和菓子屋 金時

@sugasan

第1話 僕と小豆

粉砂糖のような雪が降る冬。

僕は久しぶりに実家に帰ってきた。

いつもは都会の大学に通っているから一人暮らしをしている。しかし、年末年始は実家に帰ることにした。

昔の趣を残した小さな街で、古い家や名前もわからないようなお地蔵さんがたくさんあった。住んでいるのも高齢者が多く、暖かい街だった。

「ここに帰ってくるのは引っ越す前、高3の冬以来だな」

そんなことを思いながら、昔通っていた小学校の通学路を散歩していた。数年経っても街並みは全く変わっていなかった。様々な思い出がよみがえってきた。


不意に僕は、あの子のことを思い出した。

「あずきのやつ、どうしてるかな」

あずきとは、金時あずきのことだ。小中ともに同じ学校で、よく遊んでいた女の子で、家がこの街の和菓子屋『金時』で高校には行かないで店を継ぐと言っていた。中学を卒業してから全く会っていない。

「ここまで来たし、ちょっと行ってみっか」

僕は和菓子屋『金時』へ向かった。

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