第100話 お・や・く・そ・く

映画やアニメを観ていると、あるセリフを登場人物がいうと必ず発動する展開というものがあります。

画面を観ていて、「あっ! 言っちゃった!!」と思ったら、その後は予想通りに話が進んでいって……ああ、言わんこっちゃない! たいてい最悪の結果となる。

――だが、そうなってしまうのは、何者も抗うことのできない。【 お・や・く・そ・く 】という謎の法則のせいなのだ。

特にホラーやサスペンスものなどで多く発動する【 お・や・く・そ・く 】は、それを見つけること自体が、楽しみになってしまうことだってある。

今から私の知る限り、思い浮かんだ【 お・や・く・そ・く 】について、ここに記述してみようと思う。

たぶん、この中には、みなさんがすでにご存じなものも多いことでしょう。


【 お・や・く・そ・く 其の1 】

「この戦争が終わったら、故郷に帰って結婚するんだ!」

ああ、もうダメだ! 戦闘アニメでこのセリフをいったキャラは、次かその次の週の作品で爆死するという運命が決まっている。

いつも思うんですが、先に結婚してから戦場にいった方が生存率が上がるんじゃないでしょうか? 

未来に希望を持っているというキャラは戦争の悲惨さを訴えるため、もしくが主人公たちの士気を高めるための『捨て石』とされる。

そんな無慈悲むじひな、お・や・く・そ・く。


【 お・や・く・そ・く 其の2 】

「重要な秘密を知った。おまえだけに伝えたい、12時に○○の前で待っていてくれ」

サスペンスものでよくある展開です。こういう約束をして、その場所に行ってみると必ずと言っていいほど密告者はすでに殺されている。

そして、「ああ遅かったか……」と嘆く主人公なのだ。

だいいち密告者の方も、待ち合わせなんて廻りくどい方法を取らずに、さっさっと打ち明けてしまえばいいものを……勿体つけて、自分に値打ちつけてる内に仏様にされちゃう。

死人に口無し、お・や・く・そ・く。


【 お・や・く・そ・く 其の3 】

「ここは俺に任せて、先にいってろ。すぐに追いつく」

このセリフを言ったら、もう永遠に追いつかない。ホラーものなど絶体絶命のピンチ(敵に取り囲まれて逃げられない状況)に仲間を逃がすため、リーダーなどが男気をみせるセリフだが、たいてい敵の餌食になってしまう。

ただし、この法則を回避するセリフがあるらしい「必ず来いよ。待ってるから!」そう主人公が返事をしたならば、もう死んだと諦めた頃にヒョッコリ現れるという。

起死回生の、お・や・く・そ・く。


【 お・や・く・そ・く 其の4 】

「この中に犯人がいるかもしれないんだぞ。こんなところに一緒に居られるか!」

人里離れた洋館に数人のグループが閉じ込められて、次々と仲間が殺されていく――。

そういうホラーやサスペンスの場合では、仲間がひとり、またひとりと殺される展開の中で発狂して、「この中に犯人がいるかもしれないんだぞ。こんなところに一緒に居られるか!」そう叫ぶキャラが必ずいる。

そして自分の部屋に閉じこもるが、結局、翌朝には死体となって発見される。

むしろ危険な状況ほど仲間たちと一緒に居た方が安全だと思うのだが……なんで? いっつも決まって別行動するキャラがいるのか不思議なくらい。

ボッチは狙われやすいということを学習すべきだろう。

ちなみに、ホラー映画では「モンスターなんかいない」といったキャラが最初に死ぬ。

そしてその死体を見て、パニックになったキャラがその次に死ぬという法則があるようだ。

パニクったら死ぬぞ、お・や・く・そ・く。


【 お・や・く・そ・く 其の5 】

「おおっ! 殺ったか!?」

強い敵を倒して得意になっていると……案外、死んでなくて逆襲される。

敵は甘くないんだ。ちゃんとトドメを刺してから喜ぼうね。

油断大敵だよ、お・や・く・そ・く。


【 お・や・く・そ・く 其の6 】

「金ならやる。命だけは助けてくれい!」

悪党が追い詰められて、札束を見せびらかして命乞いをするシーンはドラマなどでよく観られるが、あっけなく殺られてしまうのがオチなのだ。

よく考えてみれば、その金は殺してから奪っても同じなのだから、札束を見せびらかしても命乞いの道具には使えない。

悪党のくせに人の善意にすがるのはみっともないぞっ!

往生際の悪さを見せる、お・や・く・そ・く。


【 お・や・く・そ・く 其の7 】

「くじで決めよう!」

なぜか、くじを持っている者が引く。

「なんだ猫か? 脅かすなよ」

次のシーンで侵入者によって、あえなく殺されている。

「実は、わたしが真犯人でした」

断崖絶壁で犯行を自供した犯人は、直後に崖から飛びおりて死ぬ。

目の前で犯人に死なれるなんて警察の怠慢だよ。そんな自殺の名所みたいなところで事情徴集やってんじゃない。 

小ネタですが、何度もみたことある、 お・や・く・そ・く 。


ワンパターン化したセオリーが発動するため、引き金となるセリフを言うことを『フラグが立った』といい、そうなってしまう法則のことを『お約束』と申します。


はてさて、この他にいくつ【 お・や・く・そ・く 】を、みなさんはご存じですか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る