空洞

夢之木 咲

彼女に電話で別れを告げられ、自棄になり掲示板で女を探しては電話をかけ、話し愉しんでいた。すぐに電話を切る奴もいたが、ストレス発散できれば良い、どうせ代わりなんていくらでもいると思い次の女を探した。

そんな中、時計が四時を知らせた。女との電話を切り、イヤフォンを外すとそこには無数の孤独が広がっていた。物音一つと聞こえず、自分以外のものが止まったようにも思えた。突然に寂しさがこみ上げて、泣きそうになった。このままではどうにかなってしまいそうだと考え、家の外に飛び出た。当然、時間も時間なので外は暗く深い青に包まれている。家には帰る気になれなかったので深い青に包まれた街を一人で歩いていた。いつもは車も走り、いろんな人間とすれ違う町のはずなのに今ではまるで時でも止まったように静かだ。そのなかでまた自分が独りぼっちだということを実感した。時間は五時になるだろうか、だんだんと街は明るさを取り戻していき、ビルとビルの隙間から見えた激しい閃光はいつも通りの朝を知らせる。だがビルの隙間から覗く閃光は私にだけ違う顔を見せた。自分の中のすべてを払い落とされた。自棄になっていた先ほどまでの自分の感情はたった今、すべて死んだのだ。そしてゆっくりと後悔が自分の中に溶け込んでくる。なぜ別れを止めなかったのか、なぜ女の子たちをストレス発散のためのものとしか思わなかったのか。そもそも彼女が別れたくなったのも自分に非があったのではないか、思い返してはそれが悔やみとなり心の中を埋め尽くす。気付けば私は泣いていた。頬を濡らしては声をあげ、その声が、止まった世界で反響した。


深い青の中に白い絵具でも混ぜたかのように空は明るさを取り戻していく。

また一日が始まる、何もない一日が。

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