キルコロース! -bittersweet sugarless sweets-
風継カジキ
白き粒子の楽園
プロローグ
運命と思えた。
数十万分の一の確率で世界に選ばれたこと、選ばれたことに気付けたこと、そしてそんなふたりが出会ったこと。
巨大な
だから、最後まで信じるよ。
絶対に。
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「さて、次のニュースです。世界的な製菓メーカー『ヴァルゴナ社』が新しい人工甘味料『キルコロース』の製法に関する特許を取得したと記者会見しました。ヴァルゴナ社の発表では、『キルコロース』は砂糖の約4200倍もの甘さを持ち、カロリーはゼロ。製造コストも低いため、WHO等の認可が通れば、今後は世界中の食品で使用される見込みである、とのことです」
「私、甘い物には目がないので、こういったニュースには、なんというか、夢みたいな物を感じてしまいますね。砂糖の4200倍って、どれだけ甘いんでしょうか」
「うーん、どれだけでしょうねぇ。私には想像もつきませんよ。けど、きっとビックリするくらい甘いんでしょうね。ほら、番組冒頭のVTRで100辛を食べてた彼みたいな……」
「あはは、あれは素晴らしい反応でしたねぇ。最後には頭から噴水に突っ込んで……。ま、まぁ、あそこまでではないにしろ、私達に驚きを与えてくれるのは確かでしょうね。ああ、『キルコロース』、早く味わってみたいものですね」
「ええ、そうですね。しかし、こういったものは、例えどのような物であっても『化学物質』です。人体への悪影響がある場合は大問題となってしまいますので、今後は厳密な検査が行われるでしょう。ですから、我々が口にするのはしばらく後、かもしれませんね」
「へー、そういうものなんですか。……あ、そういえば、私達日本人の感覚からすると、『キルコロース』なんて、なんだかとっても物騒な感じの名前に思えてしまいます。だって、日本語にしたら『殺ス! 殺ス!』みたいな感じじゃないすか?」
「ははは、確かに。しかし、あの『ヴァルゴナ社』が発表してますので、そこまで悪いものではないでしょう。世界でトップクラスの製菓メーカーで、慈善事業もかなりなものですからね。化学式とか、そういったことが理由であのような名前なのでしょう」
「まぁ、さすがにそうですよねー。妙なことがあったら、企業イメージにも関わりますから。ともかく、今後に期待といった感じですね」
「ええ、そうですね。さて、それでは次は天気予報です。屋上ヘリポートの倉重さーん」
――キルコロース。
その物質は、それから数年後に各国、各団体に使用を認可され、多く食品で使用されることとなる。
そして、それから更に二十数年後。
キルコロースは、人々の生活に完全に浸透していた。
「砂糖」の単語が「キルコロース」の意味を含むようになってしまうまで。
これから始まるのは、人工甘味料キルコロースを巡る、甘くてオカシな物語……。
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