問された。

 諏訪くんはチェック柄のシャツに黒のダウンジャケット、濃紺のジーンズだった。いつもの制服姿しか知らないアタシにはとっても新鮮だった。「似合ってます」って言ったら、今度は「今から映画に行く、水族館に行く、ゲーセンに行く」どれにするかの質問だ。

 さっきからアタシに質問しながら、メモを取ってるのが気になる。「なぜメモってるんですか?」と訊いたら、「これは小説を書くための資料だよ。テキトーな女の子とデートして恋愛シュミレーションしているのさ」だって。

 はぁ~? テキトーな女の子って、アタシのこと? ふざけないでよ! そのまま怒って帰ってきちゃった。


「――ってことで。アタシからかわれただけだった」

 お試しデートのことをタッくんに話ながら、悔し涙で顔がクシャクシャになった。

「そっか、ひどい奴らだな。泣くなよ。俺がいるじゃん」

「ありがとう。みっともないアタシを見せられるのはタッくんだけだよ」

「みっともなくない。おまえは可愛いから」

「えっ?」

「おまえが告られたって聞いて……俺、スゲー落ち込んだんだぞ」

「どうして?」

「幼稚園からずっと好きだったから」

「マジで? からかってるんじゃなくて……」

「ちげーよ! いつか、ちゃんと気持ちを伝えたいと思っていたんだ」 

「アタシなんかで本当にいいの?」

「俺は昔から迷ったことなんかない。おまえ一択だったから」

「その言葉を信じてもいいの?」

「正直な気持ちだ!」

 アタシはタッくんの気持ちを言葉で伝えて欲しかった。

「タッくんの気持嬉しい。でもちゃんと告白してよ」

「彼女になってください! 返事は?」

「は~い」

「今度、男子に告られたら、彼氏いますって断わるんだぞ!」

「了解!」

 なぁ~んだ。アタシの本命はこんな近くにいたのね。もう迷わない、アタシもタッくん一択でいきます。二人は彼氏と彼女になりました。

 悩める乙女から、アタシ幸せな乙女にヘンシーン!!

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