第8話 女王との対面!

「ラブ❤ラブ❤ハートフルアタァーックッ!!」


 みーなが乗着じょうちゃくしたブロインは胸にハートマークを両手で作り、片足をオカマのようにくねっとさせると、ハートマークを前に押し出した!


<しーん>


「あれ?出ないの?もっかいやるか!ラブ❤ラブ❤ハートフルアタァーックッ!」


<ドドドドドドドド!>


 黒いアントの群れはもうあと3mのところまで来ている!


(その頃、想念領域イディアフィールドでは…)


<ボガリア>

「し、し、し、知らーんッ!“ラブ❤ラブ❤ハートフルアタック”なぞ、初めて、初めてだッ!わからんッ!わからんぞぉーッ!」


 ボガリアは顔をプルプル震わせながら、人生で初めての動揺を見せていた。


<ルーシー>

「兄さん!兄さんッ!落ち着いて!誰かッ!誰か“ラブ❤ラブ❤ハートフルアタック”を知っている者はいないかッ!」

 ガクガクとブロインを高速で振るルーシー。


<ラモル>

「…ちょっと…」


<ユーリ>

「あ…僕もパス…」


<パディ>

「うー…ん。“ビューティフル”なら得意なんだけどなぁ❤」


<キャロライン>

「あ!私分かるよ!きっとあれだよ!“愛のパワー”を相手に届ける技だよ!」


<ルーシー>

「愛の…パワーだと…?よし!わかったッ!時間がないッ!兄さん!まずは“イディアフィトン”をハートマークに出すんだ!ユーリ!」


<ユーリ>

「え!?僕!?」


<ルーシー>

「ユーリはナノマシンに“思いり”をプログラム、そのイディアフィトンに乗せろッ!パディ!」


<パディ>

「この天才になんのようだい?」


<ルーシー>

「ユーリと兄さんのイディアパワーを調整して同速度にしてくれッ!」


<パディ>

「OK!おやすいごようだよ」


<ボガリア>

「ハート型にイディアフィトンを…?」


<ルーシー>

「兄さん!落ち着いてやれば出来る!みんな!宗主の命令はだ!みんなでこのミッションを完遂させるんだッ!」


<ユーリ・キャロライン・パディ>

「「「おぉー!」」」


<ルーシー>

「ラモルは全てのイディアパワーの調節を頼む!」


<ラモル>

「わかりましたわ」

 眼鏡をくいっとあげるラモル。


<ルーシー>

「キャロラインッ!技の全体像をイメージして全員に送念してくれッ!」


<キャロライン>

「わかったよ!」


<ルーシー>

「よし行くぞみんな!ミッション“ラブ❤ラブ❤ハートフルアタック”始動だッ!」



<ドドドドドドドド!>


『あぁッ!みーなぁッ!』

 ゴンスが叫ぶ!


 黒いアント達がブロインを飲み込んだその時!


「ラブ❤ラブ❤ハートフルアタァッークッ!!」


<ピカー!>


 アントに飲み込まれたブロインから光が放たれる!


<ズサーッ!>


 砂でできた城のようにアント達は次々と地面に崩れていく。イディアフィトンとともに放出されたナノマシンは各アントに進入し、心に“思い遣り”を植え付けていく。


[俺達はなんてことを…]

[この人達にも何か理由があるんじゃないか?]

[力で制するのは良くない…]


 口々にアント達は話し合っている。


「ホントはピンク色の光なんだケド…ま、いっか!」


 ブロインは腰に手を当てて、地面でうごめくアント達を見ながらそう言った。


[女王様ァ!アント兵士全滅ですッ!]


[なん…だと…!?ええぃ!アンドリューを連れてこい!]


[ハハッ!]



想念領域イディアフィールド

<ルーシー>

「ふー!よくやったみんな!」


<ラモル>

「ルーシーとキャロラインのおかげよ」


<キャロライン>

「にゃはぁ~」


<ユーリ>

「“ラブ❤ラブ❤ハートフルアタック”いいね!誰も傷付けないし」


<パディ>

「ユーリイィィ♥見てくれたかい僕の活躍ぅッ!」


<ボガリア>

「ルーシー…今回はおまえに救われたな…まさか“イディアパワー”にこんな使い方があったなんてな…」


<ルーシー>

「兄さん、まだ終わった訳じゃない」


<ボガリア>

「おぉ、みんな!次に備えて準備しろッ!」


ーーーーーーーー


 真っ黒いアント達がざわめいてさざ波のように動いている中、ブロインは「とぅッ!」とアント達を踏まないように飛び退き、後ろにいたゴンスを背負い、アント達が出てきた大きな穴へ戻った。


「はい、いいよー降りてー」


 ゆっくりとゴンスを背中から降ろす。


『みーな!すごいでゴンスな!』


「へへへ~!“愛のパワー”だよ“愛のパワー”!

“輝け!命のきらめき!ほとばしれ!愛のパワー!クゥアサンライトイエロー!”」


 ブロイン姿のみーなは、野太い声で可愛らしいポーズをとる。


<チャラ…>


「あ、誰か出てきた。アンドリューッ!」


 そこには兵士に鎖を繋がれたアンドリューといかにも“女王”という出で立ちのアントが現れた。

 アンドリューが叫ぶ。


[ゴンス!無事か!みーなは、みーなはどこだッ!]


「はーい!ここだよー!」


[みーな!変わり果てた姿になって…]


「違うよもーう!“解放リジェクト”!」


<シュポン!>


 みーなはブロインの背中から飛び出した。


[アンドリューから話が出来ることは聞いておる。余はここの女王であるアントアネット。そちはなんという]


「私はみーな!こっちはゴンスだよ!」


『ゴンスでゴンス!よろしくでゴンス!』


[みーな、アンドリューとは“友達”らしいな]


「うん!そーだよー!だから放してあげて!」


[取り引きだみーな。アンドリューを引き渡す代わりに我々を傷付けないでくれ。それがダメなら余の命を差し出そう。どうだ?]


「友達を取り引きしちゃダメだよ!あとみーなは誰も傷付けないよ」


[なに?先程兵士達は全滅だと…?]


[[[女王様ー!]]]


 黒いうねりが<ザザザザザ>とやってくる。そして口々に[この人達の話を聞きましょう][何か事情があるはずです]と誰もが懇願していた。


[な…!わかった!まずは黙れ皆の衆]


<しーん>


[“みーな”とやら、どうやったかはわからんが、確かにみんな無傷のようだ。アンドリューを放て]


<チャリ、カチャン>


 アンドリューの手錠が外される。


[みーな!ゴンス!]


 アンドリューは二人の胸に飛び込んでいった。


「アンドリュー!」

『良かったでゴンス!』


[さて、我々は新しい王国を築く旅に出よう。ここはもう場所が知れた。アンドリューはどちらに付くか好きにするがよい]


 女王がきびすを返したその時、


「待ってアントアネット!」


[なんだ…?]


「“大人”ってズルいよね。勝手に話を終わらせちゃってさ。あのさ、ゴンス達もしゃべれるって知ってる?」


『しゃべれるでゴンスよー!』


[にわかには信じられんな。“ブオォブオォ”としか聞こえん]


「そうらしいね。だけど話し合いは出来ると思うよ。あのさ、ゴンス達、優しいよ。だけどアントアネット達がただの虫だと思ってるみたいなんだ」


[この誇り高き“アント”をか?]


「うん。残念だけどね。だけど、きっとお互い話し合えば、いい方向に向かうと思うんだけど、どうかな?」


『話すでゴンスー!』


[“エレファント”とか…?アンドリューから彼らに文明があるのは聞いたが…すでに“エレファント”と“アント”には長い確執がある。難しいだろう]


「“難しい”だけで“出来ない”訳じゃないよね?アントアネット。この星に住むみんなが幸せに暮らせたら良くない?」


[それは良いと思うが…]


「ならこれからはお互い話し合って、できれば今までのことは“許し合おう”?」


「許し合う…」


「そう、愛を持って“許す”の!相手にも相手の立場があるんだって。だから、それを知って、お互いに分かり合うことが大切なことなんだって、マチコも言ってたよ」


[そうか…“許す”…な。わかった。その話、受けてみよう]


「そうだよー!ゴンスはここの皇太子なんだって!ブロインもいるし、今度はきっとうまくいくよ!」


[女王様、私からもお願いします!]

アンドリューが口を開くと[私も!][私からも!]と口々にアント達は口を開いた。


[わかったわかった、静まれ皆の衆。で、どうやって話し合えばいい?]


「えーと、私がまたブロインに乗るから、それでアントアネットとゴンスパパの間に入るよ。ただゴンスパパの笑い声がアンドリューも辛そうだったから先に話をして、ここに連れてくるね」


[わかった。私はここで待とう]


「よし、ゴンス。一緒に行こう!」


『わかったでゴンス!』


 そうやってみーなはまたブロインに乗り込み、ゴンスを連れて町へ戻った。



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