この素晴らしい魔王軍部下に祝福を!?

馬流

プロローグ

目を開けると、あたり一面真っ暗闇。

……なんで、こんな所にいるのだろうか?

今日はコミフェの初日で、暑苦しい人混みの列車に乗った。

近くに中年のおっさんがいて、スゲェ臭かったな。

目的の駅で降車して会場へと移動した。

行列に並んで開場までポケ○ンの孵化作業をしながら待った。

時間となって波に乗りながら入場料を払って中に入る。

好きなキャラのコスプレプレイヤーを探して見つけてはシャッターをきる。

目的の同人誌は年齢を偽ってでも買いました。男の性だ。仕方ない。

あー、そうだ。予想を遥か超えた全年齢百合同人を休息スペースで、読んで、テンションがハイになったんだっけ?

……………………………………近くの階段に気づかずにそのまま、おむすびの如く転がった。

………………………………………………………………恥ず!馬鹿じゃん、只の馬鹿じゃん!鼻血を大量に流して死んだフンヌの王並みに馬鹿じゃん!!

つーことは、ここは黄泉の国!?それとも、入口か?

「随分と察しのいい殿方ですね。佐々木みやびさん。貴方は、不幸にも短い人生でしたが、終わりを迎えました」

自己険悪に犯される頭を押さえて、下を向いてた俺は顔を上げる。

目の前にはかぐや姫が、月に戻るときに羽織った羽衣を着けてる、青髪の女神がいた。女神と称したのは言うまでもなく、オーラがそんな感じだからだ。つか、人間では無理であろう顔立ちしてるし、如何にも偉いんですよ的なのを本能にビンビン来てる。

後、社長室に置いてある事務的な机の前に座ってるし。

「プッ……、ううん!佐々木みやびさん、私はアクア。ここで、若く死んだ人をあの世に、導く女神です」

あ、笑ったなコイツ。

地味に吹き出したから、腹立つわ。笑うんなら腹から笑え。そしたら、殴れるのに。

「ですが、これは選択権の一つに過ぎません。もう一つは、赤ちゃんからやり直し、新たな人生を送るというものがあります」

「人生を送る?えー、また、どうしようもない、クソゲーみたいな日常は勘弁ですから。前者で」

女神に正直に告げると、チッチッチッと舌をならされ指を振られた。

ごめんなさい、本格的に殴って良いですか?この人、ホントに女神だわ。頭のネジが緩そうな。

小馬鹿にしすぎでしょ。

「話しは続くからもう少しだけ待ってください。赤ちゃんからやり直すのは、全く違う世界でなの。そうね、貴方、種類こそは違うけど、ゲーム好きでしょ?」

「まぁ、育成ゲームわ」

「でしょでしょ!!私たちが送ろうとするのは、ファンタジー世界なの。スライムとかオークが出てくるあのファンタジー」

なん、だと…………。

俺の表情を見て、細く笑う女神だが知るか。

「けど、赤ちゃんからだと、記憶は無くなってしまう。そこで、特典をつけてこらこのままの姿で、別世界に送って、魔王を討伐してもらおうとしてるわけよ」

「おお!ファンタジーの定番か!すみまそん、やっぱり後者で!」

「決まりね。んじゃ、特典カタログ見せるからどれか一つ……」

カタログなんか、見なくても俺には、決めてることがある。

「敏捷ステータスを最高値にしてください。それだけで、いい」

「へっ?ほ、本当にいいの?いや、やっぱりさ、こういうはどうよ。ゲイボルグ!投げれば、一撃必殺の魔槍よ!」

…………コイツ、佐々と魔王討伐して欲しいのか?

「チートはステータス一個で充分だ。武器なんか、自分に合ったのを向こうで買う」

「………分かったわよ。なら、手配しておくから。そこの魔方陣に入ってね。それと、三千エリス。渡しておくわ」

指を指された方にはなんと、なんて書いてるか分からないサークルがある。

投げよこされた袋は本当に、金のようだ。

意外と良い奴なの?

良い奴か。治療不可能の怪我をすれば、走れなくなる現実より、魔法ですぐに回復できる現実に転送してくれるのだから。

円陣の中央に立つと光が強くなる。

「佐々木みやびさん。あなたをこれから、異世界へ送ります。魔王討伐の勇者候補の一人として。魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を差し上げます。」

「褒美とかいいんで、魔王倒しても、異世界に残してくれれば、いいんで」

「ちょっと!?まだ、台詞の途中なんだけど!口を挟まないで、くれないかしら!?」

「前言撤回。我が儘、駄女神。お前なんか、変な男と一緒に、異世界に転生すればいい」

「はぁあ!?恩人に対してその態度は、何よ!アンタなんか、転生に失敗して頭、パーに成ればいいのよ!」

あ、この女神。説明の中に入れてない事をサラリと言れたぞ。

失敗したら廃人?………………本末転倒な転生だな。

文句を追加しようとしたが、俺の目の前は白に埋め尽くされた。

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